[PG030] 子どもに肯定的変化を促す小学校教師の関わりと子どもの変容に関する検討
子どもの視点による質的分析
キーワード:小学校教師, 関わり, 変容
問題と目的
近年,子どもを取り巻く環境の変化に伴い子どもの問題も複雑化している(文部科学省,2008)。文部科学省の統計資料では,教師の困難感のうち上位に子どもとの関わりが挙げられている。先行研究では,教師の指導行動研究(弓削,2012),荒れた学級への対応研究(浦野,2001)等があるが,これらは主に学習を含めた教師の指導場面での対応である。授業時間以外の関わりとしては子どもへの肯定的変化を促す教師の関わりを検討した研究(角南,2013)がある。だが,この研究は子どもの行動変化に着目した教師の視点による分析であり,子どもの側からの検討がなされていない。そこで本研究では,子どもの視点から肯定的に変化した教師との関わり場面とその後の変容について検討する。
方法
A大学の学生124名(男子42名,女子72名)。小学校教師との関わり経験について自由記述文による調査を実施した。小学校時代の先生との関わりにおいて,思い出せる限りできるだけ詳細な記述を依頼した。データ収集後,KJ法(川喜田,1967)で関わり場面を分類した。その後、グラウンデッド・セオリー・アプローチを使用して、その後の変容過程を分析した。
結果と考察
KJ法で得られたデータは,以下に分類された。
【指導】 厳しい指導場面が導出された。このような指導場面での教師の関わりは,場合によっては子どもが変わるきっかけになることが示唆された。
【周囲への言葉かけ】 クラスや全校,あるいは集団場面で,教師が個人ではなく全体にかけた言葉かけを,子どもが周りや近くで聞いていたという場面である。同じ場所で聞いていた子どもが,自分のこととして受け止めたり,自分のことではないが胸に響いたり印象に残ったことで間接的影響を受けたと考えられる。
【受容】 教師が個別対応で,子どもを受容する関わり場面である。具体的には,褒められたり,認められることで子どもは自身が変化したと感じていることが示された。この関わりは子どもに自己肯定感を育み,その後の子どもに変化を促したと考えられる。
【熱心な態度】 主に,「全力で」「真正面」「熱心」という言葉が使われており,具体的な行動というより,その場面での教師の態度や姿勢を子どもたちは敏感に感受し,影響を受けていることが示唆された。
【援助】 子どもが困っている時,教師が援助する場面である。このような教師の対応が子どもに教師への信頼感や安心感を与え,その後の生活や思考にも影響を与えている可能性がある。
【親近感】 教師と個人的な話をしたり,休憩時間に一緒に遊んだりした場面である。このような関わりは,教師への接近と親近感につながり,さらに関係性の構築にも関与する大切な場面であるのだろう。
さらに、各カテゴリーにおける直後の感情反応とその後の変化について、Table1に記す。変容過程において、「指導」直後の感情は反発や困惑であった。それが、時間経過に伴い、社会ルールの遵守やあるべき姿の規範などの気付きに移行した場合、自己の肯定的変化の契機となり得ると認識しているといえよう。
「受容」直後には、喜びや安心感が生起し、受容に伴う精神面の変化に付随した肯定的な行動と心理面の変化が見られた。「指導」による関わりを外発的動機とすると、「受容」の場合は内発的動機と位置づけられよう。上記により、それぞれの関わりによって、変容した行動の種類に特徴があることが示唆された。
総合考察
本研究では,教師との関わり経験から,子どもに肯定的影響を及ぼしたと考えられる場面とその後の子どもの変容について分析を行った。その結果,従来厳しいとされており,教師の指導行動研究や指導態度研究でも相対する分類として挙げられていた「指導」が導出された。これにより、教師と子どもの間に認識の差異があることが示された。続く研究では,「指導」の条件や関わりの経緯についても詳しく検討する必要があるだろう。
キーワード:肯定的変化 小学校教師 関わり
近年,子どもを取り巻く環境の変化に伴い子どもの問題も複雑化している(文部科学省,2008)。文部科学省の統計資料では,教師の困難感のうち上位に子どもとの関わりが挙げられている。先行研究では,教師の指導行動研究(弓削,2012),荒れた学級への対応研究(浦野,2001)等があるが,これらは主に学習を含めた教師の指導場面での対応である。授業時間以外の関わりとしては子どもへの肯定的変化を促す教師の関わりを検討した研究(角南,2013)がある。だが,この研究は子どもの行動変化に着目した教師の視点による分析であり,子どもの側からの検討がなされていない。そこで本研究では,子どもの視点から肯定的に変化した教師との関わり場面とその後の変容について検討する。
方法
A大学の学生124名(男子42名,女子72名)。小学校教師との関わり経験について自由記述文による調査を実施した。小学校時代の先生との関わりにおいて,思い出せる限りできるだけ詳細な記述を依頼した。データ収集後,KJ法(川喜田,1967)で関わり場面を分類した。その後、グラウンデッド・セオリー・アプローチを使用して、その後の変容過程を分析した。
結果と考察
KJ法で得られたデータは,以下に分類された。
【指導】 厳しい指導場面が導出された。このような指導場面での教師の関わりは,場合によっては子どもが変わるきっかけになることが示唆された。
【周囲への言葉かけ】 クラスや全校,あるいは集団場面で,教師が個人ではなく全体にかけた言葉かけを,子どもが周りや近くで聞いていたという場面である。同じ場所で聞いていた子どもが,自分のこととして受け止めたり,自分のことではないが胸に響いたり印象に残ったことで間接的影響を受けたと考えられる。
【受容】 教師が個別対応で,子どもを受容する関わり場面である。具体的には,褒められたり,認められることで子どもは自身が変化したと感じていることが示された。この関わりは子どもに自己肯定感を育み,その後の子どもに変化を促したと考えられる。
【熱心な態度】 主に,「全力で」「真正面」「熱心」という言葉が使われており,具体的な行動というより,その場面での教師の態度や姿勢を子どもたちは敏感に感受し,影響を受けていることが示唆された。
【援助】 子どもが困っている時,教師が援助する場面である。このような教師の対応が子どもに教師への信頼感や安心感を与え,その後の生活や思考にも影響を与えている可能性がある。
【親近感】 教師と個人的な話をしたり,休憩時間に一緒に遊んだりした場面である。このような関わりは,教師への接近と親近感につながり,さらに関係性の構築にも関与する大切な場面であるのだろう。
さらに、各カテゴリーにおける直後の感情反応とその後の変化について、Table1に記す。変容過程において、「指導」直後の感情は反発や困惑であった。それが、時間経過に伴い、社会ルールの遵守やあるべき姿の規範などの気付きに移行した場合、自己の肯定的変化の契機となり得ると認識しているといえよう。
「受容」直後には、喜びや安心感が生起し、受容に伴う精神面の変化に付随した肯定的な行動と心理面の変化が見られた。「指導」による関わりを外発的動機とすると、「受容」の場合は内発的動機と位置づけられよう。上記により、それぞれの関わりによって、変容した行動の種類に特徴があることが示唆された。
総合考察
本研究では,教師との関わり経験から,子どもに肯定的影響を及ぼしたと考えられる場面とその後の子どもの変容について分析を行った。その結果,従来厳しいとされており,教師の指導行動研究や指導態度研究でも相対する分類として挙げられていた「指導」が導出された。これにより、教師と子どもの間に認識の差異があることが示された。続く研究では,「指導」の条件や関わりの経緯についても詳しく検討する必要があるだろう。
キーワード:肯定的変化 小学校教師 関わり