[PD092] 子どもの発達に影響を及ぼす諸要因の検討 その1
東アジアこども発達スケールを用いて
Keywords:ことばの発達, 就学前児
青柳他(2007),山際他(2007)などでは,発達支援尺度を作成した。これらの研究では,就学前の子どもを対象として,発達の支援のための東アジア圏の子どもに共通する発達スケールを作成することが目的であった。それは就学前の子どもには差異よりも共通する要素の方が圧倒的に多いと考えられたからであり,青柳他(2013)では11領域102項目からなるスケールが作成された。当初,149項目が検討項目として用意されたが,作成過程において共通の要素の抽出という目的に合わせて取捨選択を行い,その結果102項目のスケールとなった。すなわち,共通という目的に合わないなどの理由で棄却された項目があった。
そこで,本研究では視点を転換し,スケールの上でどのような内容に差異が見られるかということに焦点を当て,子どもの発達に影響を与える要因について検討を行う。影響因として取り上げる要因は,性別と通園施設である。一般的に成人までの発達,特に小学生くらいの年齢では,種々の側面において女子の方が男子より発達が早いが,就学前の子どもにおいては,性差よりも月齢差・年齢差の方が大きいと考え,発達スケール全体としては特別な処理をしていなかった。そこで,性差について再検討を行う。通園施設として,保育所と幼稚園の差異を取り上げる。この点についてはインターネットで検索を行うとわかるように,養育者・保護者の意見も多種多様である。そこで,本スケール上でどのような点に差異が見られるかを検討する。なお,本研究では,11領域のうちことばの理解とことばの表現について取り上げる。ことばの理解は,きょうの曜日が言える,名前を呼ばれたとき,はっきりと返事ができるなどであり,ことばの表現は,「赤ちゃんことば」を使わないで話せる,自分の名前を正しく書けるなどである。
方法
調査対象者は,日本,中国,韓国の3歳から6歳の子どもの保護者3828名であり,子どもについて回答させた。本研究では,それらのうち日本のデ―タ1178名を分析対象とした(表1)。回答形式は,全くできないからよくできるまでの4段階の評定尺度であった。調査期間は,2006年から2007年であった。
結果
性差についてt検定の結果,有意となった項目数を表2に示した。有意差があった項目数は,全項目数と比べるとどの年齢でも3分の1を越えず少なかった。しかも中程度の効果量(r>.3)は6歳のことばの理解の1項目であった。また,発達とともに項目数が減少する傾向が見られた。
続いて,通園施設についてt検定の結果,有意となった項目数を表3に示した。全項目数に対して有意となった項目数は少ないが,ことばの理解では比較的多かった。また,発達とともに有意な項目数は減少している。ことばの表現については,有意になった項目は非常に少なかった。なお,ことばの理解で3,4,6歳児において,わずか2項目のみ中程度の大きさの効果量が見られた。
考察
ことばの理解と表現の発達について,影響を与える要因として,性別と通園施設を取り上げた。女子の方がことばの発達が早いと思われがちであるが,そのような傾向は見られなかった。また,ことばの理解にわずかながら幼稚園の方が得点は高かったが多くの項目には差がなく,特に表現については全く差がないと言えよう。幼稚園や保育所に通園していない子どものデータがないので解釈は多少限定的であるが,5歳,6歳と差がますますなくなることから,集団生活を行うことが他の要因の効果を上回ると考えられる。
そこで,本研究では視点を転換し,スケールの上でどのような内容に差異が見られるかということに焦点を当て,子どもの発達に影響を与える要因について検討を行う。影響因として取り上げる要因は,性別と通園施設である。一般的に成人までの発達,特に小学生くらいの年齢では,種々の側面において女子の方が男子より発達が早いが,就学前の子どもにおいては,性差よりも月齢差・年齢差の方が大きいと考え,発達スケール全体としては特別な処理をしていなかった。そこで,性差について再検討を行う。通園施設として,保育所と幼稚園の差異を取り上げる。この点についてはインターネットで検索を行うとわかるように,養育者・保護者の意見も多種多様である。そこで,本スケール上でどのような点に差異が見られるかを検討する。なお,本研究では,11領域のうちことばの理解とことばの表現について取り上げる。ことばの理解は,きょうの曜日が言える,名前を呼ばれたとき,はっきりと返事ができるなどであり,ことばの表現は,「赤ちゃんことば」を使わないで話せる,自分の名前を正しく書けるなどである。
方法
調査対象者は,日本,中国,韓国の3歳から6歳の子どもの保護者3828名であり,子どもについて回答させた。本研究では,それらのうち日本のデ―タ1178名を分析対象とした(表1)。回答形式は,全くできないからよくできるまでの4段階の評定尺度であった。調査期間は,2006年から2007年であった。
結果
性差についてt検定の結果,有意となった項目数を表2に示した。有意差があった項目数は,全項目数と比べるとどの年齢でも3分の1を越えず少なかった。しかも中程度の効果量(r>.3)は6歳のことばの理解の1項目であった。また,発達とともに項目数が減少する傾向が見られた。
続いて,通園施設についてt検定の結果,有意となった項目数を表3に示した。全項目数に対して有意となった項目数は少ないが,ことばの理解では比較的多かった。また,発達とともに有意な項目数は減少している。ことばの表現については,有意になった項目は非常に少なかった。なお,ことばの理解で3,4,6歳児において,わずか2項目のみ中程度の大きさの効果量が見られた。
考察
ことばの理解と表現の発達について,影響を与える要因として,性別と通園施設を取り上げた。女子の方がことばの発達が早いと思われがちであるが,そのような傾向は見られなかった。また,ことばの理解にわずかながら幼稚園の方が得点は高かったが多くの項目には差がなく,特に表現については全く差がないと言えよう。幼稚園や保育所に通園していない子どものデータがないので解釈は多少限定的であるが,5歳,6歳と差がますますなくなることから,集団生活を行うことが他の要因の効果を上回ると考えられる。