The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE

(501)

Sat. Nov 8, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 501 (5階)

[PE094] 自傷行為に関する認識とその対応に伴う感情

教員への質問紙調査から

坂口由佳 (東京大学大学院)

Keywords:自傷行為, 教師

【問題と目的】 自傷行為は中学生・高校生のメンタルヘルスの深刻な問題であり,自傷行為への対応について学校が担う役割は大きいものと思われる。しかし,実際に対応する教師や養護教諭らが抱える様々な困難は示される一方,これらと深く関わると考えられる自傷行為に関する認識とその対応に伴う感情についての理解は乏しい。そこで,本研究では,教師や養護教諭を対象に,自傷行為に関する認識とその対応に伴う感情を把握し,実際に行われている対応とその困難を明らかにする。
【方法】 質問紙調査を行い,中学校・高等学校の教諭258人と管理職19人(以降,教師群),養護教諭29人とスクールカウンセラー(SC)13人(以降,養護SC群)から回答を得た(回収率49.0%)。質問紙の項目では,まず,回答者自身の年齢,職種,自傷行為をする生徒の対応経験人数と,自傷行為に関する認識,対応に伴う感情について5件法で尋ねた(1.強く思う~5.全く思わない)。また,自傷行為をする生徒への対応と対応における困難について尋ねた(複数回答可)。さらに,自傷行為についての自由記述項目も設けた。
自傷行為に関する認識・感情に関しての項目では,数値の算術平均を求め,教師群と養護SC群の違いをt検定で調べた。教師群を対象に肯定的回答(「強く思う」と「思う」)の割合を算出し,対応経験人数別にχ2検定を行った。さらに,対応と困難の項目では,選択肢ごとに選択の有無を集計し,年齢や対応経験人数,また,教師群と養護SC群間(ただし共通項目のみ)で選択傾向に違いがあるか調べた(二項検定,χ2検定)。
【結果と考察】 教師群の83.2%に,養護SC群の97.4%に自傷行為をする生徒への対応経験があった。教師群の対応経験人数については,1人以上5人未満が57.8%,5人以上10人未満が14.6%,10人以上15人未満が7.1%,15人以上が3.7%であった。t検定とχ2検定の結果,教師群のほうが養護SC群よりも,対応にあたってネガティブな感情を抱えやすいこと,さらに,対応経験のない教師ほど,対応において不安・動揺といった感情を抱きやすいことが示唆された(表)。また,対応経験人数によって対応と抱く困難も異なることが明らかとなった。例えば,教師群は対応経験人数が少ないほど,「どう対応してよいか分からない」と回答する傾向が見られた。さらに,教師群の自由記述から,回答者の約4割が,困難の軽減のために必要と感じるサポートに「研修会や情報,過去の事例」や「専門家からの助言」を挙げた。自傷行為について学ぶ機会を設けることの必要性と,自傷行為をする生徒に対応する際,特に対応経験がない教師の場合には,周りからのサポートが重要だと考えられる。