[PH065] 幼児における描画構成の発達2
認知的要因との因果性について
Keywords:幼児, 描画, 認知
【問題と目的】 幼児の描画は対象の特徴が最も良く分かる向きで(標準型)で描かれ易い。ところが,幼児期後半になると状況に応じて対象の特殊な向き(非標準型)についても描けるようになる。このメカニズムとして,本研究は描画構成の発達が関与する可能性に着目した。すなわち,(1)描く大きさと位置の空間配置を考慮するようになることと,(2)非標準型を志向するために本来優勢な標準型の反応を抑制する側面が関連することが推察される。以上より,非標準型の描画構成に関わる認知要因として,大きさと位置を捉える空間認知と標準型に対する反応の抑制との関連を確認し(実験Ⅰ),それらの認知の向上が非標準型の構成を促すか否かを検討する(実験Ⅱ)。
【実 験Ⅰ】 参加児:4歳児18名(平均4歳5ヶ月),5歳児20名(平均5歳9ヶ月),6歳児20名(平均6歳8ヶ月)。描画課題:描画対象として,地面に立つ人と雪だるま,ウサギの後ろ姿を用い,用紙には円と線を予め記した(図1)。人と雪だるまは描かれ易いパターン化した「標準型」,ウサギの後ろ姿は通常描かれ難い「非標準型」と見なせる。用紙上の線は地面として認識され易いと予想されるが,円と線の布置を見ると,標準型では適切に描けない。つまり(1)紙面に描く大きさと位置の空間配置が認識され(2)標準型への反応が抑制された場合にウサギの後ろ姿が描かれると推定できる。手続きとして,3つの対象を提示しながら用紙を渡し,いずれかの対象と同じになるように円と線を予め描いたことを伝え,続きが同じように描けると思うもの1つ選んで描くよう教示した。空間認知課題:PC画面上方の円刺激が画面下方の格子(3×3)上のどの位置にあり,どれ位の大きさか(3択)を指さして選択する。1試行正答につき1点を与えた(16点満点)。標準型の抑制課題:PC画面上の標準型(e.g., 横向きの魚)と非標準型(e.g., 正面向きの魚)の刺激のいずれかをルールに従って指さす。例えば,魚は横向きの見え(標準型)と連合し易いと思われるが,ここでは「魚」と言語で指示された際は標準型への反応を抑制し,正面向きの魚(非標準型)を指さす。一方,刺激の色(赤/黄/青)が指示されたら標準型を指さす。刺激は魚,船,車の3種類をランダム提示し,抑制が求められる試行のみ,1試行正答につき1点を与えた(8点満点)。
【結果と考察】 描画課題で非標準型を描いた割合は4歳児0%,5歳児35%,6歳児75%であった。そして,非標準型を描いた全員(5・6歳)が空間認知12点以上かつ抑制4点以上の得点範囲に分布した。このことから描画構成の発達と空間認知および標準型の抑制との関連が確認された。
【実 験Ⅱ】 参加児:実験Ⅰで標準型を描いた4歳児18名(平均4歳5ヶ月),5歳児13名(平均5歳7ヶ月),6歳児5名(平均6歳9ヶ月)。空間認知の訓練:(1)位置のみ(2)大きさのみの判断(各6試行)を行い(3)位置と大きさの両者への判断(6試行)を行う。判断の正誤については常にフィードバックを与える。抑制の訓練:(1)標準型への反応の連合を切り離す訓練を行う(6試行)。例えば,標準型(e.g., 横向きの電車)が単独で提示され,名称(電車)が指示された場合は指をささない。(2)非標準型と標準型の2つを6秒提示し,その状況下で適切な反応形成を促す(6試行)。例えば,名称(e.g., 長靴)が指示された場合は非標準型(正面向きの長靴)を指さし,色(e.g., 赤)が指示された場合は標準型(横向きの長靴)を指さす。(3)(2)の内容で刺激を3秒提示する(6試行)。反応の正誤については常にフィードバックを与える。訓練期間:上記の訓練課題を2週間で4回行い,訓練終了1週間後に実験Ⅰと同様の描画課題と認知課題を行った。
