[PE023] ダイナミック・アセスメントを導入した教授方略が言語による科学的概念の獲得に及ぼす効果
Keywords:ダイナミック・アセスメント, 教授方略
本研究で活用するダイナミック・アセスメントは,学習が終了した時点における知識や技能がどの程度かを測定する「到達度評価」という意味合いとは異なり,学習過程で活用されるものであり,子どもたちの学習状況を教師が理解し,その課題に対して即時フィードバックを行う。つまり,学習の結果で評価する「結果主義」の評価法とは異なり,学習の過程で評価する「過程主義」の評価法であるといえる。これまでに,ダイナミック・アセスメントを一般的な学校教育の教科教育へ適用した研究は稀少であり,また,個別事例ではなく,クラス全体に対するダイナミック・アセスメントの効果は検証されていない。
そこで本研究では,小学校第5学年理科の「振り子」の単元を取り上げ,「言語活動の困難性(cf.観察・実験において結果を表やグラフに整理し,予想や仮説と関係付けながら考察を言語化する(学習指導要領解説理科編:文部科学省,2008))」に焦点を当て,ダイナミック・アセスメントを導入した授業を通して,言語による科学的概念の獲得に及ぼす教授効果を検討する。
【 方 法 】
対象者 公立小学校第5学年の1クラスの児童。事前テスト時に欠席をした2名を除き,計25名を対象にした。実施期間は,振り子の単元の延べ8時間。
教授方略 事前テスト-介入-事後テストという形式を採用した。ダイナミック・アセスメントでは,子どもの変容可能性と,学習を容易にするメタ認知的過程に焦点を当てる(子どもに自らの解答を再考させ,よりよい解答を目指させる)。教師は,評価者,記録者であると同時に積極的な介入者となる(子どもに修正させなければならない課題があった場合,教師はすぐに個のレベルにまで焦点を当て,その改善の重要性を実感させる。教師は個々の学習状況を踏まえつつ,全体の学習状況も把握する)。
手続き 事前・事後テストでは,振り子以外の水溶液の単元を取り上げ,「仮説」の記述においては,「条件」,「方法」,「結果の予想」という3つの要素が書かれているか否かで評価した。同様に,「考察」の記述においては,「方法」,「結果」,「結論」という要素の数により評価した。それぞれ記述について,評価を元に,言語による科学的概念のレベルを0-3に分類し,レベル3を科学的概念の獲得とした。
【 結果と考察 】
1.「仮説」の記述
事前・事後テストにおける児童の概念ごとの人数をTABLE 1に示した。事前テストにおいてはレベル0の概念を有する児童が,レベル1およびレベル3の概念を有する者よりも有意に多かった(χ2(3)=18.36, p<.01)。さらに,事前テストと事後テストとの間の概念の変化について,後者における各概念の人数を観測度数,前者におけるそれを期待度数としてχ2検定を行った。その結果,事後テストでは事前テストよりもレベル3の概念を有する者が増加し,レベル0およびレベル2の概念を有する者が減少した(χ2 (3)=114.23, p<.001)。
事前-事後間で概念の変化が生じた児童は22名(88.0%)であったが,概念のレベルが向上した児童(18名, 81.8%)は低下した児童(4名, 18.2%)よりも多かった(p=.004)。また,レベル3へ変化した人数はレベル2へのそれよりも多かった(χ2 (2)= 9.91, p<.01)。
2.「考察」の記述
事前・事後テストにおける児童の概念ごとの人数をTABLE 2に示した。「仮説」の記述と同様の方法により分析を行った。その結果,事前テストにおいては概念ごとの人数に有意な偏りはみられなかったが,事後テストでは事前テストよりもレベル3の概念を有する者が増加し,レベル0およびレベル1の概念を有する者が減少した(χ2 (3)= 31.12, p<.001)。
事前-事後間で概念の変化が生じた児童は18名(94.4%)であったが,概念のレベルが向上した児童(17名, 81.8%)は低下した児童(1名,5.6%)よりも多かった(p=.000)。また,レベル3へ変化した人数はレベル1へのそれよりも多かった(χ2(2)=8.33, p<. 05)。
