[PA067] 現代の父親の家事・育児参加を規定する要因に関する質的研究
家事・育児参加に関するインタビュー調査から
Keywords:父親, 家事・育児参加, 規定要因
【目 的】
筆者と南(2011・2013)は,父親の家事・育児について,父親・母親を対象に2000年(135組)と2011年(107組)に意識調査を実施し,結果を比較したところ,子育てに関しては,2000年・2011年ともに,子どもと遊ぶことはよくしていたが,入浴,授乳(食事),衣服の着せ替えなどの子どもの世話行動は,2011年は有意に増加し,遊ぶ父から世話する父へと変化していた。そうした変化は,父親の親密性と父親自身の父親との良好な関係が関連していた。育児への参加が積極的になっている一方で,父親の労働時間はほとんど変わらず,子どもと過ごす時間は有意な減少していた。父親の子どもと過ごす時間と家事・育児参加度との関連と検討したところ,子どもと過ごす時間の長い父親は,平日も休日も子どもの世話・養育にかかわり,子どもと遊ぶ時間にも差異が見られた。家事では,平日は洗濯・掃除・料理の時間に有意な差が見られたのに対し,休日は食糧の買い出しだけに差が見られ,休日は子どもと遊び,子どもの世話をし,家事に費やす時間を調整していた。本研究では,そうした結果を踏まえ,子どもと過ごすことと家事・育児をすることと,仕事をすることをどのように時間調整し,子どもとどのような関わりを実際にしているのか,また父親の成育経験とどのような関連があるか質的に検討をすることを目的とした。
【方 法】
対象:K大学の子育て支援ルームを利用している父親10名。本調査に関して大学の倫理審査を経た後,本研究への協力を利用者に呼びかけ,研究協力承諾書をもらった。本研究では,10名のうち,父親の属性が大きく異ならない4名を抽出し,分析対象とした。
方法:半構造面接を実施。調査内容は属性(年齢,子ども数,家族数,同居,職業・就労形態・時間),就労生活,子どもとのかかわりの経験,父親の両親の養育,父親の子育て生活と子どもとのかかわり,子どもを育てる意味,育児・家事への関わり,夫婦関係,育児している自分について,子育てに必要な条件,してほしい支援,親になってからの自分の変化,子育てへのサポート状況であった。所要時間は約40分。インタビューの逐次記録から意識調査で抽出された各項目因子に関連したスクリプトを分類し,解釈的な分析を行った。
【結 果】
本研究の参加者はいずれも核家族で,母親は就労していなかった。YとN:サラリーマンで勤務時間は決まっており,UとIは自由であった。しかしいずれも仕事に忙しく,家事・育児への参加は土日が中心であった。父親の親の養育:Y:父はずっと仕事,ほとんどいなかった。U:何かしたらビンタされ厳しかったが,母は受容的だった。I:父は単身赴任で3か月に一度帰ってくるぐらいでほとんどいなかった。母は専業主婦でいろいろ世話してくれ,よく遊んでくれた。N:父は単身赴任だったが,週一回は帰ってきてよく遊んでくれた。普段はとても優しいが,怒るととても怖い。母は頑張り屋。子どもとのかかわり経験:N:周りに子どもがたくさんいたのでよく遊び,自分も子どもが好き。自分が行くと子どもたちが周りに集まってきた。自分の子どもともあやしたり遊んだり自信がある。Y/U/I:子どもとかかわった経験が全くなく,子どもとのかかわりには大きな戸惑いがあり,子どもと二人だけで過ごす自信はない。子どもとのかかわりや育児:Y:子どもが電車好きで見だすと動かない…実は自分も電車が好きで一緒に見るのが楽しい…妻が夜授乳しているのを見て…ちょっと可哀想そうやな…でも次の日仕事あるしなあ。U氏:父親になったからには子を養育しなければならない…やらなあかんからやる。I:相手をしないといけないからなんとなくするようになった…妻がしていることを見て,しんどいやろうな…自分もできるときにできることをやらなきゃ…新聞読んでると子どもがあっちにいってしまう…非常に接し方がわからない。僕自身が小さい時から,下の子と関わる経験とかあまりなくて,それでそのまま大きくなっちゃったものですから,難しいな…(父が)ほとんどいなかったからわからない。N:入浴ですかねえ…動物園へも良く行きました。家事:Y:お互いが手伝えれば手伝うしくらいの,子育てもですし,家事も…土日とかは,鍋が多いんですよ。その時は自分の出番。U:最近はちゃんと皿を洗うようになりましたね。率先?気になったらやるだけで…N:今は妻がするよと言ってくれてるので今はしていません…妻がするよと言ってたのでしなかったらそれはそれで怒る…その時は黙ってしていました。ストレス:Y:普段も夜遅いんで,土日とかにたまに昼寝してると,妻に小言を…ちょっとしんどいかな。U:父親と母親の言う事が違ってたら困りますね。I:一日中やっぱり,二人でいるって言うのは…しんどいな。N:妻の精神的なフォロー…ですかね。
【考 察】
子どもとのかかわりは,幼少期の子どもとのかかわり経験,自分の父親とのかかわりの経験が影響していた。また,父親としての使命感,子どもとの興味の共有,妻へのジレンマや関係性が,家事・育児参加の動機付けや取る行動に関連することが示唆された。さらに,子どもとのかかわりを通して,父としての自覚や自分自身の在り方に変化を与えていた。意識調査の結果をほぼ支持する結果であったが,そうした結果は,夫婦関係に規定されることが示唆された。また,子どもとの関係は,父親の成育経験が大きく影響し,それが,子どもとのかかわりの過程で変化させたれ,関係性の取り方が規定されることも示唆された。