【結果と考察】 5・6歳児18名中12名(67%)が訓練後に非標準型を描き,空間認知12点以上かつ抑制4点以上の範囲に分布した(図2)。一方,4歳児で非標準型を描いた者は皆無だった。以上の結果は,描画構成と認知の因果性を示唆する。
【実 験Ⅰ】 参加児:4歳児18名(平均4歳5ヶ月),5歳児20名(平均5歳9ヶ月),6歳児20名(平均6歳8ヶ月)。描画課題:描画対象として,地面に立つ人と雪だるま,ウサギの後ろ姿を用い,用紙には円と線を予め記した(図1)。人と雪だるまは描かれ易いパターン化した「標準型」,ウサギの後ろ姿は通常描かれ難い「非標準型」と見なせる。用紙上の線は地面として認識され易いと予想されるが,円と線の布置を見ると,標準型では適切に描けない。つまり(1)紙面に描く大きさと位置の空間配置が認識され(2)標準型への反応が抑制された場合にウサギの後ろ姿が描かれると推定できる。手続きとして,3つの対象を提示しながら用紙を渡し,いずれかの対象と同じになるように円と線を予め描いたことを伝え,続きが同じように描けると思うもの1つ選んで描くよう教示した。空間認知課題:PC画面上方の円刺激が画面下方の格子(3×3)上のどの位置にあり,どれ位の大きさか(3択)を指さして選択する。1試行正答につき1点を与えた(16点満点)。標準型の抑制課題:PC画面上の標準型(e.g., 横向きの魚)と非標準型(e.g., 正面向きの魚)の刺激のいずれかをルールに従って指さす。例えば,魚は横向きの見え(標準型)と連合し易いと思われるが,ここでは「魚」と言語で指示された際は標準型への反応を抑制し,正面向きの魚(非標準型)を指さす。一方,刺激の色(赤/黄/青)が指示されたら標準型を指さす。刺激は魚,船,車の3種類をランダム提示し,抑制が求められる試行のみ,1試行正答につき1点を与えた(8点満点)。
【結果と考察】 描画課題で非標準型を描いた割合は4歳児0%,5歳児35%,6歳児75%であった。そして,非標準型を描いた全員(5・6歳)が空間認知12点以上かつ抑制4点以上の得点範囲に分布した。このことから描画構成の発達と空間認知および標準型の抑制との関連が確認された。
【実 験Ⅱ】 参加児:実験Ⅰで標準型を描いた4歳児18名(平均4歳5ヶ月),5歳児13名(平均5歳7ヶ月),6歳児5名(平均6歳9ヶ月)。空間認知の訓練:(1)位置のみ(2)大きさのみの判断(各6試行)を行い(3)位置と大きさの両者への判断(6試行)を行う。判断の正誤については常にフィードバックを与える。抑制の訓練:(1)標準型への反応の連合を切り離す訓練を行う(6試行)。例えば,標準型(e.g., 横向きの電車)が単独で提示され,名称(電車)が指示された場合は指をささない。(2)非標準型と標準型の2つを6秒提示し,その状況下で適切な反応形成を促す(6試行)。例えば,名称(e.g., 長靴)が指示された場合は非標準型(正面向きの長靴)を指さし,色(e.g., 赤)が指示された場合は標準型(横向きの長靴)を指さす。(3)(2)の内容で刺激を3秒提示する(6試行)。反応の正誤については常にフィードバックを与える。訓練期間:上記の訓練課題を2週間で4回行い,訓練終了1週間後に実験Ⅰと同様の描画課題と認知課題を行った。
【結果と考察】 5・6歳児18名中12名(67%)が訓練後に非標準型を描き,空間認知12点以上かつ抑制4点以上の範囲に分布した(図2)。一方,4歳児で非標準型を描いた者は皆無だった。以上の結果は,描画構成と認知の因果性を示唆する。