[PE056] 大学における発達支援の必要性とその方法の検討(7)
大学生は自身の置かれている現状をどのように捉えているか
Keywords:大学生, 実態調査
目 的
村上・山崎(cf.2006,2008)および山崎・村上(cf.2008a)は、特定の学生に限定されない通常の講義において、村上(2003,2011)のソリューション・フォーカスト・アプローチ(以下、SFAとする)を基にした介入を講義用に再構成し、学生が自身やその将来について考える機会を与えるという発達的観点からの支援を行い、その時点での大学生の様相と本支援方法の有効性を検討した。その結果、自身やその将来について考える機会を与えないと自身やその将来について考えない学生がいることを明らかにし、このような考える機会を与えること、また、考える機会を与えると共に考える方法を提供すること、さらに、その方法としてSFAが効果的であることを明らかにした。
また、山崎・村上(2009)は、大学生が「悩み」をどのように捉えているか、また、その悩みに対してどのように対処しているかを調査し、「悩み」を肯定的に捉えている学生の中にも、実際に悩んだ時、解決に向かう方法を選択していない可能性があることが明らかにし、考える機会やその方法の提供といった支援の必要性を示唆した。
このように、大学生が自身やその将来について考える、そして、悩むということを研究テーマとして調査を行ってきた。しかし、これらには研究者の‘大学生には発達的な観点からの支援が必要ではないか’という視点があり、大学生の実態にそぐわない可能性を払拭できない。
そこで、本研究では研究の地点や今後の方向性を把握するための基礎調査として、大学生が自分の置かれている現状をどのように捉えているのかを調査することを目的とする。なお、今回の研究協力者は、教職課程を履修している学生であり、大学の4年間で卒業後の進路を模索するのではなく、ある程度の方向性を持って大学に入学した者とする。
方 法
調査協力者 協力者は都内私立A大学の教職課程科目「教育相談」を履修している1年生の学生で166名であった。
手続き 「教育相談」の講義内で回答用紙を配布し、次の指示に従い、自由記述をさせた。
「自分の置かれている現状を一言で表すと、どのような言葉になりますか。3つ以内で挙げてください。また、なぜその言葉を選んだのか、その理由を書いてください」
調査時期 2014年1月であった。
結 果 と 考 察
調査協力者の自由記述を単純集計した。その際、「疲労」と「疲れている」のように、同様の状態を指す言葉は、同一の言葉としてカウントをした。結果を以下の表に示した(Tabel 1)。
Tabel1より、焦りや不安が強く、また、疲労とそこからくる眠気という心身の状態に置かれていることが示唆された。この結果は、調査対象者が教職課程を履修している学生であり、また、調査時期が後期終了間近で進路(教職)に関わる試験に対する影響と考えられるが、それ以上に、卒業後、教員になりたいという方向性を持っていたとしても、迷いが生じ、危機感を持ち、不安定な状態にある者もいるということを示していると考えられる。大学において学生は、一つ一つの課題をこなしながら、迷いや危機を乗り越えるという過程を通して、社会の中で生きていく力を身につけていくのであろう。大学はこのように生涯発達の過程にある学生を受け入れている教育機関であることを再認識し、社会に出る最終段階にある学生の4年間がより良いものとなるような支援を行うことが必要であると考えられる。
村上・山崎(cf.2006,2008)および山崎・村上(cf.2008a)は、特定の学生に限定されない通常の講義において、村上(2003,2011)のソリューション・フォーカスト・アプローチ(以下、SFAとする)を基にした介入を講義用に再構成し、学生が自身やその将来について考える機会を与えるという発達的観点からの支援を行い、その時点での大学生の様相と本支援方法の有効性を検討した。その結果、自身やその将来について考える機会を与えないと自身やその将来について考えない学生がいることを明らかにし、このような考える機会を与えること、また、考える機会を与えると共に考える方法を提供すること、さらに、その方法としてSFAが効果的であることを明らかにした。
また、山崎・村上(2009)は、大学生が「悩み」をどのように捉えているか、また、その悩みに対してどのように対処しているかを調査し、「悩み」を肯定的に捉えている学生の中にも、実際に悩んだ時、解決に向かう方法を選択していない可能性があることが明らかにし、考える機会やその方法の提供といった支援の必要性を示唆した。
このように、大学生が自身やその将来について考える、そして、悩むということを研究テーマとして調査を行ってきた。しかし、これらには研究者の‘大学生には発達的な観点からの支援が必要ではないか’という視点があり、大学生の実態にそぐわない可能性を払拭できない。
そこで、本研究では研究の地点や今後の方向性を把握するための基礎調査として、大学生が自分の置かれている現状をどのように捉えているのかを調査することを目的とする。なお、今回の研究協力者は、教職課程を履修している学生であり、大学の4年間で卒業後の進路を模索するのではなく、ある程度の方向性を持って大学に入学した者とする。
方 法
調査協力者 協力者は都内私立A大学の教職課程科目「教育相談」を履修している1年生の学生で166名であった。
手続き 「教育相談」の講義内で回答用紙を配布し、次の指示に従い、自由記述をさせた。
「自分の置かれている現状を一言で表すと、どのような言葉になりますか。3つ以内で挙げてください。また、なぜその言葉を選んだのか、その理由を書いてください」
調査時期 2014年1月であった。
結 果 と 考 察
調査協力者の自由記述を単純集計した。その際、「疲労」と「疲れている」のように、同様の状態を指す言葉は、同一の言葉としてカウントをした。結果を以下の表に示した(Tabel 1)。
Tabel1より、焦りや不安が強く、また、疲労とそこからくる眠気という心身の状態に置かれていることが示唆された。この結果は、調査対象者が教職課程を履修している学生であり、また、調査時期が後期終了間近で進路(教職)に関わる試験に対する影響と考えられるが、それ以上に、卒業後、教員になりたいという方向性を持っていたとしても、迷いが生じ、危機感を持ち、不安定な状態にある者もいるということを示していると考えられる。大学において学生は、一つ一つの課題をこなしながら、迷いや危機を乗り越えるという過程を通して、社会の中で生きていく力を身につけていくのであろう。大学はこのように生涯発達の過程にある学生を受け入れている教育機関であることを再認識し、社会に出る最終段階にある学生の4年間がより良いものとなるような支援を行うことが必要であると考えられる。