[PH072] 幼児をもつ親の子育て意識と社会的関係
Keywords:親の育児意識, 子育て不安, 社会的関係
研究の目的
服部・原田(1991)による『乳幼児の心身発達と環境』は大阪府A市にて1980年に出生した全児童約2,000人を対象にした調査報告であり,大阪レポートと呼ばれる。調査時点から30年以上が経過し,育児に取り組む親の意識や負担感などの心理学的側面を改めて把握することが現代の育児を支える条件の整備に役立つと考えられる。
本研究は,大阪レポートの調査項目を基礎としつつ,項目を修正・追加した質問紙を構成し,就学前の幼児を育てている親の意識を調査し,今回は特に親の意識と社会的関係との関連を明らかにする。
方 法
(1) 調査対象
愛知県のA幼稚園,B保育園,C保育園に年少・年中・年長の幼児が通う保護者186名(男性4名,女性177名,不明5名)。平均年齢37.23歳(SD:3.79歳),年齢の範囲26歳から46歳。
(2) 調査期間
2010年9月1日~12月2日
(3) 手続き
質問紙を1部ずつ封筒に入れ,保護者への配布を園に依頼。園と相談の上,配布時期・回収期間を決め,提出分を回収。
(4) 質問紙の構成(今回発表分)
抑うつ5項目,子育て不安15項目,配偶者支援6項目,近所づきあい9項目,交友関係12項目。回答は「1.まったくあてはまらない」,「2.あまりあてはまらない」,「3.どちらともいえない」,「4.ややあてはまる」,「5.非常によくあてはまる」の5件法で求めた。
結 果
(1) 尺度の因子分析と下位尺度の構成
抑うつ,子育て不安,配偶者支援,近所づきあい,交友関係をそれぞれ因子分析し,抽出された因子にもとづき算出したα係数が0.73以上のものを尺度として採用した。抑うつ1因子,子育て不安はいらだち・放棄願望,強い不安,自信のなさの3因子,配偶者支援1因子,近所づきあい1因子,交友関係2因子について,平均尺度得点を算出した。
(2) 親の社会的関係
親の育児意識については大西ほか(2013)にて報告したので,ここでは社会的関係を尺度得点の平均値から検討する。いずれの尺度得点も最高点は5点であり,平均値に続く( )内はSDである。
配偶者の支援4.03(0.91),近所づきあい3.59(0.90),交友関係のなさ2.03(0.65),交友関係の難しさ2.73(0.91)であった。回答した親の95%以上が母親であったところから,母親の認知として,多くの配偶者は「親としての自覚」があり,子育てに協力的で,支援行動をとってくれていると受け止めている。一方,交友関係が持てない,持ちにくい,とはそれほど受け止めていない。
(3) 親の育児意識と社会的関係
親の育児意識と社会的関係の尺度得点相互の相関係数を算出し,Table 1 にまとめた。
考 察
回答した母親は,配偶者の支援が大きいと受け止めている。また先行研究(たとえば菅原,1999)と同じく配偶者の支援が高いと母親の抑うつ,子育てのネガティブな意識が低いが,高い相関が見出されたとまではいえない。これには子どもが幼稚園・保育園に通うと母親同士の交流が生じ,子どもの年齢がより低い時期に比べて,配偶者による支援の重要度が低下する可能性が考えられる。一方,回答した母親は,交友関係や近所づきあいが保たれていると受け止めており,交友関係が持てていると,子育てのネガティブな意識が低くなる傾向も見出された。
以上より,学齢期前の子どもをもつ母親は,配偶者,子ども同士が同じ園に通う母親,および近所の人との交流から,いわば子育てへの分散した支援を得ていると推測される。
服部・原田(1991)による『乳幼児の心身発達と環境』は大阪府A市にて1980年に出生した全児童約2,000人を対象にした調査報告であり,大阪レポートと呼ばれる。調査時点から30年以上が経過し,育児に取り組む親の意識や負担感などの心理学的側面を改めて把握することが現代の育児を支える条件の整備に役立つと考えられる。
本研究は,大阪レポートの調査項目を基礎としつつ,項目を修正・追加した質問紙を構成し,就学前の幼児を育てている親の意識を調査し,今回は特に親の意識と社会的関係との関連を明らかにする。
方 法
(1) 調査対象
愛知県のA幼稚園,B保育園,C保育園に年少・年中・年長の幼児が通う保護者186名(男性4名,女性177名,不明5名)。平均年齢37.23歳(SD:3.79歳),年齢の範囲26歳から46歳。
(2) 調査期間
2010年9月1日~12月2日
(3) 手続き
質問紙を1部ずつ封筒に入れ,保護者への配布を園に依頼。園と相談の上,配布時期・回収期間を決め,提出分を回収。
(4) 質問紙の構成(今回発表分)
抑うつ5項目,子育て不安15項目,配偶者支援6項目,近所づきあい9項目,交友関係12項目。回答は「1.まったくあてはまらない」,「2.あまりあてはまらない」,「3.どちらともいえない」,「4.ややあてはまる」,「5.非常によくあてはまる」の5件法で求めた。
結 果
(1) 尺度の因子分析と下位尺度の構成
抑うつ,子育て不安,配偶者支援,近所づきあい,交友関係をそれぞれ因子分析し,抽出された因子にもとづき算出したα係数が0.73以上のものを尺度として採用した。抑うつ1因子,子育て不安はいらだち・放棄願望,強い不安,自信のなさの3因子,配偶者支援1因子,近所づきあい1因子,交友関係2因子について,平均尺度得点を算出した。
(2) 親の社会的関係
親の育児意識については大西ほか(2013)にて報告したので,ここでは社会的関係を尺度得点の平均値から検討する。いずれの尺度得点も最高点は5点であり,平均値に続く( )内はSDである。
配偶者の支援4.03(0.91),近所づきあい3.59(0.90),交友関係のなさ2.03(0.65),交友関係の難しさ2.73(0.91)であった。回答した親の95%以上が母親であったところから,母親の認知として,多くの配偶者は「親としての自覚」があり,子育てに協力的で,支援行動をとってくれていると受け止めている。一方,交友関係が持てない,持ちにくい,とはそれほど受け止めていない。
(3) 親の育児意識と社会的関係
親の育児意識と社会的関係の尺度得点相互の相関係数を算出し,Table 1 にまとめた。
考 察
回答した母親は,配偶者の支援が大きいと受け止めている。また先行研究(たとえば菅原,1999)と同じく配偶者の支援が高いと母親の抑うつ,子育てのネガティブな意識が低いが,高い相関が見出されたとまではいえない。これには子どもが幼稚園・保育園に通うと母親同士の交流が生じ,子どもの年齢がより低い時期に比べて,配偶者による支援の重要度が低下する可能性が考えられる。一方,回答した母親は,交友関係や近所づきあいが保たれていると受け止めており,交友関係が持てていると,子育てのネガティブな意識が低くなる傾向も見出された。
以上より,学齢期前の子どもをもつ母親は,配偶者,子ども同士が同じ園に通う母親,および近所の人との交流から,いわば子育てへの分散した支援を得ていると推測される。