The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG

(5階ラウンジ)

Sun. Nov 9, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PG058] 中学「歴史」教科書の読解を促すための挿入質問のあり方

読み飛ばし問題の解消に向けて

小島淳一1, 山本博樹2 (1.立命館大学大学院, 2.立命館大学)

Keywords:文章理解, 歴史教科書, 挿入質問

問題と目的
中学校の「歴史」教科書の学習において生徒が重要な項目を読み飛ばすことがある。この問題に対する支援として読み返しを促す挿入質問があるが,このうち文末に提示する後置質問が内容に焦点を向けさせることで読み返しに貢献すると考えられる(山本, 2010)。しかしその効果は条件によって変わるため(Mayer, 2008),より具体的な検証が必要であると考えられる。
よって本研究は教育の実践に近い課題を用い,後置質問が文章中の重要な事項とそれ以外の事項への理解をどの程度促進させるか検討することを目的とする。仮説としては,文章の後に質問がある群 (以下, 後置質問群)は,課題の文章の前後に質問がない群(以下, 質問無群)や,文章の前に質問がある群(以下, 前置質問群)よりも,再認・推論テストの中心項目と周辺項目において成績が良いと考える。
方法
参加者 国立中学2年生,男女80名。
課題 課題文は高等学校歴史教科書「現代の日本史 日本史A」(山川出版社)を改編して使用した。課題文における主題となる部分を挿入質問の内容とした。再認テストは挿入質問の内容が解答となる中心項目と,挿入質問の内容以外の文章内容が解答になる周辺項目で構成された。推論テストは挿入質問の内容から解答が推定できる中心項目と,挿入質問の内容以外の文章内容から解答が推測できる周辺項目で構成された。
手続き 実験者が課題文を音読するのに合わせて,参加者が黙読した。課題文の音読は一度のみであった。その後,再認テストと推論テストへの解答を求めた。
結果
再認テストの分析 挿入質問(3 :質問無群・前置質問群・後置質問群間)と項目(2 :中心項目・周辺項目)による2要因混合計画で分散分析を行った結果,挿入質問の主効果が有意(F(2,75)=3.30, p <.05)であり,多重比較をLSD法で行った結果,質問無群と後置質問群間で有意(p <.05)であった。 また項目での主効果が有意(F(1,75)=9.76, p <.01)であり,交互作用は認められなかった(Figure1)。
推論テストの分析 推論テストの中心項目と周辺項目別に正答者数と誤答者数について集計した。それぞれχ2検定を行った結果,中心項目と周辺項目の両項目で有意でなかった。
考察
文章の後に挿入質問を置くことで文章の中心情報と周辺情報への読解が促進された。したがって本研究の仮説は支持され,後置質問を用いることで,内容の理解の促進ができることが示された。
これは,文章を読み終えた段階で提示する後置質問は,読みの最中を支援したというよりも,挿入質問の内容に焦点を向けさせる形で読み返しを支援したからであると推測することができる。ここから,文章を読み終えた後に,挿入質問を基に再度読み返すことで,読み飛ばしの問題の解消が期待できると考えることは可能だろう。ただし,今回の実験では読み飛ばしの問題を抱えている生徒のみを直接に対象者とした支援の検討ではないため,この点で更なる研究が必要である。