The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PE060] 大学生における就職活動維持過程尺度作成の試み(2)

就職活動経験者の2時点からの回顧による妥当性の検討

輕部雄輝1, 佐藤純2, 杉江征3 (1.筑波大学大学院, 2.茨城県立医療大学, 3.筑波大学)

Keywords:大学生の就職活動, 過程, 尺度構成

【研究の目的】近年の大学生の就職活動において,その過程での企業からの不採用経験は不可避である。不採用経験によって個人は,ストレス,挫折感,不安,抑うつなど様々な影響を受けることが明らかにされており(北見ら, 2009; 嶋, 2000; 船津, 2004),そうした就職活動に伴う不安や抑うつは活動の進行に悪影響を及ぼす(小杉, 2005)。NPOの調査(2013)では,対象となった学生の2割が就職活動の開始後に「本気で死にたいと考えたことがある」と回答するなど,大学生の就職活動は過酷さを極めている。円滑な活動を促す効果的な支援を考える上では,従来の「いかにして不適応反応を低減するか」の検討に加え,「いかにして活動を維持していくのか」という,個人の活動維持を支える肯定的資源を明らかにする必要がある。輕部ら(2013a)は,就職活動を成功裏に終えた者の語りをもとに,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)分析によって,「企業からの不採用を経験しながらも就職活動者がいかにして活動を維持していったのか」という,「就職活動維持過程モデル」を生成した。本モデルでは,一次・二次的過程という,質的かつ出現するタイミングの異なる2つの過程が示され,一次的過程では個々の不採用経験を受けての具体的対処としての現在志向的行動が,二次的過程では今後の現実的将来を見据えたより深い自己洞察を伴う未来志向的行動が行われていた。また輕部ら(2013b)は,輕部ら(2013a)の知見および面接データに基づき,就職活動を終了した大学生196名を対象とした質問紙調査によって,「就職活動維持過程尺度」を開発した。因子分析の結果,輕部ら(2013a)の考案モデルにおける一次・二次的過程はおよそ因子ごとに分かれ,各過程を弁別しうる尺度が作成された。また各種指標との関連の検討も併せて,当該尺度が一定の信頼性・妥当性を備えていることが確認された。本研究では,就職活動維持過程尺度について,就職活動を終了した大学生に活動の初期と終期という2時点からの回顧を求め,当該過程を時点間の関係から明らかにし,「過程」尺度としての妥当性を検証することを目的とする。
【方法】対象:2013年新卒採用スケジュールの就職活動を経験した大学4年生・大学院生72名。時期:2012年11月~12月。内容:就職活動維持過程尺度(輕部ら, 2013b)。6因子33項目(①自分らしい就職活動態度の確立,②目標の明確化;二次的過程,③模索的行動,④不採用経験の振り返り,⑤認知的切り替え,⑥他者への自己開示;一次的過程)から構成された。就職活動の初期(エントリーシート提出開始後1~2ヵ月間;企業からの不採用を経験し始めた時期)と終期(活動終了直前1~2ヵ月間;就職活動経験をある程度蓄積した時期)の2時点からそれぞれ回顧を求めた。手続き:無記名の個別記入形式による質問紙調査。
【結果】各時期の各下位尺度得点についてt検定を行った結果(Figure1),時期によって行われやすい行動,時期に関係なく常に行われている行動があることが示された。
【考察】一次的過程は,「模索的行動」のみ終期に有意に行われなくなるが,それ以外はすべて当初より活動全体を通じて一定に行われていた。また二次的過程は,いずれも終期に有意に行われていた。したがって,二次的過程は活動の経過,つまり当初より行われていた一次的過程の一定経験が素地となってそのもとに追加的に現れ,以降一次的過程と並行して行われるようになると考えられる。以上より,各下位尺度の時期との関係から就職活動維持過程がより鮮明となり,「過程」尺度の妥当性は一定に担保されたと考えられる。今後は,目下活動中の学生に対する縦断的検討による,当該尺度のさらなる妥当性の検証が求められる。