The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH

(501)

Sun. Nov 9, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 501 (5階)

[PH071] 幼児の折り紙技術の発達

折りの正確性とセミ作りに着目して

細谷里香1, 松井あずさ2 (1.滋賀大学, 2.平野小学校)

Keywords:折り紙, 幼児

問題と目的
折り紙遊びは保育や幼児教育の現場において広く取り入れられている(福井, 2003)。一方で,教育現場において,幼児の折り紙技術の個人差に合わせて指導することの難しさが指摘されており(岩瀬, 2010),折り紙技術の発達や指導に関する研究が求められているだろう。一般的に,幼児期の折り紙遊びは楽しみながら手指の巧緻性や集中力,理解力,形態認識力等を育むのに有益な教材として位置づけられているが(川並, 2012),先行研究において,折り紙遊びの歴史や幼児教育における位置づけに関する論考は多く存在しているものの,折り紙技術の発達や効果的な指導法に関する実証的な研究は少ないといえる。
本研究の目的は幼児の折り紙技術の発達を実証的に明らかにすることであり,折りの正確性および折り紙作品作りの能力の発達を検討する。具体的には,幼児の折りの正確性の発達時期を明らかにするとともに,介入によって折りの正確性が向上するか検討すること,そして,折り紙作品作りの力と折りの正確性,図形識別能力および抑制能力との関係を検討することを試みる。
方法
参加児 事前に書面にて保護者による研究参加に対する同意が得られた保育園児49人(年少児13人,年中児16人,年長児17人)。
課題 研究参加児に対して,個別に課題を実施した。まず,奥住(2007)を参考にした「折りの正確性課題」を三角折りと四角折りを,見本通りに折ることのみを教示する介入なし条件と,角のズレがないように注意を促す介入有り条件の2条件を実施した。次に,折り紙作品作りの力を測るために,藤田(2001)を参考に,子どもの様子に合わせて段階的に介入レベルを調整する方法で,セミを作る課題を実施した。各行程において子どもが必要とした介入レベルを得点化・合計して作品作りの力の指標とした。その他に,抑制機能を測るハンドゲーム(Hughes & Ensor, 2008)と,折り紙で作られた形の異同を識別する図形識別課題を作成し,実施した。
結果と考察
折りの正確性
三角折りと四角折りのそれぞれにおいて,介入の有無と年齢群および性別によって折りの正確性に違いがあるのか反復測定分散分析を用いて検討した。三角折りと四角折りともに,介入の有無による主効果が認められ, 介入あり条件の方が,ズレが有意に小さかった(ともに p < .01)。年齢の主効果も認められ(ともに p < .001), 多重比較の結果,年少児と年中児の間と年少児と年長児の間に有意差が認められ,いずれも年少児のズレの方が大きかった。さらに四角折りでは性別の主効果も認められ(p < .05),男子の方が女子よりもズレが大きかった。折りの正確性については,年少から年中の間で正確性が高まること,また,即時的介入の効果があることが明らかとなった。
作品作りの力
従属変数をセミ課題得点とし,独立変数として月齢,性別,折りの正確性(介入なし条件),ハンドゲーム得点,図形識別課題得点を入力してステップワイズ法による重回帰分析を行った。その結果,月齢(β = .256, p < .05)の他に,四角折りの正確性(β = -.437, p < .001)と図形識別課題(β = .313, p < .01)が作品作りの力を強く予測することが明らかとなった。本研究は,空間的思考力の一側面と折り紙技術との関連性を検討した,実証的な研究の第一歩といえるだろう。実践的な示唆としては,三角折りよりも四角折りの方が折り紙技術を測る指標として有効であろう。