[PE085] 気になる子どもの保護者支援を難しくする要因
巡回相談での保育者支援及び保護者支援を通して
Keywords:気になる子ども, 保護者支援, 巡回相談
【問題】 保育所や幼稚園では,保育者は気になる子どもへの日常の対応だけでなく,保護者対応にも苦慮している。保育現場への巡回相談では,子どもの特性に合ったかかわりや保育内容・方法などに関する相談に加え,保護者対応についての相談も多い。保育者が保護者との信頼関係を保ちつつ保護者に対応することを共に考えることが巡回相談者にも求められている。望ましい保護者支援をするためには,保育者が保護者支援を進める際に保護者支援を難しくしている要因を明らかにする必要があろう。
【目的】 筆者が保育所や幼稚園での巡回相談において,保育者へのコンサルテーションや保護者面談から得られた保育者や保護者の語りから,保護者対応を難しくしている保育者側の要因,保護者側の要因を明らかにし,保護者対応をするための配慮について検討したい。
【方法】 X年~X+7年の7年間のA市等での保育所や幼稚園での巡回相談において,気になる子どもに関わる保育者(担任,加配保育者,園長,主任)との協議,直接面談をした保護者の話などから,上記の要因について検討する。
【結果と考察】本研究での気になる子どもとは,発達遅滞や発達障害など,気になる言動の主因が子ども側にあると考えられる場合とする。このような子どもとのかかわりにおいて,保育者だけでなく,保護者もわが子の言動が気になっていたり,育てにくさを感じていたり,きょうだいや同年齢の他児との比較で違いを感じていたりする場合もあれば,ほとんど気にとめていない場合もある。前者のうち,専門機関に繋がり支援を受けている場合については取り上げず,未だ専門機関に繋がっていない場合を今回は取り上げる。
1.保護者対応を難しくする保育者側の要因
保育者は,「子どもの気になる言動を保護者に知
ってもらいたい」という思いで,送迎の際に直接伝えたり,連絡帳を通して伝えたり,別途時間を取って保護者面談で伝えるなどしている。その際,「保育者が子どものことを一番理解している」「園での子どもの気になる言動を保護者にも知ってもらい本気で受け止め理解してほしい」など強く思っていることが少なくない。保育者は,「わが子を心配して専門機関に繋がり,適切な指導をできるだけ早く受けてほしい」「家庭でも園でと同様の対応をしてほしい」と保護者に願っている。そのような思いが強くなると,保育者からの勧めを指示的で重圧的に感じ,気持ちを閉ざし易くなると考えられる。さらに,日々の保育で苦慮し,担任以外の保育者を日替わりで配置して支援している園では,気になる子どもに障害児枠で在籍してもらい,保育者の加配を受け,充実した支援をしたいと願っている。そのため,「保護者に早く子どもの状態を受け止め,理解し,専門機関に繋がってほしい」と願っている。3歳未満児クラスは複数担任制であるが,3歳児以上のクラスは一人担任が多く,担任以外の保育者の必要性が非常に高いためである。「子どものためにでき得る限りのことをしてあげたい」という保育者の願いは間違いではないが,「園側の事情や保育者の気持ちを優先」したり,「保育者が保護者以上に子どものことを理解し考えている」と思っている場合,保護者と保育者との信頼関係を保つことが難しくなる。
保護者の気持ちを傾聴して共感し,家庭での子どもの様子を伺い,障害があるかもしれないことを受け止めるのに時間がかかる保護者に寄り添いながら,保護者の理解と気持ちに合わせて少しずつ話をしていくことが保育者に求められ,巡回相談者もそのような保育者と協働する必要があろう。
2.保護者側の要因 わが子の障害やその傾向を理解し受け入れるのは誰でも容易ではないが,保護者に様々な事情(保護者の心身の疾患,発達障害や性格的な偏り,経済的困窮,失業,長時間労働,祖父母等との関係の不良,夫のDV,親の介護,他にも手のかかる子どもがいるなど)がある場合,保護者対応は一層難しくなる。
