The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PE059] 大学生と社会人の職場適応基礎力自己評価

新見直子 (広島文教女子大学)

Keywords:職場適応基礎力, 大学生, 社会人

本研究では,就職活動開始前の大学生と実際に職場で働いている社会人を対象に,職場に適応するための基礎的な能力等(職場適応基礎力)の自己評価について比較検討することを目的とした。また,職場適応基礎力とキャリア教育で重視している能力・態度等との関連性についても併せて検討することとした。
方 法
対象者 大学3年生70名および大学卒業後に就職し勤続年数が5年未満の社会人78名を対象者とした。対象者は全員女性であった。
手続き 大学生対象の調査は大学の授業時間の一部を使用して実施した。社会人対象の調査は郵送法により実施した。いずれの調査においても,調査目的,回答にあたって回答しづらい項目がある場合には,無理に回答しなくてもよいこと等を調査用紙の表紙に印刷して説明した。また,大学生対象の調査では,口頭でも同様の説明を行った。
調査内容 大学生対象の調査では以下の1と2を,社会人対象の調査では以下の1を実施した。
1. 職場適応基礎力:日本経済団体連合会(2004)が,どのような職業に就く場合でも最低限身につけておくべき力として指摘している事柄を参考に,18項目を作成した。作成した項目には「状況改善のための対応策を立てる」などの項目が含まれていた。回答にあたっては,現在と大学卒業時点において,各項目内容があてはまる程度について5段階評定(1: まったくあてはまらない~5: よくあてはまる)を求めた。現在の職場適応基礎力18項目について因子分析を行ったところ,1因子構造が認められた。そこで,現在と大学卒業時点それぞれについて18項目の項目平均値を算出し,各時点における職場適応基礎力得点とした(得点範囲:1-5点)。また,18項目のうち職場適応するために重要だと思う項目を選択するよう求めた。
2. キャリア意識:キャリア教育で重視されている能力・態度等に対する自己評価を測定するキャリア意識尺度(新見, 2012)から負荷量の高い順に上位7項目を選出し,自己理解に関する1項目を追加した8項目を使用した。使用した項目には「失敗してもあきらめずにできるまで頑張ろうと思う」などの項目が含まれていた。回答にあたっては,先行研究と同様に各項目内容に対してそう思う程度について6段階評定(1. まったくそう思わない~6. とてもそう思う)を求めた。8項目について因子分析を行ったところ,1因子構造が認められた。負荷量の低かった2項目を除外し,6項目の項目平均値を算出してキャリア意識尺度得点とした(得点範囲:1-6点)。
結果と考察
職場適応基礎力の比較 大学生と社会人の現在の職場適応基礎力得点について比較した(図1)。その結果,社会人が大学生よりも有意に高い得点を示した。また,大学生と社会人別に,現在と大学卒業時点の得点を比較した(図1)。その結果,大学生では大学卒業時点の得点が現在よりも有意に高く,逆に社会人では現在の得点が大学卒業時点よりも有意に高かった。
職場適応における重要度選択 職場適応基礎力尺度の各項目が職場適応において重要であると選択される傾向について検討した。その結果,大学生は18項目中15項目において重要であると選択する者が有意に多かった。また,選択される割合をみると,大学生では「自分の意見を分かりやすく伝える(40.0%)」や「組織や社会に一員として行動するうえでのルールが明確(38.6%)」を選択する者が多かった。それに対して,社会人では「課題遂行のために周囲と協力する(16.7%)」や「他者の意見をきちんと聴く(14.1%)」を選択する者が比較的多かった。
職場適応基礎力とキャリア意識の関連 大学生のデータに基づいて,現在(r = .42)と大学卒業時点(r = .43)の職場適応基礎力得点とキャリア意識得点の関連を検討した。その結果,いずれも有意な正の相関係数が示され,一定の対応関係が認められた。
大学生は職場適応には多くの能力等が重要と捉え,大学卒業までにそれらの能力等が高まると予想する傾向にあった。それに対して,社会人は職場適応に重要な能力をあまり選択しなかったが,各基礎能力が職場での経験を通じて徐々に上昇する可能性が示唆された。