[PH033] 理科授業における教師の授業スタイルが生徒の学習方略と興味に与える影響
Keywords:動機づけ, 理科教育, 学手法略
問題と目的
先行研究において,意味理解を重視した学習方略や学習内容の価値に基づいた興味(楽しいといった感情のみによる興味ではない)が,質の高い学習を導くことが示唆されている。そこで本研究では,理科学習において,どのような教師の日々の授業スタイルが意味理解方略の利用や興味を高めるかについて検討を行った。
予備調査
理科の教師の授業スタイルについて,児童・生徒および教師による自由記述と授業観察から,具体的で幅広い項目を収集した。これらの項目を精選し,1,718名の小学5年生~高校1年生を対象に質問紙調査を行った。探索的因子分析の結果,7因子構造が見いだされた(「意見表出の機会の提供」「身近な現象との関連づけ」「知識同士の関連づけ」「目標と達成度の明確化」「具体物の提示」「自分で考える機会の提供」「生徒に寄り添う」)。また,確認的因子分析を行ったところ,モデルの適合度は高く(CFI=.953, RMSEA=.049),またα係数も総じて許容できる範囲であった(α=.75~.90)。
方法
参加者と手続き
643名の中学1~3年生を対象に,春と冬の2回,理科の学習における学習方略,興味,理科教師の授業スタイルについて質問紙調査を行った。ただし,授業スタイルについては冬のみ測定を行った。
使用尺度
意味理解方略尺度(Time1と2) 市川・堀野・久保(1998)および市原・荒井(2006)を参考に,理科の学習の文脈に合わせて作成した4項目を用いた。
興味尺度(Time1と2) 田中(2012)によって作成された理科に対する興味を測定する尺度を用いた。この尺度は,感情的興味と価値的興味に大きく分かれており,そらにそれぞれが3つの下位尺度を有している。本研究では,3つの下位尺度得点の平均をとった値をそれぞれ分析に用いた。
教師の授業スタイル尺度(Time2のみ) 予備調査で作成されてた尺度を用いた。
結果
興味と授業スタイルが学習方略に与える影響
興味と授業スタイルが学習方略の変化に与える影響について検討するため,「意味理解方略(Time2)」を従属変数とした階層的重回帰分析を行った。Step1では,独立変数として「意味理解方略(Time1)を,Step2では,「感情的興味(Time1)」「価値的興味(Time1)」を,Step3では授業スタイルの7つの因子を投入した。Step1からStep2では,R2の値が有意に高まった(F(2, 635) = 8.17, p < .05)。「感情的興味(Time1)」の標準偏回帰係数は有意でなかったが,「価値的興味(Time1)」では.25の有意な値が得られた。また,Step2からStep3においても,R2の値が有意に高まり(F(7, 628) = 29.00, p < .05),「身近な現象との関連づけ」「知識同士の関連づけ」「自分で考える機会の提供」において正の関連が見られた。
学習方略と授業スタイルが興味に与える影響
感情的興味を従属変数とした階層的重回帰分析の結果の詳細は,紙面の都合上割愛する。価値的興味や意味理解方略との関連は見られず,「身近な現象との関連づけ」「目標と達成度の明確化」「具体物の提示」「自分で考える機会の提供」において有意な正の関連が見られた。
さらに,「価値的興味(Time2)」を従属変数とした階層的重回帰分析を行った。Step1では,独立変数として「価値的興味(Time1)を,Step2では「感情的興味(Time1)」を,Step3では「意味理解方略(Time1)」を,Step4では授業スタイルの7つの因子を投入した。結果,Step1から2ではR2の変化は有意ではなかったが,Step2からStep3では有意な変化が見られ(F(1, 636) = 5.70, p < .05),意味理解方略の標準偏回帰係数は.12で有為だった。Step3からStep4においてもR2の変化は有意であり(F(7, 629) = 41.06, p < .05),「身近な現象との関連づけ」「知識同士の関連づけ」「自分で考える機会の提供」において正の関連が見られた。
考察
意味理解方略と価値的興味には互恵的な関連が見られ,両者は同じ3つの種類の授業スタイルと正の関連が見られた。すなわち,学習内容を既習事項や身近な内容と関連づけたり,生徒自身で考える時間を十分にあたえることで,生徒の意味理解方略の利用と価値的興味を高められることが示唆された。
