The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PF

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PF059] 多様な考え方の比較検討方法の違いが課題解決に及ぼす影響(1)

児童による外れ値があるときの判断

鈴木豪 (東京大学)

Keywords:比較検討, 多様な解法, 代表値

目 的
多様な解法や考え方の比較検討が学習において促進効果を持つことが示されてきている。鈴木(印刷中)は,小学5年生を対象として,多様な代表値をもとにした考え方の比較検討方法の違いが及ぼす影響について調査している。具体的には,2群の大小を比べる際に,平均,最大値,最小値,最頻値のそれぞれで比べている4種類の考え方を児童に示し,それらの共通点・相違点を考えさせる群(共通相違群)と,最も良い考え方を選びその理由を考えさせる群(最良選択群)を設け,後の課題解決に差異が見られるかを検討している。結果,共通相違群の方が,適切な回答ができる割合が大きかったが,その範囲は限定的であった。その原因として,比較検討対象を理解するための時間が一部の児童にとって不足していた可能性がある。
そこで,本研究では鈴木(印刷中)の手続きをもとに,比較検討対象のとなる考え方で用いられている代表値が,ヒストグラムのどこにあたるかを確認するタスクを追加することとした。
本研究の目的は,比較検討対象を理解する時間を増やした場合に,共通相違群の方が,代表値の適応的な利用(外れ値があり,そのままの平均が妥当でない時に他の考え方を利用したり,複数の代表値に考慮して2群の比較を行ったりする)ができる割合が大きくなるか検証することである。

方 法
対象 公立小学校に通う5年生(N=43)。
課題と手続き 事前課題(2群の大小比較を行う課題)の回答内容が,2群が均等になるよう児童を割り当てた。
介入課題において,平均,最大値,最小値,最頻値のそれぞれを用いて,2群の大小について比べている4種類の考え方とヒストグラムを児童に示し,ヒストグラムとの対応づけを求めた。その後,共通相違群(N=22)では,考え方の共通点・相違点を考えてもらい,最良選択群(N=21)では,最も良い考え方を選び,その理由を考えてもらった。その後,事後課題A・Bに回答してもらった。
なお,本稿では,外れ値があるデータから次に得られる値を予測する課題である事後課題Aの結果について,鈴木(印刷中,研究Iとする)と本研究(研究IIとする)結果と比較しながら報告する。

結 果
事後課題Aについて,そのまま外れ値を含んだ平均を用いて判断したかどうかについて,人数を集計した(Table 1)。研究I・II間で群の効果に差があるか検討するためWoolf検定を行ったところ,オッズ比の差は有意であった(χ2(1)=4.00, p=.046)。さらに,研究I・IIについてそれぞれχ2検定を行った。その結果,研究Iでは,群による回答の偏りは有意でなく(χ2(1)=0.27, p=.598),研究IIでは,有意であった(χ2(1)=4.03, p=.045)。

考 察
研究I・II間の比較から,児童が比較検討する対象について理解する時間が増えたとき,共通点・相違点を探す比較検討方法を経験する方が,最も良い考え方を選ぶ比較検討方法を経験する場合に比べて,外れ値を含んだ平均を用いずに判断できる割合が高くなることが示された。