[PE030] 教職課程における学生主体の授業の実践と評価
Keywords:参加型授業, 実践的指導力, 教職課程
【問題と目的】
近年、大学教育において学生の参加型授業の導入が進められている。教師と学生の双方向の授業を工夫するなど学生の主体的な学習活動を保障する授業が模索されている。しかし、大人数の授業の場合、どうしても講義中心の一方通行型の授業にならざるをえず、大人数の授業の中で学生が主体的に参加する授業の方法が求められている。特に、将来教壇に立つ教職課程を受講する学生には、講義中心の受身型の授業ではなく、教壇に立つことを想定した「実践的指導力」の基礎を強調した授業や、小集団の活動を通して学生が主体的に問題を考え、課題を解決する授業などを工夫、開発していく必要があるだろう。
そこで、本実践研究では教職課程を初めて受講するT大学1年生の「教師論」の授業から、「授業の計画・実施・計画の修正」のサイクルを図りながら、双方向の授業、ディスカッション・演習、レポート作成等から学生の主体的な授業のあり方を検討した。本発表では、大学1年生の教職に対する意識調査から、学生が希求する教職課程での授業のあり方を考察する。
【方法】
1、調査対象者 T大学1年生 189名
2、授業の方法
①授業の進行が適切であり、学生の理解度に合わせて進度を調整する。
②1単位時間内の授業は、講義、ディスカッション、演習を取り入れ、学生が能動的に活動する時間を保障する。教師は、授業終了後本時の自己評価を行い、次時の計画の修正を常に行う。
③学生の座席は、5、6人のグループを作成し指定席とする。常に同じ集団でディスカッション、演習等を協力しながら行えるようにする。ディスカッションがマンネリ化した場合は、途中でグループを再編成する。
④学生が作成したレポート等は、次週までに評価し、優れたレポートは翌週の授業冒頭で発表させる。学生からは、15周目に授業全体の評価を受ける。
【結果と考察】
教職に対する意識調査を行った。近年、文部科学省、教育委員会から強い要望が大学に寄せられている「実践的指導力」について、三つの類型に分け、学生がどの類型を支持するかを質問した。
第一の類型は、教師の「実践的指導力」とは、「学問」、「学識」だとする考え方である。授業を通して、「何を(What)」教えるのか、授業で伝える知識内容とその基盤にある学問を理解する力量こそが、教師の指導力だとする考え方である。
第二の類型は、「実践的指導力」をむしろ「学問」を「教育」へと翻案する力量に力点を置いて考えようとする考え方である。子どもの考えや気持ちを「どのように」理解するのか、「どうすれば」子どもの学びや成長を支えていけるのか、この「どのように(How)」の部分に主眼をおく指導力観である。
第三の類型は、「実践的指導力」とは教師の人格そのもの、教師の「人間性」、「人間力」だとするものである。教師の「熱意」や「意欲」、「道徳心」や「使命感」が重視される。この考え方によれば、教師の指導力は人間次第ということになる。
189名の学生に、上記の中で、いずれかを支持するのかアンケート調査を実施した。その結果は以下のとおりである。
第一の類型 2名(1%)
第二の類型 114名(60%)
第三の類型 73名(39%)
上記の結果より、学生は、学問による学識よりも、教壇ですぐに役立つ「実践的指導力」を期待していることがわかった。また、教職への情熱が第一と考える学生もおり、第二、第三類型が大多数を占めていることが本調査より示された。このことは、教職課程の授業における「学校現場で直ぐに役立つ実践的指導力」を希求している様子が伺えた。本授業の実践も、そのことを意識した授業である。しかし、「実践的指導力」を強調するあまり、多様な社会で生き抜く人材を養成する教員が、深い思考力と判断力、多様な価値観を身につける機会を経ることなく、教壇に立つことに繋がることも懸念される。教職課程におけるバランスのとれた人材養成をどのような視点で行っていくのか、今後の課題である。
近年、大学教育において学生の参加型授業の導入が進められている。教師と学生の双方向の授業を工夫するなど学生の主体的な学習活動を保障する授業が模索されている。しかし、大人数の授業の場合、どうしても講義中心の一方通行型の授業にならざるをえず、大人数の授業の中で学生が主体的に参加する授業の方法が求められている。特に、将来教壇に立つ教職課程を受講する学生には、講義中心の受身型の授業ではなく、教壇に立つことを想定した「実践的指導力」の基礎を強調した授業や、小集団の活動を通して学生が主体的に問題を考え、課題を解決する授業などを工夫、開発していく必要があるだろう。
そこで、本実践研究では教職課程を初めて受講するT大学1年生の「教師論」の授業から、「授業の計画・実施・計画の修正」のサイクルを図りながら、双方向の授業、ディスカッション・演習、レポート作成等から学生の主体的な授業のあり方を検討した。本発表では、大学1年生の教職に対する意識調査から、学生が希求する教職課程での授業のあり方を考察する。
【方法】
1、調査対象者 T大学1年生 189名
2、授業の方法
①授業の進行が適切であり、学生の理解度に合わせて進度を調整する。
②1単位時間内の授業は、講義、ディスカッション、演習を取り入れ、学生が能動的に活動する時間を保障する。教師は、授業終了後本時の自己評価を行い、次時の計画の修正を常に行う。
③学生の座席は、5、6人のグループを作成し指定席とする。常に同じ集団でディスカッション、演習等を協力しながら行えるようにする。ディスカッションがマンネリ化した場合は、途中でグループを再編成する。
④学生が作成したレポート等は、次週までに評価し、優れたレポートは翌週の授業冒頭で発表させる。学生からは、15周目に授業全体の評価を受ける。
【結果と考察】
教職に対する意識調査を行った。近年、文部科学省、教育委員会から強い要望が大学に寄せられている「実践的指導力」について、三つの類型に分け、学生がどの類型を支持するかを質問した。
第一の類型は、教師の「実践的指導力」とは、「学問」、「学識」だとする考え方である。授業を通して、「何を(What)」教えるのか、授業で伝える知識内容とその基盤にある学問を理解する力量こそが、教師の指導力だとする考え方である。
第二の類型は、「実践的指導力」をむしろ「学問」を「教育」へと翻案する力量に力点を置いて考えようとする考え方である。子どもの考えや気持ちを「どのように」理解するのか、「どうすれば」子どもの学びや成長を支えていけるのか、この「どのように(How)」の部分に主眼をおく指導力観である。
第三の類型は、「実践的指導力」とは教師の人格そのもの、教師の「人間性」、「人間力」だとするものである。教師の「熱意」や「意欲」、「道徳心」や「使命感」が重視される。この考え方によれば、教師の指導力は人間次第ということになる。
189名の学生に、上記の中で、いずれかを支持するのかアンケート調査を実施した。その結果は以下のとおりである。
第一の類型 2名(1%)
第二の類型 114名(60%)
第三の類型 73名(39%)
上記の結果より、学生は、学問による学識よりも、教壇ですぐに役立つ「実践的指導力」を期待していることがわかった。また、教職への情熱が第一と考える学生もおり、第二、第三類型が大多数を占めていることが本調査より示された。このことは、教職課程の授業における「学校現場で直ぐに役立つ実践的指導力」を希求している様子が伺えた。本授業の実践も、そのことを意識した授業である。しかし、「実践的指導力」を強調するあまり、多様な社会で生き抜く人材を養成する教員が、深い思考力と判断力、多様な価値観を身につける機会を経ることなく、教壇に立つことに繋がることも懸念される。教職課程におけるバランスのとれた人材養成をどのような視点で行っていくのか、今後の課題である。