The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PE055] 4~6歳児のスクリプト知識の発達過程

ナラティブ発達評価指標作成に向けての基礎研究

瀬戸淳子1, 秦野悦子2 (1.帝京平成大学, 2.白百合女子大学)

Keywords:スクリプト知識, 幼児期, ナラティブ発達評価指標

[目的]本研究は、ナラティブ発達評価指標作成に向けての一連の基礎研究の一部である。幼児期後半から学齢期にかけて、まとまりをもったひと続きの会話や経験・物語を順序立てて伝えるナラティブの能力が発達するが、このような談話期の発達のプロセスや評価の方法論については、まだ十分に研究が進んでいない。そこで筆者らは、ナラティブの発達に関係すると思われる7つの課題を作成し2013年に調査を実施した。これまでにストーリーナラティブの分析(瀬戸・秦野、2013a,b)、事象知識の語りの分析(秦野・瀬戸、2013)を行い、ナラティブ能力が5歳から6歳前半にかけて急速に高まる様相が明らかにされた。本報告では、スクリプト知識に焦点を当て、幼児期後期の発達的特徴を明らかにすることを目的とする。
[方法]調査協力児:保護者の調査協力の承諾が得られた幼稚園年中児年長児83名(4歳前半4名、4歳後半17名、5歳前半23名、5歳後半14名、6歳前半15名、6歳後半10名)。調査期間:2013年2月、3月、7月。材料:朝の支度(練習用)、レストラン、買物についての時系列図版3組(図版には話の最初と最後の内容を示す2枚の絵カードが貼り付けてあり,その間には矢印が書いてある)と中間部のお話用絵カード各4枚。手続き:①自発話場面:図版を広げ「これは〇〇のお話です」。子どもの左端の絵カードを指さし「~してから,この間でいろんなことをして(と間の空白部分を指でなぞりながら右端の絵カードを指さし)~するでしょう。~してから~するまでどんなことをするか順番にお話ししてください」と教示。一定の基準に達していれば次の課題に移る。達していない場合は②に進む。②絵カード使用場面:中間に入る4つの行動の絵カードをランダムに並べ「~してから~するまでどんなことをするか、この4枚の絵を(図版の空白部分を指さし)ここに順番に並べてください」と促す。並べ終えたら「順番にお話をしてください」と話を促す。すべての発話はICレコーダーに録音した。分析資料:本報告では評価用のレストラン、買物の2課題を分析対象とした。すべての発話のトランスクリプトを作成し分析の対象とした。
[結果と考察]
(1)語られた内容:どの事象が自発話で語られやすいかを全対象児でみてみると、レストランに入って出てくるまでの行動では、席を決める14.5%、食物を選ぶ47.1%、食事をする77.1%、支払う19.3%の出現率であった。スーパーマーケットに入って出てくるまでの買物場面では、かごを用意する30.1%、品物を選ぶ(入れる)84.3%、支払う44.6%、袋に詰める10.8%であった。年齢による変化をみるために、子どもの月齢と語られた事象数(2場面各4事象、計8事象の内)の対応関係を図1に示した。また、年齢群ごとの語られた平均事象数を図2(自発話)に示した。図に示されるように語られる事象数は個人差が大きいが、年齢群ごとにみると、特に5歳前半から6歳前半にかけて語りの平均事象数が急増することが示された。
(2)絵カードによる事象の順序性の把握と語り:ことばでは表現できなくても事象の順序性についてどの程度把握しているか、絵カード並べで分析した。その結果、4歳代で2課題とも誤反応であったのは21名中3名(14.2%)で、多くの子どもがいずれかの課題で正反応をしていた(図2参照)。絵カードがあることによって語りがどのように変化するかをみると、4:11女児(no.65)では自発話は「こん中入ってお買い物して出てくる」と1事象しか語っていなかったが、カードを並べた後は「中に入ってかごを持って野菜売り場に行って野菜買ってレジやってもらってから自分の袋に入れて帰る」と絵カードにより語りが促進される効果があった。