[PE051] 幼児の粘土作品と創造性との関連について
Keywords:幼児, 創造性, 粘土作品
【目的】幼児の創造性は知能と関連があるされている(田辺,1983)。この研究では言語による検査方法を用いているため,幼児の創造性を測定するには妥当性が十分ではないと考えられる。創造性が表出しやすい造形素材として,幼児教育では粘土が扱われている(廣川・上野,2008)。しかし,幼児の粘土作品と発達についての先行研究(中川,1997)はあるが,幼児の粘土作品と創造性との関連をみた研究はほとんどない。
そこで,本研究では粘土作品と創造性検査で測定される幼児の創造性との関連をみることで,粘土作品が幼児の創造性を評価するために有用な指標となるのかを検討する。
【方法】調査対象者 :幼稚園で保護者から調査参加の同意を得た園児39名(男児16名,女児23名,年中児20名,年長児19名)であった。 創造性の測定 :小学生用S-A創造性検査P版(東京心理)を使用した。この検査は,無意味な未完成図形から意味のある絵にする2課題,未完成な特定のおもちゃの絵を作り上げる2課題,問題に対する様々な方法を考える2課題の計6課題からなっている。各課題は各5分,計30分である。
創造性の評価は,3つの活動領域(着眼力,発想力,構成力)と4つの思考の特性(速さ,広さ,独自性,深さ)から評価・得点化される(松浦,1998)。創造性検査の採点は東京心理へ郵送し,専門家により行われた。 粘土課題:粘土は「動物」と「魚」の2つを課題とした。園児に「図鑑に載るような新しい,面白い動物(魚)を考えて作ってみましょう」と教示し,各15分で作製してもらった。
粘土課題の創造性の評価は,発達心理学専攻の女子大学生10名が行った。一般的な創造性の評価を得るため,女子大学生に粘土作品の写真を配布し,評価基準は与えず,主観的に創造性を1~5点で評価をしてもらった。各作品の評価得点は,10名の平均値を使用した。なお,評価者である女子大学生は,対象者である幼稚園児との面識や接触はまったくなかった。 手続き :創造性検査や粘土課題の実施は,実験者2名(発達心理学専攻の男子学生と筆者)で行った。園児の集中力の持続時間を考え,1回分を30分とし,2回に分けて行った。1回目は創造性検査の課題1~3(15分)と粘土課題「動物」(15分),2回目は創造性検査の課題4~6(15分)と粘土課題「魚」(15分)とした。1回の調査には園児4名が1つのテーブルに座ったグループで,4~6グループが同時に行った。
【結果】女子大学生による園児の粘土作品の評価得点と創造性検査で測定される幼児の創造性得点との相関をTable1とTable2に示した。創造性の活動領域における着眼点と構成力(Table1参照),粘土作品と思考の特性(Table2参照)に有意な正の相関が認められた。
【考察】本研究では,幼児の粘土作品と創造性検査との関連が認められた。このように,女子大学生による主観的な創造性の評価と検査による客観的な創造性の評価が一致していたことから,粘土作品が幼児の創造性の測定に使用できる可能性が示唆された。しかし,本研究は,調査実施時にグループで行ったため,子どもがお互いに模倣をしやすい環境にあったことが課題として挙げられる。そのため今後さらに調査環境を調整し,データを増やし検討する必要がある。
そこで,本研究では粘土作品と創造性検査で測定される幼児の創造性との関連をみることで,粘土作品が幼児の創造性を評価するために有用な指標となるのかを検討する。
【方法】調査対象者 :幼稚園で保護者から調査参加の同意を得た園児39名(男児16名,女児23名,年中児20名,年長児19名)であった。 創造性の測定 :小学生用S-A創造性検査P版(東京心理)を使用した。この検査は,無意味な未完成図形から意味のある絵にする2課題,未完成な特定のおもちゃの絵を作り上げる2課題,問題に対する様々な方法を考える2課題の計6課題からなっている。各課題は各5分,計30分である。
創造性の評価は,3つの活動領域(着眼力,発想力,構成力)と4つの思考の特性(速さ,広さ,独自性,深さ)から評価・得点化される(松浦,1998)。創造性検査の採点は東京心理へ郵送し,専門家により行われた。 粘土課題:粘土は「動物」と「魚」の2つを課題とした。園児に「図鑑に載るような新しい,面白い動物(魚)を考えて作ってみましょう」と教示し,各15分で作製してもらった。
粘土課題の創造性の評価は,発達心理学専攻の女子大学生10名が行った。一般的な創造性の評価を得るため,女子大学生に粘土作品の写真を配布し,評価基準は与えず,主観的に創造性を1~5点で評価をしてもらった。各作品の評価得点は,10名の平均値を使用した。なお,評価者である女子大学生は,対象者である幼稚園児との面識や接触はまったくなかった。 手続き :創造性検査や粘土課題の実施は,実験者2名(発達心理学専攻の男子学生と筆者)で行った。園児の集中力の持続時間を考え,1回分を30分とし,2回に分けて行った。1回目は創造性検査の課題1~3(15分)と粘土課題「動物」(15分),2回目は創造性検査の課題4~6(15分)と粘土課題「魚」(15分)とした。1回の調査には園児4名が1つのテーブルに座ったグループで,4~6グループが同時に行った。
【結果】女子大学生による園児の粘土作品の評価得点と創造性検査で測定される幼児の創造性得点との相関をTable1とTable2に示した。創造性の活動領域における着眼点と構成力(Table1参照),粘土作品と思考の特性(Table2参照)に有意な正の相関が認められた。
【考察】本研究では,幼児の粘土作品と創造性検査との関連が認められた。このように,女子大学生による主観的な創造性の評価と検査による客観的な創造性の評価が一致していたことから,粘土作品が幼児の創造性の測定に使用できる可能性が示唆された。しかし,本研究は,調査実施時にグループで行ったため,子どもがお互いに模倣をしやすい環境にあったことが課題として挙げられる。そのため今後さらに調査環境を調整し,データを増やし検討する必要がある。