The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH

(5階ラウンジ)

Sun. Nov 9, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PH013] 東日本大震災において学校が担う役割と学校支援(3)

避難所運営に関する養護教諭の意見調査より

内藤裕子1, 西野美佐子1, 平川昌宏1, 荒井美智子2, 沼山博3 (1.東北福祉大学, 2.聖和学園短期大学, 3.山形県立米沢女子短期大学)

Keywords:学校, 避難所運営, 養護教諭

[目的][方法] (1)と同じ
[分析のねらい]
養護教諭を対象に避難所運営における体験や考えを自由記述により求め、実態や課題を明らかにするとともに、具体的な支援の手立てを検討する。[分析方法]
回答より避難所運営の経験の有無を判断し、経験ありと経験なしの2群に分けた。各群においてコーディング、カテゴリー化、マップ化を経て全体像を捉えた。再度各回答に戻り、カテゴリー間の関係に共通性が見られる回答群を拾い上げ、その数とパターンから特徴的な部分を明らかにした。
[結果]
本質問への回答数304のうち「経験あり」105,
「経験なし」199であった。コード名を【 】、サブカテゴリー名を< >、大カテゴリー名を≪ ≫で表記し、分析の結果を示す。
避難所運営を経験した場合、全体像として<問題点><心労><良かったこと>を含めた体験の振り返りから、<運営のあり方><姿勢>≪必要
なこと≫などの今後に向けての課題が導き出されていることがわかった。振り返りでは【学校への依存】【職性への過度の期待】【葛藤(公と私の狭間で)】【勤務体制の問題】が多く、今後の課題として【備え】を挙げた人が多かった。各回答のコードやカテゴリーの関係性に注目すると、振り返りで【勤務体制の問題】を挙げた人のほとんどが、今後に向けて【居住地支援】【校内共助】【適正配置】などの<勤務体制の工夫>について言及しており、振り返りの<良かったこと>で【支援の力】を挙げた人のほとんどが、【ボランティア】【学校医】などの具体的な<人的支援>について言及していた。さらに、今後の避難所運営のあり方として地域・行政との【協働】あるいは学校から自治組織への【移行】を挙げている人は、【地域や行政との体制づくりと訓練】や【日頃のコミュニケーション】の必要性を感じている傾向が見られた(図1)。避難所運営を経験していない場合、対応や救急処置に対する<不安>、<運営のあり方>の【協働】【移行】を挙げた人が多く、これには経験者の話や震災後に作成されたマニュアルの情報が影響していることが推測できた。各回答に戻ると、<運営のあり方>で【移行】を挙げた人の多くは、「学校再開に向けての活動を早期に行うことが必要」などの【学校本来の役割】を理由として挙げていた。また、若干ではあるが【不安(対応)】を感じている人は【校内での組織的準備】や【研修】の必要性を感じている傾向が見られ、支援できずに【無力感】を感じた人は【応援勤務】のシステムを望んでいる傾向が見られた。また、経験の有無に限らず、医療看護面のスキルアップの必要性を感じている人が多いことがわかった。
[まとめ]
混乱期の避難所運営では学校や養護教諭の専門性への依存や期待が大きく、自身も被災者である場合は公と私の間で葛藤を抱え過重な負担がかかっていたことがわかった。負担の軽減のためには、①学校内外における組織的準備や研修などの備え ②「学校医のバックアップ」「同職者の応援勤務」などのサポートシステム ③自宅近くの避難所で貢献する「居住地支援」や交代制で運営に携わる「校内共助」などの勤務体制の工夫が必要であることが示唆された。
謝辞:本研究は東北福祉大学感性福祉研究所における文部科学省の私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(平成24年度~28年度)による私学助成を受けている。