[PH042] 小学校・中学校の教師を対象とした子どもの感謝行動に関する実態調査
Keywords:感謝行動, 子ども, 教師
1.目的
文部科学省(2008)の小学校学習指導要領解説道徳編および小学校学習指導要領解説特別活動編においては、感謝の心情を育てることが目標の一つとして明記されている。また、文部科学省は平成20年に中学校における道徳教育の内容改訂を行い、「多くの人々の善意や支えにより,日々の生活や現在の自分があることに感謝し,それにこたえる」という項目を新設した。このように、義務教育では、感謝の心情を継続的に育みながら、子どもの対人関係を充実させていくことが目標とされている。しかし、学校場面での子どもの感謝行動の実態は解明されていない。本研究では質問紙調査を通じてこの課題に取り組んだ。
2.方法
対象:千葉県と茨城県の公立小・中学校の教師。実施時期と場所:調査は平成24年に教育委員会が主催した研修会の場で行われた。
倫理的配慮:回答者に「アンケートの内容を他者に見せることはありません。回答は無記名で結構です。ご協力頂ける場合は、アンケートへの回答をお願いします。」と説明し同意を得た。
質問項目:
問1:子どもの実態を把握するために3つの質問をした。①「日ごろから感謝行動ができている子どもの割合(%)を教えてください」と尋ねた。②感謝行動の性差を尋ね、男子の方ができている、女子の方ができている、両方できている、両方できていないから一つを選択させた。③自由記述法で子どもの感謝行動と仲間関係について尋ねた。
問2:感謝行動に関する教育実践を尋ねた。①「学校生活で子どもに感謝行動を教えていますか?」と質問し「ほとんどしていない」から「よくしている」の4件法で回答させた。②自由記述法にて、具体的な教育内容を回答させた。
問3:感謝行動を教育する必要性について尋ねた。①「学校教育のなかで子どもに感謝行動を教える必要性はあると思いますか?」と質問し「まったく思わない」から「とても思う」の4件法で回答させた。②その理由を自由記述法にて回答させた。
問4:子どもに感謝行動を教えることへの賛否を尋ね、「ぜんぜん賛成ではない」から「とても賛成である」の4件法で回答させた。
問5:子どもの感謝行動に関して、感想や意見を自由記述法で書かせた。
3.結果と考察
分析対象:小・中学校の教師72名分の結果が得られた。その中から、担任をしている小学校教師28名(男性10名、女性18名)、中学校教師17名(男性7名、女性10名)を分析対象とした。担任教師に限定したのは子どもを観察したり関わる機会が多く、子どもの実態をより把握しているからである。
問1:①は小学生56.07%(24.55)、中学生54.41%(22.21)であり、両者に有意差は無かった(t(43)=0.23, n.s.)。②の結果を表1に示した。度数間に差は無かった(χ2(3)=0.60, n.s.)。③の結果は、学校種、学年を問わず「日常的に感謝の行動ができている子どもはもめたり、トラブルになることが非常に少ない」という回答が多かった。
問2:①は、小学校教師3.21(0.79)、中学校教師2.88(0.60)であり有意な差は無かった(t(43)=1.49, n.s.)。②では「教師がありがとうを言うように心がけている(モデリング型)」「プリントを配る時などにありがとうを言うように指導している(教示型)」「子どもがお礼を言った時など、その行動を誉める(強化型)」など様々な方法で教育していることが分かった。
問3:①は、小学校教師4.00(0.00)、中学校教師3.65(0.86)であり、小学校の教師は中学校の教師よりも感謝行動を教える必要性を感じていた(t(43)=2.18, p<.05)。小学校教師の平均値は満点であり、かなり強く感じていることが分かる。②では「良い人間関係を築く上で感謝は不可欠」などの回答があった。
問4:①は、小学校教師4.00(0.00)、中学校教師3.76(0.56)であり、小学校の教師は中学校の教師よりも感謝行動を教えることに賛成と考えていた(t(43)=2.23, p<.05)。問3と同様に、小学校教師は満点であった。②では「感謝を言葉で伝えられないと、トラブルになる」などの意見があった。
