The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH

(501)

Sun. Nov 9, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 501 (5階)

[PH078] 幼稚園教育実習による学生の保育者効力感の変化

領域「人間関係」に焦点を当てて

小林真 (富山大学)

Keywords:教育実習, 保育者効力感, 人間関係

問題と目的
三木・桜井(1998)は保育者効力感尺度を作成し、教育実習後にやや効力感が高まった事を報告している。しかしこの尺度は、「私は子どもにわかりやすく指導できると思う」など、抽象的な保育能力を尋ねる項目が多い。したがって、より具体的な保育行動に対する効力感に焦点を当て、教育実習の効果を検討必要がある。
そこで本研究は、西山(2006)が作成した領域「人間関係」に関する保育者効力感の尺度を用い、幼稚園の教育実習後に保育者効力感が高まるかどうかを検討する。
方 法
対象者 X大学で幼稚園の教育実習を行う学生35名(1年生10名、2年生12名、3年生13名)。
X大学では、1年生は附属幼稚園で4日間の観察実習、2年生は附属幼稚園で3週間の実習、3年生は協力幼稚園で3週間の教育実習を行う。
手続きと倫理的配慮 質問紙調査を教育実習の前後に実施した。まず研究趣旨と教育実習前後の質問紙を対応させる必要がある旨を説明した。具体的には、質問紙の上部に学籍番号の記入を求め、2回分の質問紙を対応させた段階で、学籍番号の欄を裁断するので、個人を特定しない事を書面と口頭で伝えた。この方法に協力してもらえる場合だけ質問紙に回答するよう要請した。研究への協力が任意であることも説明した。
調査内容 フェイス項目(学年)、「人間関係」保育者効力感尺度25項目(西山,2006)、Kiss-18(菊池・堀毛,1994)、子どもと関わるための社会的スキル尺度20項目(予備調査により作成)を用いた。
本報告では「人間関係」保育者効力感について検討する。この尺度は5つの下位尺度からなる。
尺度Ⅰ 人とかかわる基盤を作る
尺度Ⅱ 発達的視点で子どもを捉えかかわる
尺度Ⅲ 子ども同士の関係を育てる
尺度Ⅳ 基本的な生活習慣・態度を育てる
尺度Ⅴ 関係性の広がりを支える
調査時期 20XX年7月~10月。
結 果
「人間関係」保育者効力感の変化
5つの下位尺度の学年×測定時期の平均値をFigure 1に示す。
保育者効力感の変化を検討するため、学年を被験者間要因、測定時期(実習の前後)を被験者内要因とし、5つの下位尺度を従属変数とする多変量分散分析を実施した。その結果、学年の主効果はΛ=.530、F(10,56)=2.10(p<.05)となり、習性Tukey法による多重比較の結果、尺度Ⅰ~Ⅲでは3年生が1・2年生よりも得点が高く、尺度Ⅳでは3年生が1年生よりも高かった。
測定時期の主効果はΛ=.371、F(5,28)=9.51
(p<.001)となり、個別変量の検定により尺度Ⅰが実習後に有意に上昇していた(p<.001)。また、尺度Ⅲ・Ⅳは教育実習後の上昇が有意傾向となった。
交互作用がΛ=.554、F(10,56)=1.92(.05考 察
本研究からは、3年生は教育実習によって保育者効力感が高まることが示された。1年生は4日間の観察参加だけなので、効力感が高まることは考えにくいが、2年生の実習で保育者効力感を高めるために、どのような実習計画を組むべきか今後検討する必要があろう。また、実習で変化のなかった尺度Ⅴを高める工夫も必要である。