[PE021] 継続的巡回相談を通した学童保育指導員への支援
Keywords:学童保育, 継続的巡回相談, 支援
【問 題】
本研究の目的は,専門家による継続的巡回相談を通した学童保育指導員への支援によって,学童保育における要支援児童をはじめとする児童の発達支援を促進することである。
学童保育への障がい児の受け入れ数は,法制化された1998年度より増加の一途をたどり,2013年5月現在では障がい児を受け入れている学童保育所は51.4%と全体の半数を超えている。また,在籍障がい児の全登録児童数に対する割合も年々増加して2013年には2.8%に達している。障がい児などの要支援児童に対しては,個々の障がいの程度と特性に応じた適切な対応が求められるが,専門的知識を有する指導員の配置は稀で,指導員の資質向上のための研修や巡回相談も充分とはいえない。このように,学童保育の現場にはあらゆるレベルの支援が届きにくく,指導員は手探り状態で日々の保育にあたっているのが現状である。
筆者は2009年より約二年間にわたって2つの学童保育所に対する継続的な巡回相談を実施し,指導員の支援ニーズ(遠矢,2010)やそれぞれの学童保育所の困難に応じた継続的なコンサルテーションのあり方,要支援児童に対する個別支援について検討してきた(遠矢,2011,2012,2013)。ここでは,継続的巡回相談後に指導員に実施した質問紙調査結果について報告する。
【方 法】
2009年5月より2011年3月にかけて,2つの学童保育所に対して2週間に1回の頻度で継続的な巡回相談を実施した。その後,2011年5月に2つの学童保育所の指導員に対して,二年間の継続的巡回相談を振り返る質問紙調査を行った。質問紙の内容は,遠矢(2010)で明らかになった指導員の支援ニーズを踏まえて作成した,二年間の支援活動に対する評価に関する15項目(6段階評価),このうち特に有効だったと思う支援内容,今後の学童保育所のキャッチフレーズ,学童保育指導員として保育に活かしたい自分の持ち味の4点と自由記述である。2つの学童保育所の指導員計7名から回答を得た。ここでは,継続的巡回相談の支援活動に対する評価について報告する。
【結 果 と 考 察】
まず,継続的巡回相談の支援活動に対する評価の平均値を表1に示す。すべての項目で継続的巡回相談の支援は有効だと評価されていたが,特に,巡回相談後のミーティング(6.00),要支援児童への関わり方についてのアドバイス(5.86)等の評価が高かった。一方,保護者の言動理解に関するアドバイス(4.71),指導員体制や役割分担に関するアドバイス(4.86)の2項目が4点台であった。
表1 継続的巡回相談の支援活動の評価
項 目 平均値
1.クラブ内の環境整備や配置・掲示 5.43
2.子どもの特徴理解 5.57
3.子ども同士の関係理解 5.29
4.要支援児童への関わり方 5.86
5.子どものトラブル対応 5.57
6.子どもとの遊びを通した保育支援 5.00
7.指導員としての力量アップ 5.29
8.保護者の言動理解 4.71
9.保護者対応 5.14
10.指導員体制や役割分担 4.86
11.指導員の心理面のケア 5.43
12.自分の子どもを捉える視点の変化 5.43
13.自分を活かす保育スタイル 5.00
14.相談員が子どもと直接関わるスタイル 5.29
15.巡回相談後のミーティング 6.00
さらに,6名の指導員を対象に15項目の中で特に有効だった支援活動を2つ選択してもらった結果,クラブ内の環境整備や配置・掲示(3),子どものトラブル対応(3),指導員の心理面のケア(3),要支援児童への関わり方(1),子どもの特徴理解(1),巡回相談時のミーティング(1)であった。
これらの結果より,今回の継続的巡回相談は遠矢(2010)で抽出した学童保育指導員のニーズに概ね応えるものであったと考えられる。日々の保育にタイムリーに活かせる学童保育所内の視覚的環境調整や要支援児童への関わり方についての具体的なアドバイスに加えて,ミーティングを通して指導員の悩みを共有する時間の評価が高かった。また,相談員の立場からも継続的な関わりによって各々の子どもの特性に応じた支援プランが立てられる点がメリットであった。今後,子どもの発達支援に関わる学童保育所および指導員への,さらなる効果的な支援の方策について検討する。
