The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH

(5階ラウンジ)

Sun. Nov 9, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PH032] 理科教員志望学生における説明文読解方略の使用

図やグラフを伴う説明文を素材として

中條和光1, 山根嵩史1, 福屋いずみ1, 田中光1, 有馬比呂志2 (1.広島大学大学院, 2.近畿大学)

Keywords:文章理解, 言語力, 教員養成

新しい学習指導要領では,各教科において言語活動の充実が求められている。理科においては,教科書や資料等に図やグラフ,表のような非連続型テキストを含む“混成型テキスト”が多用されていることから,文章のみのテキストの読解とは異なる読解力の形成が求められると考えられる。
本研究では,理科教員養成の観点から,理科の教科内容の混成型テキストを用い,理科教員を志望する学生とその他の教員志望の学生との比較を通して,理科教員志望学生の文章読解の実態及び読解指導に関する意識について調査を行うことを目的とする。そのために,山根他 (2014, 日本心理学会大会発表予定)の混成型テキストの読解方略尺度により読解中の方略使用を調べる。同尺度は①文章と視覚的情報の統合(“図表と文章がどのように対応しているかを確認した”など),②大局的理解(“説明文のテーマは何か意識した”など),③局所的注意(“繰り返し出てくる専門用語に注意した”など),④読み速度や読み返しのコントロール(“意味を正確に理解できるよう,なるべくゆっくり読んだ”など),⑤視覚的標識化(“文章中の分かりづらい所に印をつけた”など),⑥図式化・イメージ化(“分かりづらいところは図に書き直した”など)の6因子(方略)から構成されている。
方 法
参加者 教員志望大学生273名,大学院生3名。
読解材料 理科の参考書から雲の生成に関する資料 (中村, 2006) を一部改変して用いた。資料は説明の文章と,温度と圧力の関係を表したグラフや雲生成の概念図で構成されていた。
読解方略質問紙 読解方略の測定のため,山根他(2014) の読解方略質問紙を用いた。
手続き 調査は講義後の教室で実施した。参加者は,「後ほど,文章の内容についての質問があります」という教示の後,10分間で読解材料を黙読した。その直後に,読解中にどのような読み方をしたかを55項目の行動リストに5 段階 (1:全く当てはまらない~5:かなり当てはまる) で回答した。その後,項目中から,「あなたが中学生や高校生に理科の教科書等の読み方を指導する上で重要だと考える項目」を最大10項目選択し,順位づけした。
結 果
中学・高校教員免許の取得希望教科を基準に,参加者を理科教員志望(180名)とその他の教員志望(96名)の2群に分けた。
混成型テキストの読み 理科教員志望群とその他の教員志望群について,読解方略質問紙の各因子に含まれる項目の平均評定値を求めた(Table 1)。“文章と視覚的情報の統合”,“大局的理解”,及び“図式化・イメージ化”の因子において理科教員志望群の得点が有意に高いという結果が得られた。
項目の重要度 各参加者によって「理科の教科書等の読み方指導で重要だ」とされた項目に,重要度の順位に基づく重みづけ(10点~1点)を行い重要度得点とした。各項目について両群の平均得点を算出し,それらを因子毎に平均して因子の重要度得点とした(Table 2)。2群間で,因子の重要度得点には大きな違いは見られなかった。
Table 1 取得希望免許別の各因子の平均評定値

Table 2 重要度得点の因子ごとの平均評定値

考 察
理科教員志望群とその他の教員志望群の読解方略使用に違いが見られた。理科教員志望の学生は,文章と図やグラフを統合し,内容を図式化・イメージ化する読み方をしていた。しかし,その一方で,指導における重要度では両群間に大きな差は見られず,自身の読み方との解離が見られた。教員養成では,この解離の解消が課題となるだろう。
引用文献
中村晃三 (2006) 雲と雨の生成の科学 フォトサイエンス物理図鑑, 数研出版, 54-55
山根嵩史・福屋いずみ・田中光・徳岡大・徐芳芳・有馬比呂志・中條和光 (2014) 図表を伴う説明文読解時の読解方略の構造, 日本心理学会第78回大会発表資料(発表予定)