[PF007] ピアプレッシャーによってル・バーへの確信度を意図的に高める操作が概念学習に及ぼす効果
Keywords:ピアプレッシャー, ル・バー, 概念学習
問題と目的
通常、授業では実験結果や課題の解答が示される ギョ、ウサギ、アヒル、シチメンチョウなどについ
前に予想が立てられ、その理由が述べられ、討論す て家畜かどうか判断してもらった。この際、○と×
る形式がとられるが、その際、誤った知識に基づい の反応に関してどの程度、確信があるかを5段階(
た予想が立てられることがある。また、討論の際、 0%:全く自信なし~100%:とても自信あり)で評
ル・バーをもつ学習者によるピアプレッシャーによ 定してもらった。事前においてイヌ、ネコ、キンギ
って、他の学習者においてル・バーへの確信度が高 ョの3事例全てに75%以上の確信度で×をつけた者
まることも十分にありうる。すなわち、ピアプレッ をル・バーへの確信度が高いと判断し、これに該当
シャーによる確信度への影響として「高→高」、「低 しない者を確信度が低いとした。
→高」、「低→低」、「高→低」の4通りが考えられる。内包課題(事後のみ) ペットの家畜であるフェレ
これまで、このような確信度と教授ストラテジーの ットと、その先祖であるケナガイタチの違いを判断
関係は明らかにされていない。 してもらった(体の色など3項目)。
方法 結果
概要 宮城県内の私立の大学生、短大生を対象に 外延課題 ウマにおいて事前から事後への正答者数
「食肉用に飼育されている動物だけが家畜で、ペッ の伸びは対決型の方が懐柔型よりも大きかった。ウ
トは家畜ではない」というル・バーの修正を図る。 サギの正答者数の伸びは対決型において「高→高」
教えたいルールは「人間が長い間、飼い養い、人間 46%、「低→高」60%の方が「低→低」22%よりも大
の都合の良いように品種改良され、自然界では生き きかった。6事例の正答数の伸びでも対決型では「高
ていけなくなった動物ならば家畜である」というも →高」1.7、「低→高」1.7の方が「低→低」0.9より
のである。冊子の構成は事前テスト、読み物、事後 も大きかった。懐柔型でも結果は同様であった(「高
テストである。学習者は対決型の読み物、あるいは →高」1.6、「低→高」1.4、「低→低」0.9)。
懐柔型の読み物のどちらかを読んだ。事前テストの 内包課題 体の色が違うと判断できた人数、3項目
後で全ての学習者に「イヌ、ネコ、キンギョに対し 完全正答者数は懐柔型の方が対決型よりも多かった。
ては8~9割の学生が『家畜ではない』と答えてい 懐柔型は「高→高」、「低→高」、「低→低」のどの群
る」と予備調査結果を示し、ル・バーを支持し同調 も等しく正答者数が多かった。一方、対決型では3
するようにピアプレッシャーを与えた。そして「さ 項目完全正答者数において「高→高」45%の方が「低
きほどよりも確信を強くもって『ペットは家畜では →低』17%よりも多かった。「体の色」でも同様の結
ない』と答えてみましょう」とル・バーへの確信度 果であった(「高→高」52%、「低→低」26%)。
を事前よりも高めるように教示した。その上で再度、考察
イヌ、ネコ、キンギョに対して家畜であるかどうか 対決型は「eg→ru」変換の学習、懐柔型は「ru→
の判断とそれぞれの確信度の記入を求めた。 eg」変換の学習であるため、外延課題は対決型の方
読み物 イヌ→ネコ→キンギョを対決型の事例とし が優れており、内包課題は懐柔型の方が優れていた。
た。懐柔型ではブタを最初の事例に、キンギョを最 また外延課題で対決型では矛盾や驚きの程度が低い
後の事例にした。この間に入る事例としてモルモッ 「低→低」が一番劣っていた。懐柔型では「低→低」
トを選んだ(ブタ→モルモット→キンギョ)。 がルールの適用範囲が一番小さかった。内包課題で
事前・事後テスト は対決型で疑問や矛盾の程度が低い「低→低」がル
