日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PE

(501)

2014年11月8日(土) 13:30 〜 15:30 501 (5階)

[PE082] パフォーマンス活動が高校生の学校生活への適応に及ぼす影響

通信制K高校の実践から

金子恵美子1, 大橋節子2, 伊藤美奈子3 (1.埼玉純真短期大学, 2.甲南女子大学大学院, 3.奈良女子大学)

キーワード:パフォーマンス活動, 学校適応, 不登校

【問題と目的】平成23年度の学校基本調査(文部科学省)によると,小中学校での不登校児童生徒数は約12万人,高校での不登校生徒数も約5万6千人となっており,高校における生徒の学校生活への適応も重要な課題である。通信制K高校にはパフォーマンス活動(芝居や歌,ダンス,殺陣等の表現活動)を中心に行うパフォーマンスコースがあり,在籍する生徒の約4割は小中学校時代に不登校を経験しているが,パフォーマンス活動を通して自分自身の成長・変化を実感し,高校では出席を継続している生徒が多い。本研究では,パフォーマンス活動が生徒の学校生活への適応にどのような影響を及ぼしているかについて検討する。
【方法】調査方法:インタビュー調査(約60分)。
調査時期:平成24年2月。調査対象:通信制K高校のパフォーマンスコースに在籍する生徒のうち18名(1~3年生各6名;男女各9名;不登校経験がある生徒8名)。インタビュー内容:①成長・変化のきっかけ,②成長・変化の内容,③パフォーマンス活動による成長・変化が学校生活に及ぼした影響。
【結果と考察】面接の逐語記録をもとに,語られた内容をカテゴリーに分類し(Table1),関連を検討した。
学校生活への適応に影響を及ぼす「パフォーマンス活動」については<公演での役体験><リーダー体験><感情表現>が語られ,「自分自身の変化」については<周囲との協同意識><自信>,「学校生活への適応」については<学習への努力><人間関係の広がり・構築><学校行事への積極性><将来目標の発見>が語られていた。
「パフォーマンス活動」の<公演での役体験><リーダー体験>は,自分の役割に対する責任感,メンバーをまとめることやコースの代表として模範であることの意識を持つことによって「自分自身の変化」として<周囲との協同意識>を生じ,また,その役やリーダーとしての役割をやり遂げることで<自信>を生じているものと考えられる。<周囲との協同意識>は周囲に迷惑をかけないこと,自分のことだけでなく全体を意識すること,皆で一緒にやっていくという意識であり,それがコースにおける活動だけではなく,学校生活の学習やクラス(複数のコースの生徒が混在)での活動などにも広がり,「学校生活への適応」の<学習への努力><人間関係の広がり・構築><学校行事への積極性>につながっていくものと考えられる。また,「パフォーマンス活動」の<公演での役体験>を通して,「自分自身の変化」として<自信>を感じるようになり,「学校生活への適応」の<将来目標の発見>へとつながるケース,「パフォーマンス活動」の<感情表現>によって「自分自身の変化」として<自信>を感じるようになり,「学校生活への適応」の<人間関係の広がり・構築><学校行事への積極性>へとつながるケースも見られた。パフォーマンス活動が周囲への意識や自信の変化につながり,生徒が学校生活の多様な場面で積極性を持つようになることで,学校生活における適応へとつながっているものと考えられる。