問5:小・中学校の教師は感謝行動を生きていく上で大切なものと捉えていた。
文部科学省(2008)の小学校学習指導要領解説道徳編および小学校学習指導要領解説特別活動編においては、感謝の心情を育てることが目標の一つとして明記されている。また、文部科学省は平成20年に中学校における道徳教育の内容改訂を行い、「多くの人々の善意や支えにより,日々の生活や現在の自分があることに感謝し,それにこたえる」という項目を新設した。このように、義務教育では、感謝の心情を継続的に育みながら、子どもの対人関係を充実させていくことが目標とされている。しかし、学校場面での子どもの感謝行動の実態は解明されていない。本研究では質問紙調査を通じてこの課題に取り組んだ。
2.方法
対象:千葉県と茨城県の公立小・中学校の教師。実施時期と場所:調査は平成24年に教育委員会が主催した研修会の場で行われた。
倫理的配慮:回答者に「アンケートの内容を他者に見せることはありません。回答は無記名で結構です。ご協力頂ける場合は、アンケートへの回答をお願いします。」と説明し同意を得た。
質問項目:
問1:子どもの実態を把握するために3つの質問をした。①「日ごろから感謝行動ができている子どもの割合(%)を教えてください」と尋ねた。②感謝行動の性差を尋ね、男子の方ができている、女子の方ができている、両方できている、両方できていないから一つを選択させた。③自由記述法で子どもの感謝行動と仲間関係について尋ねた。
問2:感謝行動に関する教育実践を尋ねた。①「学校生活で子どもに感謝行動を教えていますか?」と質問し「ほとんどしていない」から「よくしている」の4件法で回答させた。②自由記述法にて、具体的な教育内容を回答させた。
問3:感謝行動を教育する必要性について尋ねた。①「学校教育のなかで子どもに感謝行動を教える必要性はあると思いますか?」と質問し「まったく思わない」から「とても思う」の4件法で回答させた。②その理由を自由記述法にて回答させた。
問4:子どもに感謝行動を教えることへの賛否を尋ね、「ぜんぜん賛成ではない」から「とても賛成である」の4件法で回答させた。
問5:子どもの感謝行動に関して、感想や意見を自由記述法で書かせた。
3.結果と考察
分析対象:小・中学校の教師72名分の結果が得られた。その中から、担任をしている小学校教師28名(男性10名、女性18名)、中学校教師17名(男性7名、女性10名)を分析対象とした。担任教師に限定したのは子どもを観察したり関わる機会が多く、子どもの実態をより把握しているからである。
問1:①は小学生56.07%(24.55)、中学生54.41%(22.21)であり、両者に有意差は無かった(t(43)=0.23, n.s.)。②の結果を表1に示した。度数間に差は無かった(χ2(3)=0.60, n.s.)。③の結果は、学校種、学年を問わず「日常的に感謝の行動ができている子どもはもめたり、トラブルになることが非常に少ない」という回答が多かった。
問2:①は、小学校教師3.21(0.79)、中学校教師2.88(0.60)であり有意な差は無かった(t(43)=1.49, n.s.)。②では「教師がありがとうを言うように心がけている(モデリング型)」「プリントを配る時などにありがとうを言うように指導している(教示型)」「子どもがお礼を言った時など、その行動を誉める(強化型)」など様々な方法で教育していることが分かった。
問3:①は、小学校教師4.00(0.00)、中学校教師3.65(0.86)であり、小学校の教師は中学校の教師よりも感謝行動を教える必要性を感じていた(t(43)=2.18, p<.05)。小学校教師の平均値は満点であり、かなり強く感じていることが分かる。②では「良い人間関係を築く上で感謝は不可欠」などの回答があった。
問4:①は、小学校教師4.00(0.00)、中学校教師3.76(0.56)であり、小学校の教師は中学校の教師よりも感謝行動を教えることに賛成と考えていた(t(43)=2.23, p<.05)。問3と同様に、小学校教師は満点であった。②では「感謝を言葉で伝えられないと、トラブルになる」などの意見があった。
問5:小・中学校の教師は感謝行動を生きていく上で大切なものと捉えていた。