[PF032] 集団内での相互作用が集団への態度・課題達成に及ぼす影響
Keywords:所属感, 集団効力感, 目標志向性
産業場面に限らず,学校場面や学業場面においても,集団で課題を遂行する機会は多くある。集団での活動において,集団成員の技術的な側面だけはなく,成員間の取りまとめや調整という相互作用的な側面も,課題遂行の程度を決定する重要な要因であろう。Mischel & Northcraft(1997)は集団としての効力感に着目し,上記の前者に対する効力感を集団課題効力感,後者を集団相互作用効力感と呼んで区別している。
本研究では,集団の相互作用に着目し,相互作用の程度が集団への態度に及ぼす影響について検討する。実習の授業において班を構成し,班内の相互作用の高低が,班への貢献度や所属感,およびレポート成績に及ぼす効果を調べる。
方法
参加者 都内の大学に通う大学生112名(男性33名,女性79名)を対象とし,実験は心理学の実習の時間内に行われた。
質問紙 実習の授業における目標志向性について,習熟接近志向性,習熟回避志向性,遂行接近志向性,遂行回避志向性の4変数を用いて測定した(各3項目)。また,班に対する所属感を2項目,班への貢献度を3項目,班内の相互作用に対する集団効力感を5項目で測定した。質問紙の評定には「全く当てはまらない(1)」から「非常によく当てはまる(5)」までの5段階を用いた。
手続き 実習時間内に6~9名の班を作り,班ごとに課題を行った(班の総数は15である)。一人の教員が担当する実習は5回で,3回目に質問紙を実施した。5回を通して教員が各班の様子を観察し,相互作用の程度を高低で評定した。実習の目的は,各班でテーマを決め,それに沿った質問紙を作成することである。実習終了後,課題の成果を個々がレポートとしてまとめ,その評価をレポート成績として用いた(20点満点)。
結果および考察
目標志向性について因子分析をした結果,4因子よりも2因子の当てはまりがよかった。そのため,本研究では,接近と回避傾向の区別はせずに,習熟志向性と遂行志向性の2因子で構成することとした(習熟志向性:α=.83,遂行志向性:α=.90)。
各班の相互作用の高低は,教員による客観的な指標である。学生の主観的認知との適合性を確かめるために,班内の相互作用についての主観的指標である集団効力感との関係を調べた。客観的指標である相互作用の高低を独立変数(高群は6班44名,低群は9班62名)とし,集団効力感を従属変数として分散分析を行った。その結果,相互作用が高いと客観的に示された班が有意に高い集団効力感を示し(F(1,104)=7.43, p<.01),相互作用の高い班の成員は,個々の主観的な効力感が高いことが明らかになった(高群:M=4.10, SD=.62;低群:M=3.78, SD=.59)。
班での相互作用の高低が,班への所属感,班への貢献度およびレポート成績に及ぼす効果を調べるために,客観的指標である相互作用の高低を独立変数,所属感,貢献度とレポート成績を従属変数とする共分散分析を行った。その際に,学生の実習に対する目標を統制するため,2つの目標志向性を共変量とした。その結果(Table1),相互作用の高低の主効果が,貢献度(F(1,92)=4.55, p<.05)と,成績(F(1,92)=6.08, p<.05)において有意となった。相互作用の高い群は,低い群に比べて,班への貢献度とレポート成績ともに高いことが示された。
相互作用の高い班は低い班と比べて,班の成員間のコミュニケーションがスムーズで,かつ成員が積極的に話し合いに参加している。このような充実したやり取りを通して,班に貢献したいという思いを強めたと考えられる。また,相互作用の高さが,個人で仕上げるレポートの成績にも効果を及ぼしていることが示された。
班への所属感については,高群が低群よりも高い傾向を示したものの,有意ではなかった。実習のために一時的に構成された班であったことが影響していると考えられる。
本研究では,集団の相互作用に着目し,相互作用の程度が集団への態度に及ぼす影響について検討する。実習の授業において班を構成し,班内の相互作用の高低が,班への貢献度や所属感,およびレポート成績に及ぼす効果を調べる。
方法
参加者 都内の大学に通う大学生112名(男性33名,女性79名)を対象とし,実験は心理学の実習の時間内に行われた。
質問紙 実習の授業における目標志向性について,習熟接近志向性,習熟回避志向性,遂行接近志向性,遂行回避志向性の4変数を用いて測定した(各3項目)。また,班に対する所属感を2項目,班への貢献度を3項目,班内の相互作用に対する集団効力感を5項目で測定した。質問紙の評定には「全く当てはまらない(1)」から「非常によく当てはまる(5)」までの5段階を用いた。
手続き 実習時間内に6~9名の班を作り,班ごとに課題を行った(班の総数は15である)。一人の教員が担当する実習は5回で,3回目に質問紙を実施した。5回を通して教員が各班の様子を観察し,相互作用の程度を高低で評定した。実習の目的は,各班でテーマを決め,それに沿った質問紙を作成することである。実習終了後,課題の成果を個々がレポートとしてまとめ,その評価をレポート成績として用いた(20点満点)。
結果および考察
目標志向性について因子分析をした結果,4因子よりも2因子の当てはまりがよかった。そのため,本研究では,接近と回避傾向の区別はせずに,習熟志向性と遂行志向性の2因子で構成することとした(習熟志向性:α=.83,遂行志向性:α=.90)。
各班の相互作用の高低は,教員による客観的な指標である。学生の主観的認知との適合性を確かめるために,班内の相互作用についての主観的指標である集団効力感との関係を調べた。客観的指標である相互作用の高低を独立変数(高群は6班44名,低群は9班62名)とし,集団効力感を従属変数として分散分析を行った。その結果,相互作用が高いと客観的に示された班が有意に高い集団効力感を示し(F(1,104)=7.43, p<.01),相互作用の高い班の成員は,個々の主観的な効力感が高いことが明らかになった(高群:M=4.10, SD=.62;低群:M=3.78, SD=.59)。
班での相互作用の高低が,班への所属感,班への貢献度およびレポート成績に及ぼす効果を調べるために,客観的指標である相互作用の高低を独立変数,所属感,貢献度とレポート成績を従属変数とする共分散分析を行った。その際に,学生の実習に対する目標を統制するため,2つの目標志向性を共変量とした。その結果(Table1),相互作用の高低の主効果が,貢献度(F(1,92)=4.55, p<.05)と,成績(F(1,92)=6.08, p<.05)において有意となった。相互作用の高い群は,低い群に比べて,班への貢献度とレポート成績ともに高いことが示された。
相互作用の高い班は低い班と比べて,班の成員間のコミュニケーションがスムーズで,かつ成員が積極的に話し合いに参加している。このような充実したやり取りを通して,班に貢献したいという思いを強めたと考えられる。また,相互作用の高さが,個人で仕上げるレポートの成績にも効果を及ぼしていることが示された。
班への所属感については,高群が低群よりも高い傾向を示したものの,有意ではなかった。実習のために一時的に構成された班であったことが影響していると考えられる。