日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PE

(501)

2014年11月8日(土) 13:30 〜 15:30 501 (5階)

[PE097] 中学校への進学時不適応の予防に必要な能力(1)

学校不適応に着目して

原田克己1, 大西彩子2, 中島義実3 (1.金沢大学, 2.甲南大学, 3.福岡教育大学)

キーワード:進学時不適応, 能力, 予防

【目的】
 不登校の生徒数は中学校に進学することで大幅に増加することが,文部科学省が毎年報告する「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」から明らかになっている。中学校への進学で生じる学校不適応を予防するためには,小学校の段階から進学に向けた準備を行うことが有効であると考えられる。そこで,本研究では小学6年生時における能力と中学進学後の学校不適応状態との関連について検討を行うものとする。
【方法】
調査協力者・調査時期:H県の小学校3校の小学6年生206 名を対象とし,小学校6年生時の2011年12月と中学校(3校)に進学した中学1年生時の2012年7月に再度質問紙調査を実施した(有効回答数123名)。
調査内容:(1)進学時不適応を予防する能力尺度(一連研究3を参照)。(2)澤村・田中・寺嶋・竹中・足利・千原・田中(1998)による不適応関連徴候尺度と戸ヶ崎・秋山・嶋田・坂野(1997)による小学生用学校不適応感尺度を参考に,20項目の中学1年生時の学校不適応を測定する尺度(以下:不適応と略記)を作成し,「まったくない」から「よくある」までの4件法で回答を求めた。
【結果と考察】
尺度の検討:不適応について因子分析(最尤法・プロマックス回転)を行ったところ,計16項目からなる6因子解を得た。第1因子は「学業面での不適応」(4項目:α=.82),第2因子は「身体面での不適応」(3項目:α=.72),第3因子は「対人面での不適応」(2項目:α=.67),第4因子は「情緒面での不適応」(2項目:α=.76),第5因子は「登校時間における不適応」(2項目:α=.64),第6因子は「家庭面での不適応」(3項目:α=.60)であった(能力については一連研究2を参照)。
影響過程の検討:小学校6年生時の進学時不適応を予防する能力が中学校1年生時の学校不適応に与える影響について, 男女別の因果モデルを構成し,共分散構造分析を行った。
 男子においては,すべての能力がなんらかの不適応に影響を与えていた(Figure 1)。全般的に小学生時の能力評定が高いほど,不適応状態を抑制するという結果であったが,「信頼関係をつくることができる力」が「登校時間における不適応」に促進的影響を示しており,「気持ちを交わしあうことができる力」が「身体面での不適応」に促進的影響を示していた。一方女子においては,「きまりを守ることができる力」が「情緒面での不適応」に,「気持ちを交わしあうことができる力」が「対人面での不適応」と「学業面での不適応」にそれぞれ抑制的影響を示すのみであった(Figure 2)。これらのことから,中学進学後における不適応を小学生時において予防するためには,男女では異なった能力に着目する必要があることが伺えた。また,男子においては,困ったときに相談できると思っている児童ほど,また,気持ちを交わしあうことができると思っている児童ほど,実際には身体症状の出現や登校時間の不調を訴えることになると言え,主観的感覚の意義を問うこととあわせ,実際の行動による評価が必要と考えられた。