The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表 » ポスター発表 PE

ポスター発表 PE

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PE041] 数学授業での協同過程における個人の数学的な説明構築が高校生の数列についての理解に及ぼす効果

小田切歩 (東京大学)

Keywords:協同過程, 説明構築, 数列

【問題と目的】 高校の数学授業での協同過程について,小田切(2013)では,日常的な事象の変化に関する課題について,解決方略の構造化を集団的に行う中で,日常的な知識と数学的な知識を用いて,方略間の関連に関する個人の説明構築が促進され,それが個人の知識統合につながることが示された。さらに,知識統合につながるための条件として,数学的な知識を説明の根拠として用いる必要性が示唆された。そこで本研究では,数列と関数の関係に焦点を当て,協同過程において,数学的な知識を根拠とした個人の説明構築が促進されることで,数列についての理解が促進されるかを検討した。そのために,日常的な事象について,数列(漸化式や階差数列)を利用することで,変化の様子を捉えられる課題を作成した。そして協同過程において,その課題に対する解決方略の比較検討の際に,数列と関数の関係を検討した。
【方法】 対象 東京都内の高校2年生60名(実験群29名,統制群31名)。
課題および手続き 数列を利用することで,事象の変化の様子を捉えられる課題を作成し,事前課題,授業,事後課題の順に実施した。授業以外は個人で取り組んだ。
(1)事前課題:「20匹のネズミがいる。1年間で2倍に増えるが,そのうち11匹は必ず死ぬ。このとき,ネズミが1000匹になるとすれば何年後か。」なお,1年ごとの数を順に計算して求めることも可能であったため,数列を利用して事象の変化の様子を捉えているかによって,数列の理解をみた。
(2)授業:事前課題を用い,方略の比較検討,および,数列と関数の関係の検討を,実験群ではクラス単位の協同過程で,統制群では教師による解説で行った。授業中は,気付いたことや考えたことをワークシートに書き込むよう指示した。
(3)事後課題:事前課題の類題を設定した。
【結果と考察】 まず協同過程を通じて数列についての理解が促進されたかを検討するため,2群の2課題における数列の利用の有無の比率を比較した(Table 1)。比率の差は事前では有意ではなかったことから,2群は等質であったと言える。一方,事後では有意であり(Fisherの直接確率計算法(両側検定),p<.05),実験群で数列の利用が多かった。次に,協同過程における個人の数学的な説明構築について検討した。ワークシートに「関数は線で,数列はその線上の点」のように,数列が関数の一部であることを記述してある場合,個人が数学的な説明を構築したと判断した。そして2群の数学的な説明構築の有無の比率を比較した(Table 2)。比率の差は有意であり(Fisherの直接確率計算法(両側検定),p<.001),実験群で説明が多く構築された。さらに,実験群において,数学的な説明構築と,事後課題での数列の利用の有無との関連を検討した(Table 3)。その結果,有意な関連がみられた(Cramerの連関係数V=.543, Fisherの直接確率計算法(両側検定),p<.01)。
以上より,協同過程において,数列を関数の一部として捉えた,数学的な知識を根拠とした個人の説明構築が促進され,それにより,数列についての個人の理解が促進されることが示された。