The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PE061] 大学生の次世代育成に関する意識と時間的展望の関連

寺本妙子1, 柴原宜幸1 (日本橋学館大学)

Keywords:次世代育成, 時間的展望, 親との信頼関係

目的 青年期においては将来設計が現実的な課題となり,将来の働き方や家庭生活を意識した将来展望が模索されると考えられる。Seginer & Shoyer(2012)は,青年期の将来展望(future orientation)を個人が抱く主観的イメージ(未来に対して抱く希望や不安)として捉え,職業選択や働き方に関する領域(work and career domain)と結婚や家族に関する領域(marriage and family domain)を設定している。本研究では後者に注目し,大学生の時間的展望と次世代育成に関する意識(養護性,次世代育成力),および,両親との信頼感の関連について検討した。
方法 対象:関東および近郊の国立大学1校と私立大学4校の1~4年生399名(男子210名,女子189名,平均年齢19.42(±1.18)歳)。用具:①時間的展望体験尺度(4因子:「現在の充実感」「目標指向性」「過去受容」「希望」)(白井, 1994),②養護性尺度(4因子:「共感性」「技能の認知」「親への準備性」「非受容性」)(楜澤・福本・岩立, 2009),③次世代育成力尺度(4因子:「誕生肯定の自信」「自己成長の自信」「継承の自信」「地域力の自信」)(菱沼・落合・池田・高木,2009),④母親および父親への信頼感尺度(酒井, 2005)を使用した。いずれも高得点ほど,その程度が高いとされる。手続き:事前に研究内容を説明し,協力の承諾が得られた者に上記の尺度を配布し記入を依頼した。①の4下位尺度得点,④の2尺度得点,性別を説明変数,②の4下位尺度得点と③の4下位尺度得点を基準変数とする重回帰分析(強制投入法)をおこなった(IBM SPSS Statistics 22を使用)。
結果 基準変数のうち,ある程度の大きさの決定係数が見出されたのは,「親への準備性」(R2=.35,p <.001)と「継承の自信」(R2=.36,p<.001)であった。「親への準備性」に関して有意性が見出された説明変数は,「目標指向性」(β=.15,p <.01),「希望」(β=.21,p <.001),「母親への信頼感」(β=.24,p <.001),「父親への信頼感」(β=.22,p <.001)であった。「継承の自信」に関しては,これらに加えて,「現在の充実感」(β=.11,p <.05)が該当した(「目標指向性」(β=.18,p <.001),「希望」(β=.11,p <.10),「母親への信頼感」(β=.30,p<.001),「父親への信頼感」(β=.17,p<.01))。
考察 大学生の次世代育成意識のうち「親への準備性」は,時間的展望の未来成分(「目標指向性」と「希望」),および,両親との信頼感に有意な影響を受けていた。「継承の自信」は,これに加えて現在成分(「現在の充実感」)にも影響されていた。
時間的展望の未来成分の高さ(未来への明るい展望)が「準備性」と「継承」に影響しており,肯定的な現在の捉え方も「継承」に作用していた。このことから,現在や未来に対する肯定的な展望が次世代育成への高い意識を支えていることが示唆された。また,両親との信頼感の高さ・強さが「準備性」や「継承」の高さに関連したことは,前の世代との関係性が次世代への意識に影響を与えることを示唆しており,自身の両親との健全な関係性の構築の重要性を示唆するものであった。一方,性別には有意性が見出せず,男女を問わない次世代育成意識の様相が示唆された。
本研究では,青年期(大学生)の高い次世代育成意識,両親との良好な信頼関係(関係性),および,肯定的な時間的展望の関連が見出された。次世代育成意識は,Seginer & Shoyer(2012)の指摘するmarriage and family domainという将来展望の一領域と関連する。この領域の活性化は豊かな将来展望に貢献すると考えられ,大学生のキャリア形成とも絡めて更なる検討が望まれる。今後は,対象者の様々な属性との関連等の詳細な検討を予定している。
(本研究はJSPS科研費24590814 の助成を受けた)