The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG

(5階ラウンジ)

Sun. Nov 9, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PG004] 小学6年生を対象とした思考力トレーニングとその効果に関する探索的検討(2)

情報を分析し表現する力が学習意欲にもたらす効果

遠田将大1, 塚原望2 (1.早稲田大学, 2.早稲田大学大学院)

Keywords:学習意欲, 情報を分析する力, 認知発達

【問題と目的】
学習意欲とは,学習に自ら取り組む姿勢や態度のことをいい,学習する上で必要不可欠なものである。第2回子ども生活実態基本調査報告書(ベネッセ,2009)では,「勉強しようとする気持ちがわかない」という質問に,小学6年生の40%の児童が「そう思う」と答えている。そのため,小学6年生の学習意欲に関連する要因を分析し,学習意欲を向上させる取り組みを行う。本研究では,小学校高学年の学習意欲に関連する要因として思考力を取り上げる。高学年は,具体的操作期から形式的操作期への移行期に相当する時期である(Piaget,1970)。この時期は,情報同士を比較したり分類したりして高次な概念にまとめ上げられるようになってくるが,多くの児童がこの段階でつまずいていることが報告されている(渡辺,2011)。特に小学6年生は,情報を分析すること,分析内容と意見を関連づけて表現することに課題があると報告されている(全国学力・学習状況調査,2013)。そこで,小学6年生の学習意欲を向上させるために,情報を分析する力,分析内容を用いて意見を表現する力を高めるための支援を行うこととする。
【方法】
対象:N県の私立小学校6年生1学級35名(男16 名,女19名)。時期:2013年11月上旬~12月上旬。調査内容:プログラム実施前後に「学習意欲と思考力に関する尺度」(発表準備中)から,意欲的な行動に関する質問を実施。これは,状況に応じて自分の気持ちや思考を調整する「自律的行動」と問題解決のために内容を整理したり見通しを立てたりする「問題解決的行動」の2因子各4項目で構成されている。プログラム内容:情報を分析する力を育てるプログラムを3回実施。詳細は小学6年生を対象とした思考力トレーニングの効果に関する探索的検討(1)を参照。授業の進み方:活動内容と思考スキルの理解,思考スキルを用いた情報分析活動,ふり返り。思考スキルとは,情報の分析,分析したものを表現できるようになるためのフレーズで,「~と~を比べると」「~から~ということが分かる」がある。
【結果と考察】
児童は,全3回のプログラムを通して,同一条件下で情報同士を比較したり,それを元に意見を表現したりした。記入に不備のない児童を対象に,対応のあるt検定を行なった結果,「問題解決的行動」が有意に増加した(Table.1)。提示された思考スキルを使用し情報を分析する活動をしたことで,児童は情報を分析する力,分析内容を用いて意見を表現する力を身につけたのであろう。これが学習意欲の向上に寄与したと考えられる。小学6年生の学習意欲を向上させるには,情報を分析する力を身につけるための支援が有効であることが分かった。今後は,統制群を設けることで活動の効果を裏付けることが必要である。