The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PF

(501)

Sat. Nov 8, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 501 (5階)

[PF098] 思春期の心性

親から友人へと変化していく関係性

西尾祐美子1, 鳥居深雪2 (1.神戸大学大学院, 2.神戸大学)

Keywords:性差, 悩み, 相談相手

【問題と目的】
思春期を迎えると第二次性徴に伴う身体的変化だけでなく,自己の内面に関心が向くといった心理的変化も訪れる。Blos(1962)が「第二の個体化過程」と名付けたように,思春期は親から心理的に離れ,自立して個を確立する時期でもあり,様々な関係性の変化が見られる。さらに,進学や就労による環境の変化もあり,思春期の子どもが直面する課題は多岐に渡る。これらの課題にうまく対応できなかったり,困難な課題に直面したりすると,不登校や精神障害,非行などの問題につながることも多い。また,思春期は明らかに男女で身体的な違いが出現し,多面的な性差も新たに生じる時期と考えられる。
本研究では,親との愛着や悩み経験,悩みの相談相手,自分にとって重要なものといった視点から,思春期特有の心性を明らかにすることを目的とする。質問紙調査を用い,回答に学年による差あるいは性差があるかを検討する。
【方法】
1.対象
公立小中学校の男女330名(小5男子49名・女子34名,小6男子33名・女子31名,中1男子49名・女子38名,中2男子43名・女子53名)
2.調査の内容
(1) 親への愛着に関する項目:姜・河内(2010)が作成した「親への愛着及び学校適応に関する尺度」より,「内的帰属安心」因子とされる項目を使用した。自分自身が原因で困ったとき,親はどうしてくれるかが予測でき,親に安心感を持っているかどうかを探る。得点が高いほど,親への愛着が高いといえる。
(2) 悩み経験の有無:岩瀧(2008)を参考に,学習,健康,見た目(自分の顔や体型,服装など),性格(見た目ではなく),友人関係,クラブ活動・部活動,進路の7項目について,悩み経験があるかどうか回答を求めた。
(3)悩みの相談相手:悩んだとき誰に相談するか,左記7項目ごとに,父,母,兄弟姉妹,先生,友達から上位3人にそれぞれ順位をつけてもらった。1位は3点,2位は2点,3位は1点と得点化し,分析に使用した。
(4)重要度:左記7項目のうち,自分にとって重要だと思うもの上位3つに順位をつけてもらった。1位は3点,2位は2点,3位は1点と得点化し,分析に使用した。
【結果と考察】
親への愛着得点について,性(2)×学年(4)の二要因分散分析を行った。その結果,学年による主効果が有意であった(F(3)=12.61,p<.01)。Tukey法による多重比較では,小5が小6,中1,中2より有意に高いという結果となった。
悩み経験はχ2検定を行ったところ,健康,見た目,性格,友人関係において女子の方が有意に悩み経験が多かった。また,学習,見た目,性格,部活動,進路においては女子のみ学年による有意差が見られた。
悩みの相談相手は,男女ともにほぼ全ての項目において母を最も多く挙げていたものの,学年が上がるにつれて相談相手として母を挙げる割合が少なかった。代わりに,男女ともに友人を挙げる割合が多かった。
重要度について大きな性差は見られず,小学生は友人関係を最も重要視していた。中学生では,友人関係と同等あるいはそれ以上に学習や進路が位置づけられる結果となった。
本調査の結果から,小学校高学年から中学校にかけて男女ともに親から友人へと関係性が徐々に移行していくということが窺えた。また,中学生になると進学に向けて学習や進路も重要視されるようになるが,思春期の男女にとって学校生活を送るうえで友人関係は不可欠なものであると同時に,悩みでもあるということが示唆された。