[PG048] 大学生における方略使用と有効性の認知の教科横断的検討
心理学,統計学,外国語,学習一般を対象にして
Keywords:学習方略, 方略使用, 領域横断
目 的
学習方略研究では方略の使用頻度や有効性の認知について多く検討されている。Wolters & Pintrich(1998)やNeuenhaus, Artelt, Lingel, & Schneider(2011)の研究において,共通する尺度で複数科目を横断的に測定しているが,いずれも尺度の全項目の平均を使って科目間の相関をとり,それらを記しているにとどまる。だが,ある学習方略が,特定の科目のみで使用頻度が高かったり,有効性を高く認知されたりするなど,方略によって科目横断的な結果が異なる可能性がある。
また,一般的に相関が高いとされる方略の使用頻度と有効性の認知だが,特定科目において使用頻度が低いが有効性の認知が高い学習方略があれば,使用促進に関する介入をおこなう価値がある。
一方で,学習方略尺度には学習一般(e.g., 佐藤・新井,1998)について回答を求めるタイプも存在する。だが,近年その妥当性が疑問視されている(Veenman, 2005)。そこで学習一般についても同様に測定し,特定科目との比較をおこなうこととした。
本研究では,心理学専攻の主な3科目と学習一般の4場面について,学習方略の使用頻度と有効性の認知について回答を求め,科目によって異なるか検討した。
方 法
参加者 H大学の心理学専攻139名(女子85名,男子54名;1年65名,2年37名,3年37名)。
質問紙 ASI, ILS, MAI, MSLQ, SPQの各尺度および犬塚(2002),佐藤(1998),瀬尾他(2012),村山(2003a)の扱った尺度を参照し,Weinstein & Mayer (1986)の分類に沿って,学習方略の理論に基づき,方略を4つに大別した。丸暗記などのリハーサル方略,学習材料の関連性を整理するなどの体制化方略,既有知識を使って学習材料の意味を加工するなどの精緻化方略,自分の理解状況を監視し,理解度が低ければ方略や計画を修正するメタ認知的方略の4つである。さらにメタ認知的方略の1つである教訓帰納方略(市川, 1993)も別途下位尺度として追加し,方略尺度24項目を作成した。
手続き 心理学,統計学,外国語,学習一般の4場面に対し,各方略の使用頻度と有効性の認知について6件法で回答を求めた。
結 果 と 考 察
Amos5.0を使った確認的因子分析の結果,適合度を低くしていたリハーサル方略を除外した。
予備分析の結果,学年差や順序効果はみられなかったためそれらの要因は込みにして,4(科目:学習一般,外国語,統計学,専門科目)×4(学習方略:体制化,精緻化,メタ認知的,教訓帰納)の被験者内2要因分散分析を行った。その結果,使用頻度(F(9,1242)=15.3, p<.01)と有効性の認知で(F(9,1242)=14.9, p<.01)交互作用が有意になった。
精緻化方略は,統計学で使用頻度が低かったが有効性の認知では高かった(Figure 1)。統計学では,精緻化方略の使用を促進する授業運びが望まれる。
使用頻度と有効性の認知において,メタ認知的方略は科目間に使用頻度に有意差が見られなかったが,教訓帰納方略は心理学が他科目より有意に低かった。教訓帰納方略はメタ認知的な方略であるが,メタ認知的方略と異なる結果になったのは,教訓帰納方略は認知活動に強く依存する方略であるのに対し,メタ認知的方略は自己の意思決定レベルで扱われる方略だからだろう。
また,学習一般は多くの方略で心理学と同様の結果となった。これは学習一般の回答時になじみ深い心理学を想定した(自由記述欄より)ためだろう。学習一般への回答時に,回答者が自ら想定しやすい特定の科目のみに基づかないよう留意する必要がある。
学習方略研究では方略の使用頻度や有効性の認知について多く検討されている。Wolters & Pintrich(1998)やNeuenhaus, Artelt, Lingel, & Schneider(2011)の研究において,共通する尺度で複数科目を横断的に測定しているが,いずれも尺度の全項目の平均を使って科目間の相関をとり,それらを記しているにとどまる。だが,ある学習方略が,特定の科目のみで使用頻度が高かったり,有効性を高く認知されたりするなど,方略によって科目横断的な結果が異なる可能性がある。
また,一般的に相関が高いとされる方略の使用頻度と有効性の認知だが,特定科目において使用頻度が低いが有効性の認知が高い学習方略があれば,使用促進に関する介入をおこなう価値がある。
一方で,学習方略尺度には学習一般(e.g., 佐藤・新井,1998)について回答を求めるタイプも存在する。だが,近年その妥当性が疑問視されている(Veenman, 2005)。そこで学習一般についても同様に測定し,特定科目との比較をおこなうこととした。
本研究では,心理学専攻の主な3科目と学習一般の4場面について,学習方略の使用頻度と有効性の認知について回答を求め,科目によって異なるか検討した。
方 法
参加者 H大学の心理学専攻139名(女子85名,男子54名;1年65名,2年37名,3年37名)。
質問紙 ASI, ILS, MAI, MSLQ, SPQの各尺度および犬塚(2002),佐藤(1998),瀬尾他(2012),村山(2003a)の扱った尺度を参照し,Weinstein & Mayer (1986)の分類に沿って,学習方略の理論に基づき,方略を4つに大別した。丸暗記などのリハーサル方略,学習材料の関連性を整理するなどの体制化方略,既有知識を使って学習材料の意味を加工するなどの精緻化方略,自分の理解状況を監視し,理解度が低ければ方略や計画を修正するメタ認知的方略の4つである。さらにメタ認知的方略の1つである教訓帰納方略(市川, 1993)も別途下位尺度として追加し,方略尺度24項目を作成した。
手続き 心理学,統計学,外国語,学習一般の4場面に対し,各方略の使用頻度と有効性の認知について6件法で回答を求めた。
結 果 と 考 察
Amos5.0を使った確認的因子分析の結果,適合度を低くしていたリハーサル方略を除外した。
予備分析の結果,学年差や順序効果はみられなかったためそれらの要因は込みにして,4(科目:学習一般,外国語,統計学,専門科目)×4(学習方略:体制化,精緻化,メタ認知的,教訓帰納)の被験者内2要因分散分析を行った。その結果,使用頻度(F(9,1242)=15.3, p<.01)と有効性の認知で(F(9,1242)=14.9, p<.01)交互作用が有意になった。
精緻化方略は,統計学で使用頻度が低かったが有効性の認知では高かった(Figure 1)。統計学では,精緻化方略の使用を促進する授業運びが望まれる。
使用頻度と有効性の認知において,メタ認知的方略は科目間に使用頻度に有意差が見られなかったが,教訓帰納方略は心理学が他科目より有意に低かった。教訓帰納方略はメタ認知的な方略であるが,メタ認知的方略と異なる結果になったのは,教訓帰納方略は認知活動に強く依存する方略であるのに対し,メタ認知的方略は自己の意思決定レベルで扱われる方略だからだろう。
また,学習一般は多くの方略で心理学と同様の結果となった。これは学習一般の回答時になじみ深い心理学を想定した(自由記述欄より)ためだろう。学習一般への回答時に,回答者が自ら想定しやすい特定の科目のみに基づかないよう留意する必要がある。