本研究は平成24年度科学研究費基盤研究C課題番号25350953(研究代表者寺見陽子)の一部である。
筆者と南(2011・2013)は,父親の家事・育児について,父親・母親を対象に2000年(135組)と2011年(107組)に意識調査を実施し,結果を比較したところ,子育てに関しては,2000年・2011年ともに,子どもと遊ぶことはよくしていたが,入浴,授乳(食事),衣服の着せ替えなどの子どもの世話行動は,2011年は有意に増加し,遊ぶ父から世話する父へと変化していた。そうした変化は,父親の親密性と父親自身の父親との良好な関係が関連していた。育児への参加が積極的になっている一方で,父親の労働時間はほとんど変わらず,子どもと過ごす時間は有意な減少していた。父親の子どもと過ごす時間と家事・育児参加度との関連と検討したところ,子どもと過ごす時間の長い父親は,平日も休日も子どもの世話・養育にかかわり,子どもと遊ぶ時間にも差異が見られた。家事では,平日は洗濯・掃除・料理の時間に有意な差が見られたのに対し,休日は食糧の買い出しだけに差が見られ,休日は子どもと遊び,子どもの世話をし,家事に費やす時間を調整していた。本研究では,そうした結果を踏まえ,子どもと過ごすことと家事・育児をすることと,仕事をすることをどのように時間調整し,子どもとどのような関わりを実際にしているのか,また父親の成育経験とどのような関連があるか質的に検討をすることを目的とした。
【方 法】
対象:K大学の子育て支援ルームを利用している父親10名。本調査に関して大学の倫理審査を経た後,本研究への協力を利用者に呼びかけ,研究協力承諾書をもらった。本研究では,10名のうち,父親の属性が大きく異ならない4名を抽出し,分析対象とした。
方法:半構造面接を実施。調査内容は属性(年齢,子ども数,家族数,同居,職業・就労形態・時間),就労生活,子どもとのかかわりの経験,父親の両親の養育,父親の子育て生活と子どもとのかかわり,子どもを育てる意味,育児・家事への関わり,夫婦関係,育児している自分について,子育てに必要な条件,してほしい支援,親になってからの自分の変化,子育てへのサポート状況であった。所要時間は約40分。インタビューの逐次記録から意識調査で抽出された各項目因子に関連したスクリプトを分類し,解釈的な分析を行った。
【結 果】
本研究の参加者はいずれも核家族で,母親は就労していなかった。YとN:サラリーマンで勤務時間は決まっており,UとIは自由であった。しかしいずれも仕事に忙しく,家事・育児への参加は土日が中心であった。父親の親の養育:Y:父はずっと仕事,ほとんどいなかった。U:何かしたらビンタされ厳しかったが,母は受容的だった。I:父は単身赴任で3か月に一度帰ってくるぐらいでほとんどいなかった。母は専業主婦でいろいろ世話してくれ,よく遊んでくれた。N:父は単身赴任だったが,週一回は帰ってきてよく遊んでくれた。普段はとても優しいが,怒るととても怖い。母は頑張り屋。子どもとのかかわり経験:N:周りに子どもがたくさんいたのでよく遊び,自分も子どもが好き。自分が行くと子どもたちが周りに集まってきた。自分の子どもともあやしたり遊んだり自信がある。Y/U/I:子どもとかかわった経験が全くなく,子どもとのかかわりには大きな戸惑いがあり,子どもと二人だけで過ごす自信はない。子どもとのかかわりや育児:Y:子どもが電車好きで見だすと動かない…実は自分も電車が好きで一緒に見るのが楽しい…妻が夜授乳しているのを見て…ちょっと可哀想そうやな…でも次の日仕事あるしなあ。U氏:父親になったからには子を養育しなければならない…やらなあかんからやる。I:相手をしないといけないからなんとなくするようになった…妻がしていることを見て,しんどいやろうな…自分もできるときにできることをやらなきゃ…新聞読んでると子どもがあっちにいってしまう…非常に接し方がわからない。僕自身が小さい時から,下の子と関わる経験とかあまりなくて,それでそのまま大きくなっちゃったものですから,難しいな…(父が)ほとんどいなかったからわからない。N:入浴ですかねえ…動物園へも良く行きました。家事:Y:お互いが手伝えれば手伝うしくらいの,子育てもですし,家事も…土日とかは,鍋が多いんですよ。その時は自分の出番。U:最近はちゃんと皿を洗うようになりましたね。率先?気になったらやるだけで…N:今は妻がするよと言ってくれてるので今はしていません…妻がするよと言ってたのでしなかったらそれはそれで怒る…その時は黙ってしていました。ストレス:Y:普段も夜遅いんで,土日とかにたまに昼寝してると,妻に小言を…ちょっとしんどいかな。U:父親と母親の言う事が違ってたら困りますね。I:一日中やっぱり,二人でいるって言うのは…しんどいな。N:妻の精神的なフォロー…ですかね。
【考 察】
子どもとのかかわりは,幼少期の子どもとのかかわり経験,自分の父親とのかかわりの経験が影響していた。また,父親としての使命感,子どもとの興味の共有,妻へのジレンマや関係性が,家事・育児参加の動機付けや取る行動に関連することが示唆された。さらに,子どもとのかかわりを通して,父としての自覚や自分自身の在り方に変化を与えていた。意識調査の結果をほぼ支持する結果であったが,そうした結果は,夫婦関係に規定されることが示唆された。また,子どもとの関係は,父親の成育経験が大きく影響し,それが,子どもとのかかわりの過程で変化させたれ,関係性の取り方が規定されることも示唆された。
本研究は平成24年度科学研究費基盤研究C課題番号25350953(研究代表者寺見陽子)の一部である。