[PH053] 看護学生のコミュニケーション技術の変化の検討(2)
自己効力感,看護における個人目標の影響
Keywords:コミュニケーション技術, 看護学生
目 的
井内・籔内・田中(2012)は,看護学生の1年次から2年次のコミュニケーション技術について,学生は患者の話を傾聴し(コミュニケーション基本技術),患者が表わす感情や態度に的確に対応する(クライエントの感情の明確化)能力が向上していたことを報告している。本調査では,3年次にかけてどのような変化があるか,また1年次の動機づけ要因として,自己効力感,看護における個人目標がコミュニケーション技術の変化にどのような影響を与えているかを検討する。
方 法
調査対象 大阪府内の私立A短期大学看護学科27名
調査時期 2010年12月(1年次),2012年2月(2年次),2013年1月(3年次)に実施
質問紙 ①上野(2004)のコミュニケーション技術評価スケール「コミュニケーション基本技術」(13項目),「非言語的コミュニケーション技術」(3項目),「クライエントの感情の明確化」(3項目)について5件法で回答を求めた。②坂野・東條(1986)の一般性セルフ・エフィカシー尺度の「行動の積極性」(7項目),「失敗に対する不安(得点が高いほど,失敗や不安を感じにくい)」(5項目),「能力の社会的位置づけ」(4項目)についてYes,Noで回答を求めた。③看護における個人目標を2つ自由記述として(1)目標の遠隔性(vs.近接性),(2)目標の困難性(vs.容易性),(3)目標の接近性(vs.回避性)について10cmのスケール(1cmは1点の10点満点)に印を入れる方式で回答を求めた。
結 果 と 考 察
看護コミュニケーション技術の3つの下位尺度の平均値をTable1に示す。学年差を1要因の分散分析によって検討した結果,看護コミュニケーション技術の「コミュニケーション基本技術」に有意な差が認められ,1年次に比べて3年次の得点が有意に高かった(F(2,52)=5.41, p<.01)。次に「クライエントの感情の明確化」に有意な差が認められ,1年次に比べて2年次の得点が有意に高かった(F(2,52)=4.12, p<.05)。
さらに,コミュニケーション技術の変化の原因を探るために,1年次のコミュニケーション技術の「コミュニケーション基本技術」および「クライエントの感情の明確化」,自己効力感の「行動の積極性」,「失敗に対する不安」,「能力の社会的位置づけ」,看護における個人目標の「目標の遠隔性(vs.近接性)」,「目標の困難性(vs.容易性)」,「目標の接近性(vs.回避性)」を説明変数,3年次の「コミュニケーション基本技術」および2年次の「クライエントの感情の明確化」を目的変数とした重回帰分析(強制投入法)を行った。重回帰分析の結果をFigure1に示す。
その結果,1年次の「コミュニケーション基本技術」と「クライエントの感情の明確化」に加えて「失敗に対する不安」が正の影響を与えていた。
結果から,患者の話を傾聴して共感することや信頼関係を築く能力の向上には,遂行行動における不安が低いという点での自己効力感をもつことが重要であることがわかった。
井内・籔内・田中(2012)は,看護学生の1年次から2年次のコミュニケーション技術について,学生は患者の話を傾聴し(コミュニケーション基本技術),患者が表わす感情や態度に的確に対応する(クライエントの感情の明確化)能力が向上していたことを報告している。本調査では,3年次にかけてどのような変化があるか,また1年次の動機づけ要因として,自己効力感,看護における個人目標がコミュニケーション技術の変化にどのような影響を与えているかを検討する。
方 法
調査対象 大阪府内の私立A短期大学看護学科27名
調査時期 2010年12月(1年次),2012年2月(2年次),2013年1月(3年次)に実施
質問紙 ①上野(2004)のコミュニケーション技術評価スケール「コミュニケーション基本技術」(13項目),「非言語的コミュニケーション技術」(3項目),「クライエントの感情の明確化」(3項目)について5件法で回答を求めた。②坂野・東條(1986)の一般性セルフ・エフィカシー尺度の「行動の積極性」(7項目),「失敗に対する不安(得点が高いほど,失敗や不安を感じにくい)」(5項目),「能力の社会的位置づけ」(4項目)についてYes,Noで回答を求めた。③看護における個人目標を2つ自由記述として(1)目標の遠隔性(vs.近接性),(2)目標の困難性(vs.容易性),(3)目標の接近性(vs.回避性)について10cmのスケール(1cmは1点の10点満点)に印を入れる方式で回答を求めた。
結 果 と 考 察
看護コミュニケーション技術の3つの下位尺度の平均値をTable1に示す。学年差を1要因の分散分析によって検討した結果,看護コミュニケーション技術の「コミュニケーション基本技術」に有意な差が認められ,1年次に比べて3年次の得点が有意に高かった(F(2,52)=5.41, p<.01)。次に「クライエントの感情の明確化」に有意な差が認められ,1年次に比べて2年次の得点が有意に高かった(F(2,52)=4.12, p<.05)。
さらに,コミュニケーション技術の変化の原因を探るために,1年次のコミュニケーション技術の「コミュニケーション基本技術」および「クライエントの感情の明確化」,自己効力感の「行動の積極性」,「失敗に対する不安」,「能力の社会的位置づけ」,看護における個人目標の「目標の遠隔性(vs.近接性)」,「目標の困難性(vs.容易性)」,「目標の接近性(vs.回避性)」を説明変数,3年次の「コミュニケーション基本技術」および2年次の「クライエントの感情の明確化」を目的変数とした重回帰分析(強制投入法)を行った。重回帰分析の結果をFigure1に示す。
その結果,1年次の「コミュニケーション基本技術」と「クライエントの感情の明確化」に加えて「失敗に対する不安」が正の影響を与えていた。
結果から,患者の話を傾聴して共感することや信頼関係を築く能力の向上には,遂行行動における不安が低いという点での自己効力感をもつことが重要であることがわかった。