[PE001] チーム援助の実践が学校全体の適応援助体制に及ぼす効果の検討
Keywords:チーム援助, 学校適応援助体制, 質問紙調査
問題と目的
近年,社会の変化に伴い,子どもの生活も多様化し,学力低下や不登校,いじめ,非行,発達障害等,児童生徒の学校適応に関する問題は複雑化してきている。このような中で,学級担任や一部の教職員の持つ力量や経験のみに基づく指導・援助だけでは,うまく対応しきれないケースが多くなってきた。生徒指導提要(文部科学省,2010)では,これらの問題に対して,学級担任一人でなく,校内の教職員や外部の専門家を活用して組織的に対応する「チームによる援助」の重要性を示唆している。馬場・西山(2012)は,小学校における組織的チーム援助を実践した結果,児童の学校適応を促進するだけでなく,チーム援助に関わった教師の援助力の向上が認められたことを報告している。しかし,チーム援助の実践と学校全体の適応援助体制充実についての関連性はまだ十分に明らかにされていない。よって本研究では,チーム援助の実践が,学校適応援助体制の充実に及ぼす効果を,教師への質問紙調査により検討することを目的とする。
方法
(1)調査時期
X年12月とX+1年12月
(2)調査対象
B小学校とC小学校に在籍する教師を調査対象とした。B小学校は,X年9月よりX+1年12月まで第1筆者が介入し,チーム援助を4ケース実践した小学校であった。C小学校では,B小学校と規模・組織が類似した小学校で,チーム援助の組織的・体系的実施が行われていなかった。
(3)手続き
第1次調査:A市教育委員会へ調査の目的を説明し了承を得た後,校長会で調査協力を依頼した。その後,教育委員会を通して各学校へ質問紙を配布し,校内で取りまとめを依頼し回収した。
第2次調査:B小学校とC小学校の校長に研究の目的を説明し了承を得た後,校内の取りまとめ役を通して各学校へ質問紙を配布し,回収した。
(4)質問項目
先行研究(西山・淵上・迫田,2009)を参考に,学校適応援助体制充実
の指標と考えられる要因を含めた7つの質問項目を検討し小学校向けに改変した(表1)。フェイスシート(性別,年齢,教職経験,職名・校務分掌)
と併せて,これらの7項目について「1-そう思わない」「2-どちらかといえばそう思わない」「3-どちらかといえばそう思う」「4-そう思う」の4件法で回答を求めた。
結果
B小学校とC小学校での調査の回答を分析し,2回の結果を比較し分散分析による検定を行った。その結果,2校間の変化には有意な交互作用が見られ,(F(1,47)=30.20,p<.001),B小学校の上昇の度合いがG小学校よりも高いことが示された(図1)。また,体制充実の指標とした7項目を,因子分析(主因子法)したところ1因子構造である(表2)ことから,概念的妥当性が裏付けられたと言える。
考察
調査の結果から,チーム援助を実践することが,学校適応援助体制の充実に効果を及ぼすことが示唆された。換言すると,チーム援助が実践できる体制づくりを組織的・体系的に行うことにより,教職員は学校全体の適応援助体制を向上したと認知する傾向があることが示された。そのことは,一人で抱える負担感を感じにくくなったことが示唆されたと言えるのではないかと考える。
ただし本研究では,B小学校のみにおける実践を取り上げており,成果検討ではC小学校との比較のみを対象として取り上げている。汎用性を検討するにあたっては,さらにチーム援助の実践校を増やし,調査対象校を広げていく必要があり,これらが今後の課題と考えられる。
近年,社会の変化に伴い,子どもの生活も多様化し,学力低下や不登校,いじめ,非行,発達障害等,児童生徒の学校適応に関する問題は複雑化してきている。このような中で,学級担任や一部の教職員の持つ力量や経験のみに基づく指導・援助だけでは,うまく対応しきれないケースが多くなってきた。生徒指導提要(文部科学省,2010)では,これらの問題に対して,学級担任一人でなく,校内の教職員や外部の専門家を活用して組織的に対応する「チームによる援助」の重要性を示唆している。馬場・西山(2012)は,小学校における組織的チーム援助を実践した結果,児童の学校適応を促進するだけでなく,チーム援助に関わった教師の援助力の向上が認められたことを報告している。しかし,チーム援助の実践と学校全体の適応援助体制充実についての関連性はまだ十分に明らかにされていない。よって本研究では,チーム援助の実践が,学校適応援助体制の充実に及ぼす効果を,教師への質問紙調査により検討することを目的とする。
方法
(1)調査時期
X年12月とX+1年12月
(2)調査対象
B小学校とC小学校に在籍する教師を調査対象とした。B小学校は,X年9月よりX+1年12月まで第1筆者が介入し,チーム援助を4ケース実践した小学校であった。C小学校では,B小学校と規模・組織が類似した小学校で,チーム援助の組織的・体系的実施が行われていなかった。
(3)手続き
第1次調査:A市教育委員会へ調査の目的を説明し了承を得た後,校長会で調査協力を依頼した。その後,教育委員会を通して各学校へ質問紙を配布し,校内で取りまとめを依頼し回収した。
第2次調査:B小学校とC小学校の校長に研究の目的を説明し了承を得た後,校内の取りまとめ役を通して各学校へ質問紙を配布し,回収した。
(4)質問項目
先行研究(西山・淵上・迫田,2009)を参考に,学校適応援助体制充実
の指標と考えられる要因を含めた7つの質問項目を検討し小学校向けに改変した(表1)。フェイスシート(性別,年齢,教職経験,職名・校務分掌)
と併せて,これらの7項目について「1-そう思わない」「2-どちらかといえばそう思わない」「3-どちらかといえばそう思う」「4-そう思う」の4件法で回答を求めた。
結果
B小学校とC小学校での調査の回答を分析し,2回の結果を比較し分散分析による検定を行った。その結果,2校間の変化には有意な交互作用が見られ,(F(1,47)=30.20,p<.001),B小学校の上昇の度合いがG小学校よりも高いことが示された(図1)。また,体制充実の指標とした7項目を,因子分析(主因子法)したところ1因子構造である(表2)ことから,概念的妥当性が裏付けられたと言える。
考察
調査の結果から,チーム援助を実践することが,学校適応援助体制の充実に効果を及ぼすことが示唆された。換言すると,チーム援助が実践できる体制づくりを組織的・体系的に行うことにより,教職員は学校全体の適応援助体制を向上したと認知する傾向があることが示された。そのことは,一人で抱える負担感を感じにくくなったことが示唆されたと言えるのではないかと考える。
ただし本研究では,B小学校のみにおける実践を取り上げており,成果検討ではC小学校との比較のみを対象として取り上げている。汎用性を検討するにあたっては,さらにチーム援助の実践校を増やし,調査対象校を広げていく必要があり,これらが今後の課題と考えられる。