The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH

(5階ラウンジ)

Sun. Nov 9, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PH052] アイデンティティの感覚における構造の検討

両因子モデルを用いた検討

畑野快1, 杉村和美2 (1.日本学術振興会, 2.広島大学)

Keywords:アイデンティティ, 青年期, 発達

問題と目的
アイデンティティとは自分が内部に連続性と斉一性の間隔を持つと同時に,他者がそれを認めてくれるという自信である(Erikson,1968)。アイデンティティが統合されている状態は,自尊心や自己の明確性が高いなど心理的な適応感が高く,逆に混乱している状態は,抑うつや問題行動などの内在的・外在的な問題行動と関連する(Crocetti et al., 2008; Luyckx et al., 2008; Schwartz, 2007)。これまで,アイデンティティは統合と混乱を両極とする一次元的連続体として捉えられ,測定されてきた(例えばRasmussen, 1961など)。しかしながら,本来統合には幾分かの混乱を含むとするEriksonの発達理論からすると,両者を個別に捉えるのではなく,そのバランスからアイデンティティを捉え,実証的検討を行っていく必要がある。そして統合,混乱のバランスからアイデンティティを捉えるためには両因子モデル(bifactor model; Chen, 2006; Reise et al., 2007)が妥当であることが指摘されている(Schwartz et al., 2009)。そこで本研究では, 1因子モデル,2因子モデルと両因子モデルとの比較を通して,我が国においても青年期を通して両因子モデルが妥当なのかどうかを検討することを目的とした。
方法
調査参加者 13-14,16-17,19-20歳の青年,合計1236名であった。それぞれの年齢群を青年期前期,中期,後期として分類した。調査内容 エリクソン心理社会的段階目録(第5段階)項目(畑野ほか, 印刷中; 以下 EPSI (5th)と略記):統合(6項目),混乱(6項目)の合計12項目を使用した(5件法)。調査時期及び手続き 2013年11~12月にオンライン調査を実施した。
結果と考察
EPSI(5th)の統合と混乱の両側面の特徴を考慮した上でアイデンティティの感覚を捉えるため,確認的因子分析を行った。適合度の指標には,GFI,CFI,TLI,SRMR,RMSEA, AICを用いた。GFI,CFI,TLIはその値が1.00に近いほど,SRMR,RMSEAは0.00に近いほどデータとモデルが適合していること(Hancock & Freeman, 2001; Kline, 2006),AICが小さいモデルがより望ましいとされる(土屋・室田,2007)。それぞれのモデルの適合度指標を確認したところ,1因子よりも2因子,2因子よりも両因子モデルの適合度が望ましい結果を示していた(Table 1)。さらに青年期を通して両因子モデルが妥当であることを確認するために,多母集団同時分析を行った。群間の等質性を確認するために,“群間で等値制約を課さないモデル”と“全てのパス係数に等値制約を課すモデル”を作成し,モデル適合度の比較を行った。Table 1は両者のモデルの適合度に大きな差が見られないことを示していた。これらの結果は,EPSI(5th)が青年期を通して両因子モデルで用いられることが妥当である可能性を強く示唆する。