[PF097] 中学生向け将来志向性尺度の検討
Keywords:中学生, 将来志向性, 尺度検討
目 的
都筑(2003)によると,将来への意欲の乏しさや前向きに生きようとする価値観の欠如の傾向は,小学生から高校生にかけて,年齢とともに顕著になることが明らかにされている。
山上・相良(2014)は,将来志向性を「自分の将来への夢を具体的に持つこと」と定義し,中学生の向けの新たな将来志向性尺度を作成した。しかし,尺度としての使用可能性を高めるためには,次の点について更なる検討が必要であると考えた。つまり,再検査による信頼性を確認すること,より多くのサンプルに対して調査を実施して尺度構造の頑健性を確認すること,複数の方法を用いて妥当性を確認することである。本研究では,以上の点を踏まえて,中学生向けの将来志向性尺度の再検討を行うことを目的とする。
方 法
調査対象者 2つの中学校に所属する1・2年生 473名(1年生240名,2年生214名,男子221名,女子233名,回答率97%)。
調査内容 中学生の将来志向性について,将来志向性尺度(山上・相良;2014)16項目4件法の回答を求めた。
調査時期と手続き 平成22年10月,学校及び学年ごとに一斉に実施し,その場で回収した。対象者及び当該学校長に対し,事前に研究の目的を説明した上で調査を行った。
結果と考察
因子構造 将来志向性尺度(山上・相良;2014)で見出された4因子により確認的因子分析を行った結果,適合度は,GFI=.835,AGFI=.788であった。適合度は高いとは言えないが,Table1の各因子の標準化推定値から因子構造が同じとみなすことができた。
α係数 信頼性の推定値αについては,「良識社会志向子」.77,「家庭志向因子」.87,「金持ち志向因子」.79,「のんびり志向因子」.62であった。原本で得た信頼性推定値αに比べて,同程度あるいはそれ以上の数値が確認され,信頼性について一定の水準に達していると考えられる。
再検査信頼性 調査対象者のうち,M中学校1年生 114名の,平成22年6月,22年10月の2時点のデータを加えて再検査信頼性を検討した。その結果,「良識社会志向因子」r=.65,「家庭志向因子」r=.56,「金持ち志向因子」r=.54,「のんびり志向因子」r=.32であった。4因子ともに中程度の相関が見られ,調査としては十分な信頼性があると言える。
妥当性 妥当性検討のために,調査対象者のうちM中学校1年生114名の24年6月のデータについて,「将来目標の有無」における将来志向性各下位尺度得点のt検定を行った結果,「良識社会志向」t(69)=-2.97p<.01「家庭志向」t(69)=-2.02p<.05に有意な差が見られた。将来の目標がはっきりしているほど「良識社会志向」と「家庭志向」が高いと言える。また,調査時期から約1年半経過しているにもかかわらず,ほぼ予測の通りの有意差が見られたことから,調査としては十分な妥当性があると考えられる。
男女差の検討 性差の検討に関して,「家庭志向」において女子に有意な得点差が見られ(F(1,453)=8.06,p=.001),女子は男子よりも家庭に価値をおいているという先行研究の結果(桑原・伊藤,1994)と一致した。さらに,男子では結婚感が,女子では仕事感が未分化であるという先行研究の結果 (岡田,1991)とも一致した。この点も,将来志向性尺度(山上・相良;2014)の妥当性を示すものである。
引用文献
山上寛子・相良順子(2014). 中学生向け将来志向性尺度の作成.日本心理学会総会発表論文集 78.
都筑(2003)によると,将来への意欲の乏しさや前向きに生きようとする価値観の欠如の傾向は,小学生から高校生にかけて,年齢とともに顕著になることが明らかにされている。
山上・相良(2014)は,将来志向性を「自分の将来への夢を具体的に持つこと」と定義し,中学生の向けの新たな将来志向性尺度を作成した。しかし,尺度としての使用可能性を高めるためには,次の点について更なる検討が必要であると考えた。つまり,再検査による信頼性を確認すること,より多くのサンプルに対して調査を実施して尺度構造の頑健性を確認すること,複数の方法を用いて妥当性を確認することである。本研究では,以上の点を踏まえて,中学生向けの将来志向性尺度の再検討を行うことを目的とする。
方 法
調査対象者 2つの中学校に所属する1・2年生 473名(1年生240名,2年生214名,男子221名,女子233名,回答率97%)。
調査内容 中学生の将来志向性について,将来志向性尺度(山上・相良;2014)16項目4件法の回答を求めた。
調査時期と手続き 平成22年10月,学校及び学年ごとに一斉に実施し,その場で回収した。対象者及び当該学校長に対し,事前に研究の目的を説明した上で調査を行った。
結果と考察
因子構造 将来志向性尺度(山上・相良;2014)で見出された4因子により確認的因子分析を行った結果,適合度は,GFI=.835,AGFI=.788であった。適合度は高いとは言えないが,Table1の各因子の標準化推定値から因子構造が同じとみなすことができた。
α係数 信頼性の推定値αについては,「良識社会志向子」.77,「家庭志向因子」.87,「金持ち志向因子」.79,「のんびり志向因子」.62であった。原本で得た信頼性推定値αに比べて,同程度あるいはそれ以上の数値が確認され,信頼性について一定の水準に達していると考えられる。
再検査信頼性 調査対象者のうち,M中学校1年生 114名の,平成22年6月,22年10月の2時点のデータを加えて再検査信頼性を検討した。その結果,「良識社会志向因子」r=.65,「家庭志向因子」r=.56,「金持ち志向因子」r=.54,「のんびり志向因子」r=.32であった。4因子ともに中程度の相関が見られ,調査としては十分な信頼性があると言える。
妥当性 妥当性検討のために,調査対象者のうちM中学校1年生114名の24年6月のデータについて,「将来目標の有無」における将来志向性各下位尺度得点のt検定を行った結果,「良識社会志向」t(69)=-2.97p<.01「家庭志向」t(69)=-2.02p<.05に有意な差が見られた。将来の目標がはっきりしているほど「良識社会志向」と「家庭志向」が高いと言える。また,調査時期から約1年半経過しているにもかかわらず,ほぼ予測の通りの有意差が見られたことから,調査としては十分な妥当性があると考えられる。
男女差の検討 性差の検討に関して,「家庭志向」において女子に有意な得点差が見られ(F(1,453)=8.06,p=.001),女子は男子よりも家庭に価値をおいているという先行研究の結果(桑原・伊藤,1994)と一致した。さらに,男子では結婚感が,女子では仕事感が未分化であるという先行研究の結果 (岡田,1991)とも一致した。この点も,将来志向性尺度(山上・相良;2014)の妥当性を示すものである。
引用文献
山上寛子・相良順子(2014). 中学生向け将来志向性尺度の作成.日本心理学会総会発表論文集 78.