The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE

(501)

Sat. Nov 8, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 501 (5階)

[PE074] 非行少年及び大学生の喜び・悲しみ・怒り感情の抑制の比較

表示規則に着目して

平井花1, 新堂研一2 (1.学習院大学大学院, 2.神戸家庭裁判所)

Keywords:表示規則, 感情規則, 抑制

目的
社会生活を営む中で,感情の表出を抑制しなければならない場面に人は日々遭遇しているが,抑制の程度は感情,状況,そして文化によって異なる。このような表出行動の習慣を指す表示規則については,文化の側面から研究がなされているが(中村,2000),同じ文化でも,怒りの表出等,非行少年の感情表出には特徴的な部分があると考えられる。そこで本研究では,非行少年と大学生の表示規則について,質問紙の施行から得られた結果をもとに,喜び・怒り・悲しみごとに抑制の在り方に違いが見られるかを検証する。
方法
研究対象者 大学生231名(男性89名,女性140名,不明2名:M = 19.47歳,SD = 2.96)及び対象群60名(男性47名,女性13名:M = 16.67歳,SD =1.57)1。
質問紙 表示規則として,信念「○○という感情は,表に出すべきではないと思う」,公的場面「公共の場で、○○という感情を表に出すことは,良くないことだと思う」,私的場面「プライベートな場面では,○○という感情は表に出すべきだ」を設定し,感情別に(喜び・悲しみ・怒り)尺度を構成した(9項目;3表示規則×3感情,7件法)。なお,各項目は得点が高いほど抑制傾向が強いことを指す。
手続き 大学生は集団で,対象群には第二発表者が保護的措置(教育的関与)を目的として個別に,質問紙を施行した。施行時間は約20分であった。
結果
表示規則について,2群(大学生・非行少年)×3感情(喜び・悲しみ・怒り)×3表示規則(信念・公的場面・私的場面)の3要因の分散分析を実施した。結果,感情の主効果が認められ(F(2, 542) = 104.04, p < .001),感情×表示規則×群の交互作用も認められた(F(16, 1079) = 9.29, p < .001)。その後の単純・単純主効果の検定では,喜びの信念・公的場面・私的場面において非行少年の方が大学生よりも値が大きく(ps < .01),怒りの信念・公的場面においては逆の傾向が見られた(ps < .001)。また大学生の各表示規則では,喜びの値が一番小さく,次いで悲しみ,怒りと続いたが(ps < .01),非行少年では,公的場面では悲しみが喜び・怒りよりも大きく(ps < .01),私的場面では喜びが悲しみ・怒りよりも値が小さかった(ps < .05)。
考察
結果から,大学生と非行少年とで感情ごとに抑制の在り方や表示規則が異なる可能性が示唆された。特に非行少年と大学生では抑制や表示規則の傾向が異なり,大学生は公的な場面で怒りを抑制すべきと考えているのに対し,非行少年は抑制しなくても良いと考えていることが示され,私的な場面ではその逆の傾向が認められた。怒りはコントロールの対象として取り上げられることが多いにも関わらず,非行少年においてこのような結果が得られた理由としては,非行少年にとって公的場面での怒りの表出が何らかの益をもたらし,表出が強化された可能性が挙げられる。
引用文献
平井花・新堂研一 (2014). 非行少年及び大学生の感情調整に関する比較研究―感情特性・自己制御・道徳的規範尺度との関係― 日本発達心理学会第25回大会論文集, 114.
中村真 (2000). 表情と感情のコミュニケーション―表示規則と感情表出のモデル― 心理学評論, 43, 307-317.
1本研究は,発達心理学会第25回大会で発表された研究(平井・新堂,2014)と同時に実施された。