気になる子どもの支援のために,保育者は保護者との協力が必要となる。そのために,日々の保育における保育内容や方法の工夫,子どもの特性に応じたかかわりを前提とし,保育者が保護者と対等の立場に立ち,保護者に対して細やかな配慮や待つ姿勢,保護者の事情や気持ちを理解した対応などが求められよう。保育者のそのような対応を支援することが巡回相談者にも求められよう。
【目的】 筆者が保育所や幼稚園での巡回相談において,保育者へのコンサルテーションや保護者面談から得られた保育者や保護者の語りから,保護者対応を難しくしている保育者側の要因,保護者側の要因を明らかにし,保護者対応をするための配慮について検討したい。
【方法】 X年~X+7年の7年間のA市等での保育所や幼稚園での巡回相談において,気になる子どもに関わる保育者(担任,加配保育者,園長,主任)との協議,直接面談をした保護者の話などから,上記の要因について検討する。
【結果と考察】本研究での気になる子どもとは,発達遅滞や発達障害など,気になる言動の主因が子ども側にあると考えられる場合とする。このような子どもとのかかわりにおいて,保育者だけでなく,保護者もわが子の言動が気になっていたり,育てにくさを感じていたり,きょうだいや同年齢の他児との比較で違いを感じていたりする場合もあれば,ほとんど気にとめていない場合もある。前者のうち,専門機関に繋がり支援を受けている場合については取り上げず,未だ専門機関に繋がっていない場合を今回は取り上げる。
1.保護者対応を難しくする保育者側の要因
保育者は,「子どもの気になる言動を保護者に知
ってもらいたい」という思いで,送迎の際に直接伝えたり,連絡帳を通して伝えたり,別途時間を取って保護者面談で伝えるなどしている。その際,「保育者が子どものことを一番理解している」「園での子どもの気になる言動を保護者にも知ってもらい本気で受け止め理解してほしい」など強く思っていることが少なくない。保育者は,「わが子を心配して専門機関に繋がり,適切な指導をできるだけ早く受けてほしい」「家庭でも園でと同様の対応をしてほしい」と保護者に願っている。そのような思いが強くなると,保育者からの勧めを指示的で重圧的に感じ,気持ちを閉ざし易くなると考えられる。さらに,日々の保育で苦慮し,担任以外の保育者を日替わりで配置して支援している園では,気になる子どもに障害児枠で在籍してもらい,保育者の加配を受け,充実した支援をしたいと願っている。そのため,「保護者に早く子どもの状態を受け止め,理解し,専門機関に繋がってほしい」と願っている。3歳未満児クラスは複数担任制であるが,3歳児以上のクラスは一人担任が多く,担任以外の保育者の必要性が非常に高いためである。「子どものためにでき得る限りのことをしてあげたい」という保育者の願いは間違いではないが,「園側の事情や保育者の気持ちを優先」したり,「保育者が保護者以上に子どものことを理解し考えている」と思っている場合,保護者と保育者との信頼関係を保つことが難しくなる。
保護者の気持ちを傾聴して共感し,家庭での子どもの様子を伺い,障害があるかもしれないことを受け止めるのに時間がかかる保護者に寄り添いながら,保護者の理解と気持ちに合わせて少しずつ話をしていくことが保育者に求められ,巡回相談者もそのような保育者と協働する必要があろう。
2.保護者側の要因 わが子の障害やその傾向を理解し受け入れるのは誰でも容易ではないが,保護者に様々な事情(保護者の心身の疾患,発達障害や性格的な偏り,経済的困窮,失業,長時間労働,祖父母等との関係の不良,夫のDV,親の介護,他にも手のかかる子どもがいるなど)がある場合,保護者対応は一層難しくなる。
気になる子どもの支援のために,保育者は保護者との協力が必要となる。そのために,日々の保育における保育内容や方法の工夫,子どもの特性に応じたかかわりを前提とし,保育者が保護者と対等の立場に立ち,保護者に対して細やかな配慮や待つ姿勢,保護者の事情や気持ちを理解した対応などが求められよう。保育者のそのような対応を支援することが巡回相談者にも求められよう。