外延課題 ウマ、カイコ、セイヨウミツバチ、キン ールについてあまり学べなかった。
通常、授業では実験結果や課題の解答が示される ギョ、ウサギ、アヒル、シチメンチョウなどについ
前に予想が立てられ、その理由が述べられ、討論す て家畜かどうか判断してもらった。この際、○と×
る形式がとられるが、その際、誤った知識に基づい の反応に関してどの程度、確信があるかを5段階(
た予想が立てられることがある。また、討論の際、 0%:全く自信なし~100%:とても自信あり)で評
ル・バーをもつ学習者によるピアプレッシャーによ 定してもらった。事前においてイヌ、ネコ、キンギ
って、他の学習者においてル・バーへの確信度が高 ョの3事例全てに75%以上の確信度で×をつけた者
まることも十分にありうる。すなわち、ピアプレッ をル・バーへの確信度が高いと判断し、これに該当
シャーによる確信度への影響として「高→高」、「低 しない者を確信度が低いとした。
→高」、「低→低」、「高→低」の4通りが考えられる。内包課題(事後のみ) ペットの家畜であるフェレ
これまで、このような確信度と教授ストラテジーの ットと、その先祖であるケナガイタチの違いを判断
関係は明らかにされていない。 してもらった(体の色など3項目)。
方法 結果
概要 宮城県内の私立の大学生、短大生を対象に 外延課題 ウマにおいて事前から事後への正答者数
「食肉用に飼育されている動物だけが家畜で、ペッ の伸びは対決型の方が懐柔型よりも大きかった。ウ
トは家畜ではない」というル・バーの修正を図る。 サギの正答者数の伸びは対決型において「高→高」
教えたいルールは「人間が長い間、飼い養い、人間 46%、「低→高」60%の方が「低→低」22%よりも大
の都合の良いように品種改良され、自然界では生き きかった。6事例の正答数の伸びでも対決型では「高
ていけなくなった動物ならば家畜である」というも →高」1.7、「低→高」1.7の方が「低→低」0.9より
のである。冊子の構成は事前テスト、読み物、事後 も大きかった。懐柔型でも結果は同様であった(「高
テストである。学習者は対決型の読み物、あるいは →高」1.6、「低→高」1.4、「低→低」0.9)。
懐柔型の読み物のどちらかを読んだ。事前テストの 内包課題 体の色が違うと判断できた人数、3項目
後で全ての学習者に「イヌ、ネコ、キンギョに対し 完全正答者数は懐柔型の方が対決型よりも多かった。
ては8~9割の学生が『家畜ではない』と答えてい 懐柔型は「高→高」、「低→高」、「低→低」のどの群
る」と予備調査結果を示し、ル・バーを支持し同調 も等しく正答者数が多かった。一方、対決型では3
するようにピアプレッシャーを与えた。そして「さ 項目完全正答者数において「高→高」45%の方が「低
きほどよりも確信を強くもって『ペットは家畜では →低』17%よりも多かった。「体の色」でも同様の結
ない』と答えてみましょう」とル・バーへの確信度 果であった(「高→高」52%、「低→低」26%)。
を事前よりも高めるように教示した。その上で再度、考察
イヌ、ネコ、キンギョに対して家畜であるかどうか 対決型は「eg→ru」変換の学習、懐柔型は「ru→
の判断とそれぞれの確信度の記入を求めた。 eg」変換の学習であるため、外延課題は対決型の方
読み物 イヌ→ネコ→キンギョを対決型の事例とし が優れており、内包課題は懐柔型の方が優れていた。
た。懐柔型ではブタを最初の事例に、キンギョを最 また外延課題で対決型では矛盾や驚きの程度が低い
後の事例にした。この間に入る事例としてモルモッ 「低→低」が一番劣っていた。懐柔型では「低→低」
トを選んだ(ブタ→モルモット→キンギョ)。 がルールの適用範囲が一番小さかった。内包課題で
事前・事後テスト は対決型で疑問や矛盾の程度が低い「低→低」がル
外延課題 ウマ、カイコ、セイヨウミツバチ、キン ールについてあまり学べなかった。