[PF057] 他者との協同と思考の言語化が洞察問題解決に及ぼす影響
Keywords:問題解決, 言語化, 協同
問題と目的
本研究では「他者との協同」と「思考の言語化」が洞察問題解決を促進するか検討する。また言語化の内容と問題解決との関連も検討する。
方法
【参加者】大学1年生90名が参加した。
【課題】Tパズルと呼ばれる図形パズルを用いた。これは4つの木片を組み合わせて,アルファベットのTを構成するというパズルである。
【計画】参加者90名は,個人群(15名),自己説明群(15名),他者説明群(15ペア,30名),相談群(15ペア,30名)に振り分けられた。他者説明群と相談群のペアは,友人同士であった。
【手続き】個人群の参加者(遂行者)は一人で黙ってパズルに取り組んだ。自己説明群の遂行者は一人でパズルに取り組みながら,遂行中は課題について考えていることをできるだけ言語化した。他者説明群の遂行者は一人でパズルに取り組みながら,遂行中は課題について考えていることを,前に座っているパートナーに話した。パートナーは相槌を打ったりしたが,発言は禁じられていた。相談群の遂行者はパートナーと相談しながら課題に取り組んだ。ただし木片を操作できるのは遂行者だけであった。
自己説明群と他者説明群には思考の言語化について,木片の操作方法,課題遂行の振り返り,その他に気づいたことを述べるよう,実験者が具体例を示しながら教示を与えた。
どの群の遂行者も,Tパズルとは別のパズルで4分間の練習に取り組んだ後,本試行に20分間取り組んだ。20分時点で未完成の場合は,ヒントが与えられた。
結果と考察
表1に各群で10分以内に解決した人数,10~20分で解決した人数,20分で未解決だった人数を示す。正確確率検定の結果,群間の差は有意ではなかった(p =.398)。
20分以内に解決した遂行者に限定して,解決までの時間を検討した。個人群(n=6)は平均428.7秒,自己説明群(n=9)は平均674.9秒,他者説明群(n=9)は平均567.1秒,相談群(n=7)は平均605.7秒であった。分散分析の結果,群間の差は有意ではなかった(F (3,27)=.55)。
以上より,他者との相談ならびに思考の言語化のいずれも,Tパズルの解決を促進するとは言えない。
言語化の内容と解決の間に関連があるか検討するために,自己説明群・他者説明群・相談群の遂行者の発話から,(1)解決にプラスになるアドバイス(例「そのくぼみをうまく使えないか」),(2)解き方の見直し(例「まだやっていない組み合わせは何だろう」),(3)解き方の方針(例「角を先に作ってみよう」)を抽出した。また(1)~(3)の総計を(4)「メタ発話」とした。これらについて5分あたりの発話数を求めた(表2)。群×解決の分散分析の結果,解決の主効果がアドバイス(F (1,39)=3.81)と見直し(F (1,39)=2.85)で有意傾向,方針(F (1,39)=7.89)とメタ発話(F (1,39)= 7.77)で有意となった。3群をまとめて,10分以内に解決した遂行者(n=12)と,10~20分で解決した遂行者(n=13)に限定して,5分あたりの(1)~(4)の発話数を比較した(表3)。その結果,メタ発話で差が有意傾向を示した(t (23)=1.96)。以上より,問題解決に対するメタ的な言語化が解決の促進と関連していることが示唆された。
(注)本研究は第二著者による平成25年度群馬大学教育学部卒業研究『思考の言語化が洞察問題解決に及ぼす効果-Tパズルを用いた検討』に基づく。
本研究では「他者との協同」と「思考の言語化」が洞察問題解決を促進するか検討する。また言語化の内容と問題解決との関連も検討する。
方法
【参加者】大学1年生90名が参加した。
【課題】Tパズルと呼ばれる図形パズルを用いた。これは4つの木片を組み合わせて,アルファベットのTを構成するというパズルである。
【計画】参加者90名は,個人群(15名),自己説明群(15名),他者説明群(15ペア,30名),相談群(15ペア,30名)に振り分けられた。他者説明群と相談群のペアは,友人同士であった。
【手続き】個人群の参加者(遂行者)は一人で黙ってパズルに取り組んだ。自己説明群の遂行者は一人でパズルに取り組みながら,遂行中は課題について考えていることをできるだけ言語化した。他者説明群の遂行者は一人でパズルに取り組みながら,遂行中は課題について考えていることを,前に座っているパートナーに話した。パートナーは相槌を打ったりしたが,発言は禁じられていた。相談群の遂行者はパートナーと相談しながら課題に取り組んだ。ただし木片を操作できるのは遂行者だけであった。
自己説明群と他者説明群には思考の言語化について,木片の操作方法,課題遂行の振り返り,その他に気づいたことを述べるよう,実験者が具体例を示しながら教示を与えた。
どの群の遂行者も,Tパズルとは別のパズルで4分間の練習に取り組んだ後,本試行に20分間取り組んだ。20分時点で未完成の場合は,ヒントが与えられた。
結果と考察
表1に各群で10分以内に解決した人数,10~20分で解決した人数,20分で未解決だった人数を示す。正確確率検定の結果,群間の差は有意ではなかった(p =.398)。
20分以内に解決した遂行者に限定して,解決までの時間を検討した。個人群(n=6)は平均428.7秒,自己説明群(n=9)は平均674.9秒,他者説明群(n=9)は平均567.1秒,相談群(n=7)は平均605.7秒であった。分散分析の結果,群間の差は有意ではなかった(F (3,27)=.55)。
以上より,他者との相談ならびに思考の言語化のいずれも,Tパズルの解決を促進するとは言えない。
言語化の内容と解決の間に関連があるか検討するために,自己説明群・他者説明群・相談群の遂行者の発話から,(1)解決にプラスになるアドバイス(例「そのくぼみをうまく使えないか」),(2)解き方の見直し(例「まだやっていない組み合わせは何だろう」),(3)解き方の方針(例「角を先に作ってみよう」)を抽出した。また(1)~(3)の総計を(4)「メタ発話」とした。これらについて5分あたりの発話数を求めた(表2)。群×解決の分散分析の結果,解決の主効果がアドバイス(F (1,39)=3.81)と見直し(F (1,39)=2.85)で有意傾向,方針(F (1,39)=7.89)とメタ発話(F (1,39)= 7.77)で有意となった。3群をまとめて,10分以内に解決した遂行者(n=12)と,10~20分で解決した遂行者(n=13)に限定して,5分あたりの(1)~(4)の発話数を比較した(表3)。その結果,メタ発話で差が有意傾向を示した(t (23)=1.96)。以上より,問題解決に対するメタ的な言語化が解決の促進と関連していることが示唆された。
(注)本研究は第二著者による平成25年度群馬大学教育学部卒業研究『思考の言語化が洞察問題解決に及ぼす効果-Tパズルを用いた検討』に基づく。