以上の結果を総合すると,事前テストにおいては,「仮説」「考察」の記述ともレベル3である者はいなかった。特に「仮説」においては事前テストにおいてレベル0の者が最も多く困難であったことが窺われる。これに対して,事後テストにおいては両者がレベル3である者は12名(48.0%)に増加した。すなわち,授業によって半数近くの児童が予想・仮説と考察との両者においてレベル3の概念を獲得し,言語による科学的概念の獲得に効果が見られたことが明らかにされた。
そこで本研究では,小学校第5学年理科の「振り子」の単元を取り上げ,「言語活動の困難性(cf.観察・実験において結果を表やグラフに整理し,予想や仮説と関係付けながら考察を言語化する(学習指導要領解説理科編:文部科学省,2008))」に焦点を当て,ダイナミック・アセスメントを導入した授業を通して,言語による科学的概念の獲得に及ぼす教授効果を検討する。
【 方 法 】
対象者 公立小学校第5学年の1クラスの児童。事前テスト時に欠席をした2名を除き,計25名を対象にした。実施期間は,振り子の単元の延べ8時間。
教授方略 事前テスト-介入-事後テストという形式を採用した。ダイナミック・アセスメントでは,子どもの変容可能性と,学習を容易にするメタ認知的過程に焦点を当てる(子どもに自らの解答を再考させ,よりよい解答を目指させる)。教師は,評価者,記録者であると同時に積極的な介入者となる(子どもに修正させなければならない課題があった場合,教師はすぐに個のレベルにまで焦点を当て,その改善の重要性を実感させる。教師は個々の学習状況を踏まえつつ,全体の学習状況も把握する)。
手続き 事前・事後テストでは,振り子以外の水溶液の単元を取り上げ,「仮説」の記述においては,「条件」,「方法」,「結果の予想」という3つの要素が書かれているか否かで評価した。同様に,「考察」の記述においては,「方法」,「結果」,「結論」という要素の数により評価した。それぞれ記述について,評価を元に,言語による科学的概念のレベルを0-3に分類し,レベル3を科学的概念の獲得とした。
【 結果と考察 】
1.「仮説」の記述
事前・事後テストにおける児童の概念ごとの人数をTABLE 1に示した。事前テストにおいてはレベル0の概念を有する児童が,レベル1およびレベル3の概念を有する者よりも有意に多かった(χ2(3)=18.36, p<.01)。さらに,事前テストと事後テストとの間の概念の変化について,後者における各概念の人数を観測度数,前者におけるそれを期待度数としてχ2検定を行った。その結果,事後テストでは事前テストよりもレベル3の概念を有する者が増加し,レベル0およびレベル2の概念を有する者が減少した(χ2 (3)=114.23, p<.001)。
事前-事後間で概念の変化が生じた児童は22名(88.0%)であったが,概念のレベルが向上した児童(18名, 81.8%)は低下した児童(4名, 18.2%)よりも多かった(p=.004)。また,レベル3へ変化した人数はレベル2へのそれよりも多かった(χ2 (2)= 9.91, p<.01)。
2.「考察」の記述
事前・事後テストにおける児童の概念ごとの人数をTABLE 2に示した。「仮説」の記述と同様の方法により分析を行った。その結果,事前テストにおいては概念ごとの人数に有意な偏りはみられなかったが,事後テストでは事前テストよりもレベル3の概念を有する者が増加し,レベル0およびレベル1の概念を有する者が減少した(χ2 (3)= 31.12, p<.001)。
事前-事後間で概念の変化が生じた児童は18名(94.4%)であったが,概念のレベルが向上した児童(17名, 81.8%)は低下した児童(1名,5.6%)よりも多かった(p=.000)。また,レベル3へ変化した人数はレベル1へのそれよりも多かった(χ2(2)=8.33, p<. 05)。
以上の結果を総合すると,事前テストにおいては,「仮説」「考察」の記述ともレベル3である者はいなかった。特に「仮説」においては事前テストにおいてレベル0の者が最も多く困難であったことが窺われる。これに対して,事後テストにおいては両者がレベル3である者は12名(48.0%)に増加した。すなわち,授業によって半数近くの児童が予想・仮説と考察との両者においてレベル3の概念を獲得し,言語による科学的概念の獲得に効果が見られたことが明らかにされた。