The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH

(501)

Sun. Nov 9, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 501 (5階)

[PH091] 中学生のための怒りスマート対応プログラム作成の試み

青少年ポジティブ発達促進プログラムの一環として

桜井美加 (国士舘大学)

Keywords:怒り, 中学生, 心理教育

目的
本研究は、我が国における青少年ポジティブ発達促進プログラムのひとつの可能性として、PYD(Positive Youth Development)(Carnegie Council on Adolescent Development,1995)を理論的背景とした、Farrell,et al.,(2001)のResponding in Peaceful and Positive Ways(RIPP)に着目した。RIPPを参照し、怒りスマート対応プログラムを作成し、日本の公立中学校で実施し、その効果を測定することを目的とする。
方法
研究対象:中学2年生85名(男58名、女27名)
調査協力校:首都圏公立1中学校
調査時期:2013年9月、10月、2014年2月の3回にわたり、道徳の時間などを利用して怒りスマート対応プログラムが実施された。また効果測定の質問紙が実験前後に配布され、回収された。
質問紙:①思春期版簡略版怒り反応(桜井,2014)のうちの建設的反応14項目を使用した。「まったくあてはまらない」から「とてもあてはまる」の5件法で回答を求めた。②怒り感情情報プロセス知識尺度は、A Knowledge-Based Measure of Social Information Processing and Anger Management (Stephen,L.,et al.,2010)を参照し、「このような場面でどのようにふるまうか?」と尋ね、4つの選択肢から1つの回答を選択させた。③思春期版人間関係健康性尺度(桜井,2013)は、「親しい友人関係」3項目、「信頼できる大人との関係」3項目、「グループ内での人間関係」3項目の9項目からなる。「もっともあてはまる」から「もっともあてはまらない」の5件法で回答を求めた。④思春期版心理的ウエルビーング(Sakurai,2014)は「自律」3項目、「有能感」3項目、「関係性」3項目の9項目で作成され、「まったくあてはまらない」から「とてもあてはまる」の7件法で回答を求めた。
プログラムの構成:第1回目は怒り感情や反応の種類について学んだあとで、リラクゼーション方法について学習した。第2回目は、学校や家庭における怒り感情の多様な文脈を設定し、スマートな例、スマートでない例を教員がロールプレイで示すことで、中学生に怒りのスマートな対応方法について学習させた。第3回目は、怒り感情を経験したときに賢明でスマートな対応方法を考え選択することができるように脚本作成を個々人で行うことで、怒りスマート対応を学習させた。
結果
プログラム実施前後の平均値と標準偏差をTable1に示す。
プログラム実施前後および性別を独立変数、怒り反応、怒り感情情報プロセス知識、人間関係健康性および心理的ウエルビーングを従属変数として分散分析を行ったところ、怒り建設的反応のみ、Pre-TestよりPost-Testのほうが平均点が高かった(F=11.565,p<.001)。怒り感情情報プロセス知識および人間関係健康性に交互作用がみられたため、単純主効果検定を行ったところ、怒り感情情報プロセス知識(F=4.066,p<.045)、人間関係健康性では親しい友人関係(F=10.687,p<.001)とグループ内の人間関係(F=11.942,p<.001)は有意に、また信頼できる大人との関係については有意傾向で(F=3.027,p<.084)、それぞれ女子のみPre-TestよりPost-Testのほうが平均値が高かった。心理的ウエルビーングには有意差がみられなかった。
考察
怒り建設的反応については男女ともプログラムの効果が示されたが、怒り感情情報プロセス知識、人間関係健康性については女子のほうが学習効果が示された。Tangney(1996)は女子のほうが男子より心の中で建設的に対応しようと思い、また自分を怒らせた相手と冷静に話し合おうとすると述べており、日本人でも怒りスマート対応について女子のほうがよりなじみやすかったと推測される。今後は男子生徒や、怒りスマート対応プログラム学習への動機づけが高くない生徒にも効果が示されるような心理教育開発の検討が課題である。
謝辞:本研究は平成25年度科学研究費助成金研究基盤C(課題番号:23530917)を受けた。