本研究は平成20~22年度科学研究費補助金(基盤研究(C)課題番号20530615)の助成を受けた。
本研究の目的は,専門家による継続的巡回相談を通した学童保育指導員への支援によって,学童保育における要支援児童をはじめとする児童の発達支援を促進することである。
学童保育への障がい児の受け入れ数は,法制化された1998年度より増加の一途をたどり,2013年5月現在では障がい児を受け入れている学童保育所は51.4%と全体の半数を超えている。また,在籍障がい児の全登録児童数に対する割合も年々増加して2013年には2.8%に達している。障がい児などの要支援児童に対しては,個々の障がいの程度と特性に応じた適切な対応が求められるが,専門的知識を有する指導員の配置は稀で,指導員の資質向上のための研修や巡回相談も充分とはいえない。このように,学童保育の現場にはあらゆるレベルの支援が届きにくく,指導員は手探り状態で日々の保育にあたっているのが現状である。
筆者は2009年より約二年間にわたって2つの学童保育所に対する継続的な巡回相談を実施し,指導員の支援ニーズ(遠矢,2010)やそれぞれの学童保育所の困難に応じた継続的なコンサルテーションのあり方,要支援児童に対する個別支援について検討してきた(遠矢,2011,2012,2013)。ここでは,継続的巡回相談後に指導員に実施した質問紙調査結果について報告する。
【方 法】
2009年5月より2011年3月にかけて,2つの学童保育所に対して2週間に1回の頻度で継続的な巡回相談を実施した。その後,2011年5月に2つの学童保育所の指導員に対して,二年間の継続的巡回相談を振り返る質問紙調査を行った。質問紙の内容は,遠矢(2010)で明らかになった指導員の支援ニーズを踏まえて作成した,二年間の支援活動に対する評価に関する15項目(6段階評価),このうち特に有効だったと思う支援内容,今後の学童保育所のキャッチフレーズ,学童保育指導員として保育に活かしたい自分の持ち味の4点と自由記述である。2つの学童保育所の指導員計7名から回答を得た。ここでは,継続的巡回相談の支援活動に対する評価について報告する。
【結 果 と 考 察】
まず,継続的巡回相談の支援活動に対する評価の平均値を表1に示す。すべての項目で継続的巡回相談の支援は有効だと評価されていたが,特に,巡回相談後のミーティング(6.00),要支援児童への関わり方についてのアドバイス(5.86)等の評価が高かった。一方,保護者の言動理解に関するアドバイス(4.71),指導員体制や役割分担に関するアドバイス(4.86)の2項目が4点台であった。
表1 継続的巡回相談の支援活動の評価
項 目 平均値
1.クラブ内の環境整備や配置・掲示 5.43
2.子どもの特徴理解 5.57
3.子ども同士の関係理解 5.29
4.要支援児童への関わり方 5.86
5.子どものトラブル対応 5.57
6.子どもとの遊びを通した保育支援 5.00
7.指導員としての力量アップ 5.29
8.保護者の言動理解 4.71
9.保護者対応 5.14
10.指導員体制や役割分担 4.86
11.指導員の心理面のケア 5.43
12.自分の子どもを捉える視点の変化 5.43
13.自分を活かす保育スタイル 5.00
14.相談員が子どもと直接関わるスタイル 5.29
15.巡回相談後のミーティング 6.00
さらに,6名の指導員を対象に15項目の中で特に有効だった支援活動を2つ選択してもらった結果,クラブ内の環境整備や配置・掲示(3),子どものトラブル対応(3),指導員の心理面のケア(3),要支援児童への関わり方(1),子どもの特徴理解(1),巡回相談時のミーティング(1)であった。
これらの結果より,今回の継続的巡回相談は遠矢(2010)で抽出した学童保育指導員のニーズに概ね応えるものであったと考えられる。日々の保育にタイムリーに活かせる学童保育所内の視覚的環境調整や要支援児童への関わり方についての具体的なアドバイスに加えて,ミーティングを通して指導員の悩みを共有する時間の評価が高かった。また,相談員の立場からも継続的な関わりによって各々の子どもの特性に応じた支援プランが立てられる点がメリットであった。今後,子どもの発達支援に関わる学童保育所および指導員への,さらなる効果的な支援の方策について検討する。
本研究は平成20~22年度科学研究費補助金(基盤研究(C)課題番号20530615)の助成を受けた。