先行研究において,意味理解を重視した学習方略や学習内容の価値に基づいた興味(楽しいといった感情のみによる興味ではない)が,質の高い学習を導くことが示唆されている。そこで本研究では,理科学習において,どのような教師の日々の授業スタイルが意味理解方略の利用や興味を高めるかについて検討を行った。
予備調査
理科の教師の授業スタイルについて,児童・生徒および教師による自由記述と授業観察から,具体的で幅広い項目を収集した。これらの項目を精選し,1,718名の小学5年生~高校1年生を対象に質問紙調査を行った。探索的因子分析の結果,7因子構造が見いだされた(「意見表出の機会の提供」「身近な現象との関連づけ」「知識同士の関連づけ」「目標と達成度の明確化」「具体物の提示」「自分で考える機会の提供」「生徒に寄り添う」)。また,確認的因子分析を行ったところ,モデルの適合度は高く(CFI=.953, RMSEA=.049),またα係数も総じて許容できる範囲であった(α=.75~.90)。
方法
参加者と手続き
643名の中学1~3年生を対象に,春と冬の2回,理科の学習における学習方略,興味,理科教師の授業スタイルについて質問紙調査を行った。ただし,授業スタイルについては冬のみ測定を行った。
使用尺度
意味理解方略尺度(Time1と2) 市川・堀野・久保(1998)および市原・荒井(2006)を参考に,理科の学習の文脈に合わせて作成した4項目を用いた。
興味尺度(Time1と2) 田中(2012)によって作成された理科に対する興味を測定する尺度を用いた。この尺度は,感情的興味と価値的興味に大きく分かれており,そらにそれぞれが3つの下位尺度を有している。本研究では,3つの下位尺度得点の平均をとった値をそれぞれ分析に用いた。
教師の授業スタイル尺度(Time2のみ) 予備調査で作成されてた尺度を用いた。
結果
興味と授業スタイルが学習方略に与える影響
興味と授業スタイルが学習方略の変化に与える影響について検討するため,「意味理解方略(Time2)」を従属変数とした階層的重回帰分析を行った。Step1では,独立変数として「意味理解方略(Time1)を,Step2では,「感情的興味(Time1)」「価値的興味(Time1)」を,Step3では授業スタイルの7つの因子を投入した。Step1からStep2では,R2の値が有意に高まった(F(2, 635) = 8.17, p < .05)。「感情的興味(Time1)」の標準偏回帰係数は有意でなかったが,「価値的興味(Time1)」では.25の有意な値が得られた。また,Step2からStep3においても,R2の値が有意に高まり(F(7, 628) = 29.00, p < .05),「身近な現象との関連づけ」「知識同士の関連づけ」「自分で考える機会の提供」において正の関連が見られた。
学習方略と授業スタイルが興味に与える影響
感情的興味を従属変数とした階層的重回帰分析の結果の詳細は,紙面の都合上割愛する。価値的興味や意味理解方略との関連は見られず,「身近な現象との関連づけ」「目標と達成度の明確化」「具体物の提示」「自分で考える機会の提供」において有意な正の関連が見られた。
さらに,「価値的興味(Time2)」を従属変数とした階層的重回帰分析を行った。Step1では,独立変数として「価値的興味(Time1)を,Step2では「感情的興味(Time1)」を,Step3では「意味理解方略(Time1)」を,Step4では授業スタイルの7つの因子を投入した。結果,Step1から2ではR2の変化は有意ではなかったが,Step2からStep3では有意な変化が見られ(F(1, 636) = 5.70, p < .05),意味理解方略の標準偏回帰係数は.12で有為だった。Step3からStep4においてもR2の変化は有意であり(F(7, 629) = 41.06, p < .05),「身近な現象との関連づけ」「知識同士の関連づけ」「自分で考える機会の提供」において正の関連が見られた。
考察
意味理解方略と価値的興味には互恵的な関連が見られ,両者は同じ3つの種類の授業スタイルと正の関連が見られた。すなわち,学習内容を既習事項や身近な内容と関連づけたり,生徒自身で考える時間を十分にあたえることで,生徒の意味理解方略の利用と価値的興味を高められることが示唆された。