The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG

(5階ラウンジ)

Sun. Nov 9, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PG001] 学級風土に対する認知の差異がスクール・モラールに与える影響

児童の認知とそれを推察する教師の認知の差異に注目して

砂田真樹子 (高岡市立能町小学校)

Keywords:学級風土, 小学生

【問題と目的】
学級風土は児童間,児童-教師間の相互作用によって醸成され,教師の働きかけが大きな影響を与える。しかし,児童と教師の間には認知のずれが生じる。よって,児童の視点に立った的確な認知が重要となる。また,学級には,公的組織的側面と児童個人の欲求の2つの力が存在し,両者は葛藤しあうものである(根本,1987)。教師が児童の欲求を的確にとらえ指導に生かすことが学級に対する満足感を高め,児童個人の適応感にも影響を与えていくと考えられる。また,学級には固有の発達過程があり,学級としての課題も常に変化していると考えられる。
よって,学級風土に対する児童の認知とそれを推察する教師の認知の差異が,児童の適応感にどのような影響を与えているかを学級の発達過程を踏まえて検討する。
【方法】
(A)2012年2月末に,A県B市公立小学校4~6年生300名とその担任教師9名を対象に,(B)2013年7月・10月・2014年2月の3回,5・6年生203名とその担任教師6名を対象に,学級風土,スクール・モラールについての質問紙調査を行った。
【結果と考察】
(1)尺度の検討(方法Aより)
因子分析を行った結果,学級風土尺度として[親和性][規律][自己開示][実行性][学級活動]の5因子が,スクール・モラール尺度として〈教師関係〉〈級友関係〉〈承認感〉〈満足感〉の4因子が抽出された。
(2)学級発達過程による認知の差異がスクール・モラールに与える影響の検討(方法Bより)
学期毎に,学級風土5因子に対して児童‐教師間の差異得点を算出し,差異得点を独立変数,スクール・モラール得点を従属変数とした重回帰分析を行った。
その結果,1学期においては,[親和性]に対する認知の差異が少ない児童ほど,〈級友関係〉〈承認感〉〈満足感〉得点が,[学級活動]に対する認知の差異が少ないほど〈教師関係〉得点が高いことが示された(Figure1)。新しい学級集団の仲間に慣れることが課題となるこの時期は,親和性]の認知を的確に行うことが児童の適応感に影響を与えていると考えられる。2学期においては,[学級活動]に対する認知の差異が少ない児童ほど,すべてのスクール・モラール得点が,[規律]に対する認知の差異が少ない児童ほど〈満足感〉得点が高いことが示された(Figure2)。学級集団が教師主導から児童主導へと移行するこの時期は,[学級活動]に対する認知を的確に行うことが児童のあらゆる適応感を高めるために有効であると考えられる。また,3学期においては,[親和性]に対する認知の差異が少ない児童ほど,〈教師関係〉〈級友関係〉得点が,[規律]に対する認知の差異が少ない児童の方が〈教師関係〉得点が,[自己開示]に対する認知の差異が少ない児童の方が〈級友関係〉得点が高いことが示された(Figure3)。学級集団として終末を迎えるこの時期には,[親和性][規律][自己開示]といった様々な学級風土の認知を的確に行うことが,学級内での人間関係に対する適応感を高めるためには有効であると考えられる。