The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH

(5階ラウンジ)

Sun. Nov 9, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PH047] 大学生の世代間コミュニケーションに関する研究

コミュニケーションの自信との関係に着目して

渡辺由己 (吉備国際大学)

Keywords:大学生, 世代間コミュニケーション, 自信

1.問題と目的
地域の解体,核家族化やきょうだい数の減少等により若者が異世代の人々と交流する機会が減っているように思われる。また同世代での交流においても,心理的傷つきあるいは傷つけへの回避として浅薄化しているとの指摘もある。一方,メールやSNSなどを通した交流は日常化し,異世代,同世代に関わらずある程度踏み込んだ関係形成も可能なはずである。本研究では,大学生が同世代・異世代とのコミュニケーションを取る際に感じる影響要因を明らかにし,さらにコミュニケーションに対する自信との関連を検討する。
2.方法
(1)世代間コミュニケーションに関する自由記述調査:「小学生」「中学生」「高校生」「20歳代後半」「30歳代~40歳代」「50歳代~60歳代」「70歳代以上」の各世代と初対面から関係形成する場合に,コミュニケーション上気にすること,やれそうなことについて自由記述を求めた。調査対象者は大学生48名(年齢範囲19歳~23歳)であった。
(2)コミュニケーションに対する自信と,世代間コミュニケーションにおける影響要因との関係を調べる質問紙調査:調査対象者 大学生83名(男性51名,女性32名,年齢範囲18歳~22歳,平均19.00歳),質問紙の構成 ①コミュニケーションに関する自信尺度(以下SCS尺度,畑野,2010),「意図伝達の自信」「意図抑制の自信」「意図理解の自信」の3下位因子9項目合計27項目。本研究では「まったく当てはまらない」から「かなり当てはまる」までの5件法で評定を求めた。②世代間コミュニケーションにおける影響度を問う項目,(1)で収集した自由記述データを,世代に共通する分類基準の観点から分析し「興味・関心の異同」「相手に固有の性格」「考えや感情の疎通性」「世代に固有のイメージ」の4分類を得た。各分類を代表する項目を世代ごとに1項目ずつ作成し,初対面から関係形成する上で影響する程度について「まったく影響しない」から「極めて影響する」までの7件法で回答を求めた。なお、世代の分類については自由記述内容の共通性から「小・中学生」(かなり年下世代),「高校生~20歳代前半」(同世代およびその周辺),「30歳代~50歳代」(かなり年上世代),「60歳代以上」(向老から高齢者世代)の4世代に分類し直し実施した。
3.結果
(1)自由記述調査の内容分析:記述された内容を,世代を超えて共通する視点から分類をおこなった。その結果,「知っているアニメがあるかどうか」(小学生),「サッカーをする子なら関係作りがしやすい」(中学生),「話題についていけるか不安」(50歳代~60歳代)」など,興味・関心の異同に関する記述,「大人しい子だと難しそう」(小学生),「気難しい人かどうか心配」(30歳代~40歳代)など,個人の性格特性に関する記述,「子どもは態度に出やすいので考えていることや気持ちが判断しやすい」(小学生),「多感なので何を考えているか分かりにくい」(中学生)など,考えや感情の疎通性に関する記述,「礼儀やルールを大切にするので気をつける」(70歳代)など,世代に固有のイメージに起因する記述,の4つに分類可能であった。
(2)SCS尺度得点と世代間コミュニケーションにおける影響要因の分析:SCS尺度下位因子のα係数は.734~.817であり,内的整合性は安定していた。下位因子得点および尺度得点について男性と女性の平均値に差があるか調べるためt検定を実施したところ,いずれも有意差は認められなかった。SCS尺度得点は平均88.8点(SD=13.59)であり,49点~117点の範囲に分布していた。分布形状は正規分布に近いものであったため,平均値を基準として得点低群と得点高群の2群に分け,世代間コミュニケーションにおける影響度を評定する項目(4世代×4項目=16項目)の各平均値への群の効果を検討した。その結果,高校生~20歳代前半における「興味・関心の異同」のみ群の主効果が有意となった(得点低群3.78(SD=1.77),得点高群4.88(SD=1.78),F(1,80)=7.858,p<.01)。
4.考察
自由記述の結果から,世代間での理解や疎通性の有無,世代固有の特徴と個人的特徴が,関係形成上留意される事が示唆された。コミュニケーションに対する自信との関わりは同世代やその近縁世代でのみ示されたが、例えば高坂(2010)が異質拒否傾向は青年期を通して変化が少なかったことを示していることから,同世代の興味・関心が同質であることが重要であると、コミュニケーションに長けた者には認識されたためかもしれない。