[PE009] 海外研修旅行が国際理解の向上に及ぼす影響(1)
高校における実践
Keywords:国際理解, 海外研修旅行, 高校
【問題と目的】
近年のグローバル化した社会では,国を超えた課題の問題解決に取り組むことが求められ,グローバルに活動できる人材の育成が求められている。そんななかで,日本の教育現場においても,教科教育における指導(例.国語,社会(地理,世界史),英語,道徳など),海外の学校との交流,特別活動(ユネスコへの募金活動,留学生との交流会,文化祭を利用した調べ学習の成果の発表)を通して国際的資質を促進する教育を積極的に行うことが推奨されている(水越・田中,1995)。
一方,こうした学校で行われる国際教育のための活動の効果について,実証的に研究しているものは少ない。そのような問題意識から,鈴木・坂元・森・坂元・高比良・足立・勝谷・小林・橿淵・木村(2000)は,国際理解教育の効果を検討するための尺度として,「国際理解測定尺度(IUS2000)を作成し,信頼性・妥当性を検討している。本研究ではこの「国際理解測定尺度」を用いて,「海外研修旅行」がどのような効果をもつのか,実証的に検討することを目的とする。
【方法】
対象 関東圏内の国立大学附属高校2年生246名。
時期 平成25年11月下旬。
海外研修旅行の内容 シンガポール3泊5日。うち,1日は現地提携高校の生徒との交流,2日間は班ごとにテーマ(交通状況,商品流通,自然災害の比較,水問題など)を設定しフィールドワークを実施した。
手続き 研修旅行前後に学級で質問紙を実施した。
内容 鈴木ら(2000)が開発した「国際理解測定尺度」にいくつかの項目を加えた質問紙を作成した。異文化理解・自国文化理解20項目,コミュニケーション能力・外国語の能力12項目,他者と共同での問題解決能力9項目,海外・国際的交流への積極性(以下,海外への積極性)7項目,計48項目。5件法。
【結果】
(1)国際的資質の変化について
国際的資質の10の要素について,海外研修旅行前後の得点をt検定によって比較した結果,「外国人親和性」「自国理解」「外国文化興味関心」「英語力」「海外への積極性」において有意差がみられ,事後が事前より高かった(Table 1参照)。
(2)海外への積極性に影響を与える要因の検討
「異文化理解・自国文化理解」の9つの要素と問題解決能力を独立変数,「海外への積極性」を従属変数とした重回帰分析を実施した結果,重回帰式は有意となり(adjR2=.486),外国人親和性(β=.422),アサーション(β=.115),興味・関心(β=.197)が有意な影響を及ぼしていた(Table 2参照)。
【考察】
本研究の結果から,海外に行くことによって,自国を改めて考える機会になり,「自国理解」につながることが示された。また,英語圏への研修旅行は,「英語力」の自信を高めることも示された。このように,海外研修旅行への参加が,どのような効果をもつのか具体的に示せたことは本研究の成果である。一方,本研究の限界と今後の課題として,今回は1つの海外研修旅行の効果を示すものであるが,海外研修旅行の内容によってその効果は異なることが考えられる。研修旅行のどの体験がどのような成長につながるのか,研究を積みあげて検討していく必要がある。
近年のグローバル化した社会では,国を超えた課題の問題解決に取り組むことが求められ,グローバルに活動できる人材の育成が求められている。そんななかで,日本の教育現場においても,教科教育における指導(例.国語,社会(地理,世界史),英語,道徳など),海外の学校との交流,特別活動(ユネスコへの募金活動,留学生との交流会,文化祭を利用した調べ学習の成果の発表)を通して国際的資質を促進する教育を積極的に行うことが推奨されている(水越・田中,1995)。
一方,こうした学校で行われる国際教育のための活動の効果について,実証的に研究しているものは少ない。そのような問題意識から,鈴木・坂元・森・坂元・高比良・足立・勝谷・小林・橿淵・木村(2000)は,国際理解教育の効果を検討するための尺度として,「国際理解測定尺度(IUS2000)を作成し,信頼性・妥当性を検討している。本研究ではこの「国際理解測定尺度」を用いて,「海外研修旅行」がどのような効果をもつのか,実証的に検討することを目的とする。
【方法】
対象 関東圏内の国立大学附属高校2年生246名。
時期 平成25年11月下旬。
海外研修旅行の内容 シンガポール3泊5日。うち,1日は現地提携高校の生徒との交流,2日間は班ごとにテーマ(交通状況,商品流通,自然災害の比較,水問題など)を設定しフィールドワークを実施した。
手続き 研修旅行前後に学級で質問紙を実施した。
内容 鈴木ら(2000)が開発した「国際理解測定尺度」にいくつかの項目を加えた質問紙を作成した。異文化理解・自国文化理解20項目,コミュニケーション能力・外国語の能力12項目,他者と共同での問題解決能力9項目,海外・国際的交流への積極性(以下,海外への積極性)7項目,計48項目。5件法。
【結果】
(1)国際的資質の変化について
国際的資質の10の要素について,海外研修旅行前後の得点をt検定によって比較した結果,「外国人親和性」「自国理解」「外国文化興味関心」「英語力」「海外への積極性」において有意差がみられ,事後が事前より高かった(Table 1参照)。
(2)海外への積極性に影響を与える要因の検討
「異文化理解・自国文化理解」の9つの要素と問題解決能力を独立変数,「海外への積極性」を従属変数とした重回帰分析を実施した結果,重回帰式は有意となり(adjR2=.486),外国人親和性(β=.422),アサーション(β=.115),興味・関心(β=.197)が有意な影響を及ぼしていた(Table 2参照)。
【考察】
本研究の結果から,海外に行くことによって,自国を改めて考える機会になり,「自国理解」につながることが示された。また,英語圏への研修旅行は,「英語力」の自信を高めることも示された。このように,海外研修旅行への参加が,どのような効果をもつのか具体的に示せたことは本研究の成果である。一方,本研究の限界と今後の課題として,今回は1つの海外研修旅行の効果を示すものであるが,海外研修旅行の内容によってその効果は異なることが考えられる。研修旅行のどの体験がどのような成長につながるのか,研究を積みあげて検討していく必要がある。