[PE012] 感謝の教わり方
大学生を対象とした回顧法による検討
Keywords:感謝, 社会的感情, 心理教育
“感謝すること”は,本邦における小学校から中学校の道徳の学習指導要領(文部科学省, 2008)で目標として掲げられており,重要視されている。
本研究では,“感謝すること”を教える心理教育について考える第一段階として,現在の大学生が誰から・どのようにして感謝の気持ちを教わってきたのかを明らかにすることを目指す。
なお,本研究では感謝の教わり方を広く収集するため,感謝について教わる時期を小学生や中学生に限定せず,幼児や高校生,大学生の時期も含めた検討を行う。また,感謝について教える人の立場も教員に限定せず,家族や友人等も含める。
方 法
大学生63名を対象とする質問紙調査を行った。調査では,感謝の気持ちを誰からどのようにして教わったか,幼児,小学生,中学生,高校生,大学生の各時期について,覚えていることをできるだけたくさん書くよう求めた。なお,感謝の気持ちを教えた人については,(a)教員,(b)母親,(c)父親,(d)友人,(5)その他の5つから選択させた。感謝の教わり方については,自由記述形式で書き出すよう求めた。
結 果 ・ 考 察
誰から教わったか まず,感謝の気持ちを誰から教わったかについて集計した(Table 1)。その結果,幼児期には母親から教わることが最も多いことが示された。また,小学生や中学生,高校生の時期には,他の立場の人と比べて,教員から感謝の気持ちを教わることが多いのに対して,大学生の時期には,教員から感謝の気持ちを教わることが非常に少ないことが示された。
どのようにして感謝の気持ちを教わったか 得られた記述について,心理学を専門とする大学教員1名,大学院生1名,大学生2名の計4名で分類した結果,感謝の教わり方は15種類に整理された。以下に各カテゴリの名称と具体例を記す。すなわち,(a)感謝すると良いことがあると言われた,(b)感謝することは大切だと言われた,(c)どういうとき・何に対して感謝すべきかを口頭で教えられた,(d)お礼の言葉を述べるように言われた,(e)お礼を言うことは大切だと言われた,(f)お礼の言葉の意味について説明を受けた,(g)お礼をするように言われた,(h)感謝の気持ちを表すような礼儀作法(動作)をするように言われた,(i)他者にかかっている負担について説明を受けた,(j)自分の置かれている立場が当たり前ではないことを教えられた,(k)自分が置かれている立場が当たり前ではないことに気付かされるようなことがあった,(l)自分が親切にした時に,相手からお礼をしてもらった,(m)自分が親切をした時に,相手からお礼を言われた,(n)他者が感謝しているところを傍観した,(o)他の人から良くしてもらい,強く感謝を感じるようなことがあった,の15種類であった。
15種類のカテゴリの中には,“感謝すること”そのものについて説明を受けるもの(a,b,c)だけでなく,感謝の気持ちの伝え方や,感謝の気持ちを伝えることの意義について説明を受けるもの(d,e,f,g,h)も含まれていた。また,感謝について口頭で説明を受けるものだけでなく,他者が感謝している様子を見ることを通して,感謝の気持ちを教わったという内容もみられた(l,m,n)。
以上の結果から,感謝については,様々な方法で教育がなされていると言える。しかし,慣習的に行われてきた教育方法が必ずしも効果的なものとは限らない。今後は,感謝についての心理教育を行う際に効果的な方法が上記のいずれであるのか,検討が必要であろう。
本研究では,“感謝すること”を教える心理教育について考える第一段階として,現在の大学生が誰から・どのようにして感謝の気持ちを教わってきたのかを明らかにすることを目指す。
なお,本研究では感謝の教わり方を広く収集するため,感謝について教わる時期を小学生や中学生に限定せず,幼児や高校生,大学生の時期も含めた検討を行う。また,感謝について教える人の立場も教員に限定せず,家族や友人等も含める。
方 法
大学生63名を対象とする質問紙調査を行った。調査では,感謝の気持ちを誰からどのようにして教わったか,幼児,小学生,中学生,高校生,大学生の各時期について,覚えていることをできるだけたくさん書くよう求めた。なお,感謝の気持ちを教えた人については,(a)教員,(b)母親,(c)父親,(d)友人,(5)その他の5つから選択させた。感謝の教わり方については,自由記述形式で書き出すよう求めた。
結 果 ・ 考 察
誰から教わったか まず,感謝の気持ちを誰から教わったかについて集計した(Table 1)。その結果,幼児期には母親から教わることが最も多いことが示された。また,小学生や中学生,高校生の時期には,他の立場の人と比べて,教員から感謝の気持ちを教わることが多いのに対して,大学生の時期には,教員から感謝の気持ちを教わることが非常に少ないことが示された。
どのようにして感謝の気持ちを教わったか 得られた記述について,心理学を専門とする大学教員1名,大学院生1名,大学生2名の計4名で分類した結果,感謝の教わり方は15種類に整理された。以下に各カテゴリの名称と具体例を記す。すなわち,(a)感謝すると良いことがあると言われた,(b)感謝することは大切だと言われた,(c)どういうとき・何に対して感謝すべきかを口頭で教えられた,(d)お礼の言葉を述べるように言われた,(e)お礼を言うことは大切だと言われた,(f)お礼の言葉の意味について説明を受けた,(g)お礼をするように言われた,(h)感謝の気持ちを表すような礼儀作法(動作)をするように言われた,(i)他者にかかっている負担について説明を受けた,(j)自分の置かれている立場が当たり前ではないことを教えられた,(k)自分が置かれている立場が当たり前ではないことに気付かされるようなことがあった,(l)自分が親切にした時に,相手からお礼をしてもらった,(m)自分が親切をした時に,相手からお礼を言われた,(n)他者が感謝しているところを傍観した,(o)他の人から良くしてもらい,強く感謝を感じるようなことがあった,の15種類であった。
15種類のカテゴリの中には,“感謝すること”そのものについて説明を受けるもの(a,b,c)だけでなく,感謝の気持ちの伝え方や,感謝の気持ちを伝えることの意義について説明を受けるもの(d,e,f,g,h)も含まれていた。また,感謝について口頭で説明を受けるものだけでなく,他者が感謝している様子を見ることを通して,感謝の気持ちを教わったという内容もみられた(l,m,n)。
以上の結果から,感謝については,様々な方法で教育がなされていると言える。しかし,慣習的に行われてきた教育方法が必ずしも効果的なものとは限らない。今後は,感謝についての心理教育を行う際に効果的な方法が上記のいずれであるのか,検討が必要であろう。