[PE050] 初任保育者が行う保護者支援の実態に関する検討
Keywords:初任保育者, 保護者支援
【問題および目的】
保育の現場において,子どもの健やかな発達を保障するために保育者と保護者の連携は不可欠である。現行の保育所保育指針では,保護者支援に関する独立章が設けられるなど,その重要性が高まっている。しかしながら,初任保育者にとって,自分よりも目上で,しかも自身にない子育てを経験している保護者とかかわることには困難感を抱くことが予想される。養成段階の実習では保護者とのかかわりはほとんど経験しないため,現場に出て初めて直面する課題でもある。
そこで,本研究では,初任保育者が行っている保護者支援の実態と困難感を抱く要因を明らかにすると共に,養成段階での課題を明確化することを目的とする。
【方法】
国立大学法人の4年制大学で幼児教育を専攻した卒業生の内,卒後,保育所または幼稚園に保育者として勤務し,保育経験年数が5年未満の者を対象に,2012年8月に郵送による質問紙調査を行った(配布数67名)。調査内容は保護者支援として行っていること,保護者支援に対する認識,保護者支援の力量を高めるための方法等であった。
【結果および考察】
38名から回答が得られ(回収率56.7%),回答に不備の無かった37名分を分析対象とした。
所属園において,明確な目標を掲げて保護者支援を行っていると回答した者は10名(27.0%)にとどまった。具体的な目標としては,「子どもの成長の喜びを共有する」,「園行事や保育参観への参加を通じて,子どもの思いに気づいたり,保育者の援助の仕方を参考にしたりなどして,育児の質を高める」,「園と家庭,地域が連携を大切にして子どもを育てること」の3つにまとめられた。
それ以外の園でも具体的な目標を掲げてはいないものの,保護者支援が行われており,園だよりや保育参観を通して園から積極的に情報発信したり,送迎時の会話や個別の面談等を通じて,個々の保護者に応じた支援を行ったりしていることが示された。保育者個人としては,その日の園での子どもの姿,特に出来るようになったことや頑張ったこと等,肯定的な情報を選択して保護者に伝えていることが明らかになった。
このように保護者支援を積極的に推進している一方,全員が保護者支援に難しさを感じていると回答した。困難感の要因として,半数以上が「自身の若さと経験不足により,保護者からの相談に的確な助言ができない」ことを挙げた。年上の保護者に遠慮すること,相談に即座に応じられないことに不甲斐なさを感じ,保護者からの信頼を得られにくいという認識につながっていることが示された。とくに,離乳食のすすめ方やトイレットトレーニング,病気時の対応等,保健学的な知識を問われることに苦慮することがわかった。また,発達上の課題を話題にしたり,養育上の課題に対して協力を求めたりなど,保護者にとって好ましくない内容を共有しなければならないことに関して困難感が高まることも明らかになった。
このような困難に対して,園長や主任等の職場の上司に助言を得て対応していることが示された。
書籍を参考にする等,自己学習を経て対応するとの回答は27%にとどまった。今後学びたいこととして,保育者とのかかわりに消極的な保護者や,発達に課題のある子どもの保護者への伝え方や継続的な連携のあり方が多数挙げられた。個別の配慮を要する保護者への対応の必要性とその力量不足を認識している初任保育者の実態が描出された。
初任期の保護者支援に関する力量を高めるには,養成段階から演習等を通じて,現場に即した具体的な学びの提供の重要性が改めて確認された。
保育の現場において,子どもの健やかな発達を保障するために保育者と保護者の連携は不可欠である。現行の保育所保育指針では,保護者支援に関する独立章が設けられるなど,その重要性が高まっている。しかしながら,初任保育者にとって,自分よりも目上で,しかも自身にない子育てを経験している保護者とかかわることには困難感を抱くことが予想される。養成段階の実習では保護者とのかかわりはほとんど経験しないため,現場に出て初めて直面する課題でもある。
そこで,本研究では,初任保育者が行っている保護者支援の実態と困難感を抱く要因を明らかにすると共に,養成段階での課題を明確化することを目的とする。
【方法】
国立大学法人の4年制大学で幼児教育を専攻した卒業生の内,卒後,保育所または幼稚園に保育者として勤務し,保育経験年数が5年未満の者を対象に,2012年8月に郵送による質問紙調査を行った(配布数67名)。調査内容は保護者支援として行っていること,保護者支援に対する認識,保護者支援の力量を高めるための方法等であった。
【結果および考察】
38名から回答が得られ(回収率56.7%),回答に不備の無かった37名分を分析対象とした。
所属園において,明確な目標を掲げて保護者支援を行っていると回答した者は10名(27.0%)にとどまった。具体的な目標としては,「子どもの成長の喜びを共有する」,「園行事や保育参観への参加を通じて,子どもの思いに気づいたり,保育者の援助の仕方を参考にしたりなどして,育児の質を高める」,「園と家庭,地域が連携を大切にして子どもを育てること」の3つにまとめられた。
それ以外の園でも具体的な目標を掲げてはいないものの,保護者支援が行われており,園だよりや保育参観を通して園から積極的に情報発信したり,送迎時の会話や個別の面談等を通じて,個々の保護者に応じた支援を行ったりしていることが示された。保育者個人としては,その日の園での子どもの姿,特に出来るようになったことや頑張ったこと等,肯定的な情報を選択して保護者に伝えていることが明らかになった。
このように保護者支援を積極的に推進している一方,全員が保護者支援に難しさを感じていると回答した。困難感の要因として,半数以上が「自身の若さと経験不足により,保護者からの相談に的確な助言ができない」ことを挙げた。年上の保護者に遠慮すること,相談に即座に応じられないことに不甲斐なさを感じ,保護者からの信頼を得られにくいという認識につながっていることが示された。とくに,離乳食のすすめ方やトイレットトレーニング,病気時の対応等,保健学的な知識を問われることに苦慮することがわかった。また,発達上の課題を話題にしたり,養育上の課題に対して協力を求めたりなど,保護者にとって好ましくない内容を共有しなければならないことに関して困難感が高まることも明らかになった。
このような困難に対して,園長や主任等の職場の上司に助言を得て対応していることが示された。
書籍を参考にする等,自己学習を経て対応するとの回答は27%にとどまった。今後学びたいこととして,保育者とのかかわりに消極的な保護者や,発達に課題のある子どもの保護者への伝え方や継続的な連携のあり方が多数挙げられた。個別の配慮を要する保護者への対応の必要性とその力量不足を認識している初任保育者の実態が描出された。
初任期の保護者支援に関する力量を高めるには,養成段階から演習等を通じて,現場に即した具体的な学びの提供の重要性が改めて確認された。