[PG052] 大学生の質問行動を促進するための質問生成過程への介入
質問の型リストを用いた高次な質問の促進
Keywords:大学生, 質問生成
問題と目的
本研究では,大学生の質問行動における実態を踏まえて(研究1),質問生成過程への介入に対する検討を行なった(研究2)。
研究1
目的 道田(2011)を踏まえて,大学生における授業中の質問行動の実態を明らかにするために,質問紙調査を行った。
対象者 理工学部,スポーツ健康科学部,文学部の大学生212名。
結果と考察 授業中の質問態度に関するχ2検定で,質問したいと感じているが,実際に質問はできないという回答が最も多いことが示された(p<.01)。質問をしない理由について因子分析を行ったところ,「質問の言語化」(M=2.72,SD=0.98),「より深い理解」(M=2.24,SD=0.87),「質問行動に対する認知」(M=2.75,SD=0.74)となった。一要因分散分析の結果,「質問の言語化」および「質問行動に対する認知」は「より深い理解」よりも有意に平均得点が高かった(p<.001)。また,授業中に質問できるようになるために必要な能力の項目について因子分析を行ったところ,「質問することによる対価」(M=3.91,SD=0.74),「質問の言語化」(M=3.53,SD=0.81)となった。一要因分散分析の結果,因子間には有意差があった(p<.001)。
研究2
目的 研究1で大学生が質問生成に困難を感じていることが明らかとなったため,質問生成過程に介入し,大学生の質問行動を促進することを目的とした。介入には高次な質問の型をリストにして用いた(以下,質問の型リスト)。これは,学習者には,逐語的な事実を問う質問より,内容から推理や応用を問う質問の方が有効と考えられるためである(池田,1981)。
対象者 理工学部およびスポーツ健康科学部を対象に開講されている「現代の教育」を受講している大学生79名。
材料 質問を記入するための用紙,また「理由や意味について考えるための質問」や「知っていることに関連付けて考えるための質問」などをするための型が書かれた質問の型リスト。
手続き 講義開始時に質問記入用紙を配布し,「授業中に感じた疑問や質問を記入してください」と教示を与え,6週間に渡って質問記入用紙への記入を求めた。質問記入用紙は講義開始時に配布し,講義終了時に回収した。4週目および5週目の講義では,質問記入用紙に質問の型リストを添付したものを配布し,介入とした。配布の際には「質問する際の参考にするように」と講義の担当教員から説明がされた。
分類方法 介入前後の質問の質的な変化を検討するために,道田(2011)を参考に質問分類表を作成し,それを用いて内容ごとに記入された質問を分類した。大カテゴリーとして,「単純な説明を求める質問」・「思考を刺激する質問」・「意図不明な質問」・「その他」を設置した。
結果と考察 t検定を行ったところ,「思考を刺激する質問」の得点は,介入前(M=0.86,SD=0.78)と介入後(M=1.30,SD=0.95)で有意差があった(p<.01)。「思考を刺激する質問」は質問者と回答者の両方の思考や認知活動を活性化するような質問であり(King,1995),高次な質問であるとされる。
このことから,介入によって高次な質問が促進されたといえる。また,質問の型リストの基となった質問語幹リストを用いた質問作成法は,すぐにマスターでき,学習も飛躍的に向上するとされていることが(道田,2007),本研究においても示されたといえる。
総合考察
以上より,大学生が質問生成に困難を感じていることが示された(研究1)。また,質問の型リストを用いた質問生成過程への介入によって,高次な質問が促進されることが明らかになった(研究2)。
本研究では,大学生の質問行動における実態を踏まえて(研究1),質問生成過程への介入に対する検討を行なった(研究2)。
研究1
目的 道田(2011)を踏まえて,大学生における授業中の質問行動の実態を明らかにするために,質問紙調査を行った。
対象者 理工学部,スポーツ健康科学部,文学部の大学生212名。
結果と考察 授業中の質問態度に関するχ2検定で,質問したいと感じているが,実際に質問はできないという回答が最も多いことが示された(p<.01)。質問をしない理由について因子分析を行ったところ,「質問の言語化」(M=2.72,SD=0.98),「より深い理解」(M=2.24,SD=0.87),「質問行動に対する認知」(M=2.75,SD=0.74)となった。一要因分散分析の結果,「質問の言語化」および「質問行動に対する認知」は「より深い理解」よりも有意に平均得点が高かった(p<.001)。また,授業中に質問できるようになるために必要な能力の項目について因子分析を行ったところ,「質問することによる対価」(M=3.91,SD=0.74),「質問の言語化」(M=3.53,SD=0.81)となった。一要因分散分析の結果,因子間には有意差があった(p<.001)。
研究2
目的 研究1で大学生が質問生成に困難を感じていることが明らかとなったため,質問生成過程に介入し,大学生の質問行動を促進することを目的とした。介入には高次な質問の型をリストにして用いた(以下,質問の型リスト)。これは,学習者には,逐語的な事実を問う質問より,内容から推理や応用を問う質問の方が有効と考えられるためである(池田,1981)。
対象者 理工学部およびスポーツ健康科学部を対象に開講されている「現代の教育」を受講している大学生79名。
材料 質問を記入するための用紙,また「理由や意味について考えるための質問」や「知っていることに関連付けて考えるための質問」などをするための型が書かれた質問の型リスト。
手続き 講義開始時に質問記入用紙を配布し,「授業中に感じた疑問や質問を記入してください」と教示を与え,6週間に渡って質問記入用紙への記入を求めた。質問記入用紙は講義開始時に配布し,講義終了時に回収した。4週目および5週目の講義では,質問記入用紙に質問の型リストを添付したものを配布し,介入とした。配布の際には「質問する際の参考にするように」と講義の担当教員から説明がされた。
分類方法 介入前後の質問の質的な変化を検討するために,道田(2011)を参考に質問分類表を作成し,それを用いて内容ごとに記入された質問を分類した。大カテゴリーとして,「単純な説明を求める質問」・「思考を刺激する質問」・「意図不明な質問」・「その他」を設置した。
結果と考察 t検定を行ったところ,「思考を刺激する質問」の得点は,介入前(M=0.86,SD=0.78)と介入後(M=1.30,SD=0.95)で有意差があった(p<.01)。「思考を刺激する質問」は質問者と回答者の両方の思考や認知活動を活性化するような質問であり(King,1995),高次な質問であるとされる。
このことから,介入によって高次な質問が促進されたといえる。また,質問の型リストの基となった質問語幹リストを用いた質問作成法は,すぐにマスターでき,学習も飛躍的に向上するとされていることが(道田,2007),本研究においても示されたといえる。
総合考察
以上より,大学生が質問生成に困難を感じていることが示された(研究1)。また,質問の型リストを用いた質問生成過程への介入によって,高次な質問が促進されることが明らかになった(研究2)。