The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG

(5階ラウンジ)

Sun. Nov 9, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PG012] 中学の学校行事における教師の関わり方の質的検討

J. R. Harrisの集団社会化理論の視座から

河本愛子 (東京大学大学院)

Keywords:学校行事, 集団社会化理論, 教師

問題と目的 学校行事は子どもの自律的な集団活動を通して生徒の人格形成を図る教育活動であり,生涯にわたり子どもに影響を与え得る活動ともいわれている(柴崎, 2009)。しかし,学校行事に関与するのは子どもだけではない。自律的な運営能力の高まる青年期になっても,教師は重要な役割を果たし得る。例えば中学の文化祭においては教師の働きかけが小集団の発展を促進し,活動直後の生徒の自己評価に影響を与えることが示されている(樽木・石隈, 2006; 樽木・蘭・石隈, 2008)。だが,このような教師の支援が,生徒の長期的な発達にまで影響を及ぼすのかは未だ検討されていない。
ここで,集団活動が生徒の長期的な発達にいかなる影響を及ぼすかを検討するための有用な理論的枠組みとしてJudith Rich Harrisの集団社会化理論(1995; 2006)があげられる。この理論では,仲間集団内で生じる自己の同化と差異化が,後の人格形成にまで長期にわたる影響をもたらすと提唱されており,このプロセスに教師が重要な役割を果たすとされている(Harris, 1995, 2009)。しかし,生徒の同化や差異化を生じさせるため,教師が具体的にどのような関与をしているのかは未だ明らかにされていない。
そこで,本研究では,集団社会化理論の視座から,生徒の長期的な発達に大きな影響を及ぼすと仮定される集団の中での自己の同化と差異化が,教師のどのような関与によって促進されると教師が捉えているのかを検討する。
方法 中学校の教員4名(男性1名,女性3名)を対象に半構造化インタビューを行った。面接時間は70~150分であった。面接では,対象校の生徒の状況,学校行事の実施内容,および,そこでどのように関与しているかを質問した。
結果と考察 同化や差異化を生じさせるための教員の関与方法として3種類が見出された。1つ目は生徒への直接の働きかけ,2つ目は学校行事の構造化,3つ目は生徒への非関与である。
同化については,体育祭や合唱祭でクラス対抗の種目や演目を設けたり,合唱祭の準備途中で学年発表会を設け,他クラスとの進捗状況を比較できる場を設けたりするなど,学校行事の構造化を行うことで自集団への所属意識を高める工夫があげられていた。また,集団規範を意識化させて同化を促す工夫としては,体育祭で整列や体操を行うことで,周りを見て自分の位置を決めることの重要性を指導するといった発言がみられた。また,あえて生徒に関与しないことで,自分たちで運営をする重要性を暗に伝え,集団規範の意識化させる場合もあることがわかった。
次に差異化については,係や委員長,指揮者といった役割を設け,仕事を分担するよう構造化することで差異化を促すという発言がみられた。リーダーや指揮者など重要な役割を担った役割についた子に対しては,教師が直接働きかけ,どのように集団に関与すべきか助言をしたり,指揮法について技術的な助言をしたりする場合があることがわかった。これは,生徒の担った役割を意識化させ,差異化することにつながると考えられる。また,行事終了後に振り返りの時間を設け,活躍した生徒を称え,認めるという発言もみられた。これは生徒に自身の秀でた能力を自覚させ,差異化を促すと考えられる。