The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH

(5階ラウンジ)

Sun. Nov 9, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PH014] 大学2年生に対するキャリア教育科目の効果測定V

CAVTプロット分析による検討

永作稔1, 纓坂英子1 (駿河台大学)

Keywords:キャリア教育, キャリアアクションビジョンテスト(CAVT), 大学生

【 問 題 と 目 的 】 大学生に対するキャリア教育の効果を実証しようとする動きが出てきている(梅崎・田澤, 2013)。また,日本学術会議(2008)は対外報告として現代の心理学に相応しい心理学教育の確立を提言し,心理学教育が達成すべき10の学習目標のひとつに,「キャリア計画とキャリア開発の技能を習得する」という内容を含めている。これは心理学教育の教養的側面のひとつとされ,心理学を学ぶことによって「職業選択の計画に心理学の専門知識を役立てること」や「正確な自己評価に基づくキャリアパス選択ができるようになること」が望ましい心理学教育の在り方であり,達成されるべき基準となることを示唆している。したがって,心理学に基づいたキャリア教育の教育評価の効果測定を行うことは意義深いと考えられる。そこで,本研究では心理学を学ぶ大学生を対象に実施されたキャリア教育科目の効果測定を行うことを目的とした。効果測定には(永作・纓坂,2013他)と同様に、CAVT(下村ら,2009)を用いる。

【 方 法 】 調査対象:首都圏私立大学心理学部に在席する大学生123名のうち10月と翌年1月の2回の調査にいずれも回答した98名。履修登録者に対する有効回答者の割合は73.0%であった。
調査時期:2012年度の秋学期科目。授業前(初回授業の冒頭:10月)と授業後(最終授業の最後:2013年1月)に調査を実施した。
調査内容: CAVT(下村ら, 2009)を実施した。いずれもアクションとビジョンという2つの下位尺度で構成されており、各6項目5件法である。得点が高いほど,キャリアアクションやキャリアビジョンへの主観的進捗度が望ましい方向にあるように得点化される。調査は授業内に一斉配布し、その場で回収した。

【 結 果 と 考 察 】 CAVTのプロット分析(梅崎・田澤, 2013)を行った。これは,それぞれの下位尺度の理論的中央値である18点を基準に高低を判別し,各個を4象限に分類する手法であり,アクションとビジョンがいずれも高い群はAゾーン,いずれか一方が高い群はBゾーン,いずれも低い群はCゾーンに分類される。
分析1 授業前後におけるCAVTプロットゾーンの度数
授業前の受講生のCAVTプロットと授業後のCAVTプロットを分析し,TABLE1にまとめた。なお,B1ゾーンとは下位尺度のうちアクションが高く,ビジョンが低い群を示し,B2とはその逆である。これはBゾーンについてより詳細に検討するために,本研究において独自に設定した。分析の結果、Aゾーンの割合が約5倍に上昇していることが示された。このことから,授業には何かしらポジティブな影響力があることが示唆される。
分析2 CAVTプロットゾーンの変化に関する分析
つぎに,受講生の授業前後の変化についてCAVTプロットゾーンを分析した(FIGURE1)。
分析の結果,プラス方向への変化が生じた受講生は全体の52.0%であった(TABLE2)。これらの群は刺激によって変化が見込める一般学生の層であると解釈できる。つまり,授業によって変化や成長が起こる可能性があり,キャリア教育のメインターゲットとなりうる学生たちではないだろうか。つぎに,マイナス変化は3%とわずかであった。ただし,わずかであってもこのようにマイナス変化が起こりうるという視点は重要であると考えられる。プロットゾーンに変化がない受講生は31.6%であった。しかし,パターン16についてはキャリア意識上位層の学生であると示唆されるため,その意味するところは別であろう。彼らを除く「変化なし」群の総計は31.6%であり,マイナス変化の学生と合わせて割合は約3人に1人となる。これらの学生は半期の一斉授業のみでは教育効果に限界がある層であることが示唆されるため,継続的かつ複層的な教育や支援が重要であると考えられる。また,変化があった学生のキャリア意識の維持やさらなる向上についても今後の課題であろう。