The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH

(5階ラウンジ)

Sun. Nov 9, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PH058] 社会的クリティカルシンキングと首尾一貫感覚の関連

コミュニケーションスキルの視点から

磯和壮太朗1, 南学2 (1.三重大学大学院, 2.三重大学)

Keywords:社会的クリティカルシンキング, 首尾一貫感覚, コミュニケーションスキル

【問題と目的】
一人一人が自立し,安定した人格を備えた上で,他者と協働しつつ人生を有意義に生きていくには,どのような力を身につければよいのだろうか? その候補として,クリティカルシンキング(以下クリシン)と首尾一貫感覚(Sense of coherence:SOC)が挙げられる。
本邦においても,クリシン教育の重要性が語られるようになって久しい。近年では,楠見(2011)
がクリシンを日常生活から職業生活,学問にわたって応用可能なジェネリックスキルとして位置づ
けている。また,廣岡ら(2001)は,クリシンは単なる認知能力・論理的問題解決だけではなく,日
常生活における社会的なかしこさ(socialintelligence)にも関連するとし,他者の存在を想
定した場面におけるクリシン(社会的クリシン)の重要性を唱えている。自立的・協働的に有意義
に生きていく際,社会的クリシンは有効だろう。
人生を有意義に生きていくためには,健康は不可欠な要素と考えられる。A.Antonovsky によって,ストレス対処能力として提唱されたSOC は,看護学や医療社会学の分野を中心に知見が蓄積されており,いずれの研究でもQOL や主観的・客観的な健康と高い関連が見られている(山崎, 2010)。
SOC は,一貫性,バランスのとれた負荷,結果の形成への参加などの人生経験の質から形成され,ストレスの対処に成功した際に強化されると考えられている(アントノフスキー:山崎・吉井監訳, 2001)。日頃から社会的クリシンを意識して生活することにより,うまくストレスを処理する経験が増え,SOC の形成・強化の要因となるのではないだろうか。つまり,社会的クリシンを通してSOC が育まれる可能性がある。
以上を検討する際に,介在要因としてコミュニケーションスキル(以下CS)を取り上げる。社会的クリシンを用いてストレス処理をする際,周囲とうまくコミュニケーションを取ることは必要不可欠と考えるからである。本研究では,社会的クリシンとSOC の関連を,CSの視点から検討する。
【方法】
調査時期 2014 年4 月上旬
対象者 M 大学生 235 名(男性122 名・女性113 名)
調査内容(本稿で報告しないものは省略)
全て7 件法の尺度を使用した。
1.社会的クリシンを測定する尺度として,志向性は中西ら(2006)の社会的クリティカルシンキング志向性尺度(27 項目・7 因子)を用いた。また,上記の尺度を参考に,各因子につき1 項目ずつ,適応的に社会生活を営むためにどの程度有効だと思うか(有効性認知)と,どれくらいできると思うか(能力自己認知)を尋ねる項目を作成し,使用した。
2.CS を測定する尺度として,藤本・大坊(2007)で使用されたENDCOREs 尺度24 項目を用いた。
3.SOC を測定する尺度として,人生に対する志向性尺度の13 項目版(アントノフスキー:山崎・吉井監訳, 2001)を用いた。
【結果と考察】
α係数,記述統計量,相関係数をTable1 に示す。なお,Iは社会的クリシン志向性,II はCS,III はSOC,IV は社会的クリシン能力自己認知,V は社会的クリシン有効性認知を表す。
各尺度について先行研究の分類に従い,下位因子ごとにα係数を算出した。その結果,社会的クリシン志向性の下位因子の多くとSOC の下位因子のα係数は .70 以下の値を示しており,信頼性が低かった。
社会的クリシン志向性は,南(2008)でも5 因子解が得られていることから,再検討の余地があるだろう。社会的クリシン志向性と有効性認知は平均値が高く、CS やSOC とは相関がないか弱い相関しか示さなかったのに対し、能力自己認知は比較的平均値が低く,CS,SOC とそれぞれ中程度の相関を示していた。CS やSOC を高めるには社会的クリシンへの効力感が肝要である可能性,社会的クリシンの重要性認識に比べて,学生の効力感は低めであることが見出された。社会的クリシンの効力感にアプローチすることがCSやSOC 形成に重要である可能性が示唆された。
また,CS とSOC との間に中程度の相関が見出されたことから,SOC は適切なコミュニケーションへの自信を通して育まれる可能性が示唆された。