[PF034] 児童の協働的な学びと深い理解を育む授業の分析5
教師のリヴォイシングと子どものメタ認知的理解の関係
キーワード:授業の理解過程, リヴォイシング, 児童のメタ認知
[目 的]
鈴木・藤田(2012),藤田・鈴木(2012)では,繰り下がりの操作を含んだ引き算学習を取り上げ,教師が子どもに思考錯誤させながら解決思考を促していく手立てをとる授業の中で,小学1年生の段階でも自分や他者の思考や理解をメタ認知し共有していく傾向が示唆された。鈴木・藤田(2013)では,教科書通りの標準的な授業場面と構成的足場作りによるそれとを比較し,後者の授業場面において,子どもを中心に解決思考を促す談話過程が展開され,メタ認知的理解が育まれていることが示唆された。鈴木・堀川・藤田(2015)では,子ども中心の授業をつくるために,教師の即興的なリヴォイシングの機能について分析を行った。その結果,6つに細分化されたリヴォイシングが,児童の概念理解を共有したり,課題解決を方向づけたり,話し合いの焦点を定めながら子どもの理解を深めるように機能していることが示唆された。そこで,本研究では,これらの教師のリヴォイシングの一方で,子どもの理解過程はいかなる特徴を示したのか,メタ認知的観点から分析を行う。
[方 法]
小学2年生に対し行われた「図形の概念形成(三角形,四角形)」の導入部分の授業を取り上げる。(第3著者による授業2014年11月実施,児童数28名)第3著者による授業は,1単位時間の内容を2時限使い[第1時限:図形の構成要素(辺,角)への注目と特徴の説明,第2時限:図形の定義の理解と活用]構成された。授業のプロトコル化は第2著者が担当し,教師と子どものプロトコルの内容確認および機能分析は著者全員で担当した。授業の前後に事前・事後テストを実施した。テスト項目は,①辺が直線であるか,②辺で囲まれているか③辺の本数④図形の種類を基準として図に表現する項目と,⑤辺(直線)についての言及,⑥辺の数,⑦辺で囲まれていることについて言語で説明する項目から構成された。
[分析方法]
授業中に交わされた教師と児童の発話のプロトコルを教授内容によって各授業を6つの下位ユニットに分類し,各ユニットにおける談話過程に現れた子どもの発話をWhitebread, et al.(2008)を参考に,「メタ認知的知識」「メタ認知的制御」の2側面から機能的に分類した。
[結果と考察]
1.子どもの発話分析:第1,2時限の授業における全体での話し合い場面(総発話数458)で見られた子どものメタ認知的発話数は186(第1時限83,第2時限103)であった。このうち,メタ認知的知識(人,方略)に関する発話は100,メタ認知的制御(モニタリング,評価)に関する発話は86であった。各時限各ユニットごとにそれらの出現傾向を分析すると,教師が子ども自身の主体的な理解を促そうとリヴォイシングを多用した第3ユニットでは,子どもが図形の構成要素に気付くまでには至らず(知識18.75%,制御15.63%),子どもが積極的に自らの理解を様々な具体例に適用する第4ユニットにおいてメタ認知が活発に機能している傾向が示唆された(知識26.32%,制御15.79%)。第2時限においても同様な傾向が見られ,教師のリヴォイスを離れ,先に学んだ内容を自分たちで想起・確認する復習の過程(第1ユニット48.98%)や,自分たちで学習した定義を新たな問題場面(具体例)に適用・判断しその根拠を説明する際(第5ユニット42.07%)に,メタ認知的発話の出現頻度(割合)は高くなった。
2.事前-事後テストの概念理解の変化:事前テストから事後テストにかけての概念理解の変化の特徴は,1言語説明も図的表現もできない子どもが図的表現は正確できるようになるパターン2図的表現はできている子どもが,言語的にも明確に定義することができるパターンの2種類が確認された。
鈴木・藤田(2012),藤田・鈴木(2012)では,繰り下がりの操作を含んだ引き算学習を取り上げ,教師が子どもに思考錯誤させながら解決思考を促していく手立てをとる授業の中で,小学1年生の段階でも自分や他者の思考や理解をメタ認知し共有していく傾向が示唆された。鈴木・藤田(2013)では,教科書通りの標準的な授業場面と構成的足場作りによるそれとを比較し,後者の授業場面において,子どもを中心に解決思考を促す談話過程が展開され,メタ認知的理解が育まれていることが示唆された。鈴木・堀川・藤田(2015)では,子ども中心の授業をつくるために,教師の即興的なリヴォイシングの機能について分析を行った。その結果,6つに細分化されたリヴォイシングが,児童の概念理解を共有したり,課題解決を方向づけたり,話し合いの焦点を定めながら子どもの理解を深めるように機能していることが示唆された。そこで,本研究では,これらの教師のリヴォイシングの一方で,子どもの理解過程はいかなる特徴を示したのか,メタ認知的観点から分析を行う。
[方 法]
小学2年生に対し行われた「図形の概念形成(三角形,四角形)」の導入部分の授業を取り上げる。(第3著者による授業2014年11月実施,児童数28名)第3著者による授業は,1単位時間の内容を2時限使い[第1時限:図形の構成要素(辺,角)への注目と特徴の説明,第2時限:図形の定義の理解と活用]構成された。授業のプロトコル化は第2著者が担当し,教師と子どものプロトコルの内容確認および機能分析は著者全員で担当した。授業の前後に事前・事後テストを実施した。テスト項目は,①辺が直線であるか,②辺で囲まれているか③辺の本数④図形の種類を基準として図に表現する項目と,⑤辺(直線)についての言及,⑥辺の数,⑦辺で囲まれていることについて言語で説明する項目から構成された。
[分析方法]
授業中に交わされた教師と児童の発話のプロトコルを教授内容によって各授業を6つの下位ユニットに分類し,各ユニットにおける談話過程に現れた子どもの発話をWhitebread, et al.(2008)を参考に,「メタ認知的知識」「メタ認知的制御」の2側面から機能的に分類した。
[結果と考察]
1.子どもの発話分析:第1,2時限の授業における全体での話し合い場面(総発話数458)で見られた子どものメタ認知的発話数は186(第1時限83,第2時限103)であった。このうち,メタ認知的知識(人,方略)に関する発話は100,メタ認知的制御(モニタリング,評価)に関する発話は86であった。各時限各ユニットごとにそれらの出現傾向を分析すると,教師が子ども自身の主体的な理解を促そうとリヴォイシングを多用した第3ユニットでは,子どもが図形の構成要素に気付くまでには至らず(知識18.75%,制御15.63%),子どもが積極的に自らの理解を様々な具体例に適用する第4ユニットにおいてメタ認知が活発に機能している傾向が示唆された(知識26.32%,制御15.79%)。第2時限においても同様な傾向が見られ,教師のリヴォイスを離れ,先に学んだ内容を自分たちで想起・確認する復習の過程(第1ユニット48.98%)や,自分たちで学習した定義を新たな問題場面(具体例)に適用・判断しその根拠を説明する際(第5ユニット42.07%)に,メタ認知的発話の出現頻度(割合)は高くなった。
2.事前-事後テストの概念理解の変化:事前テストから事後テストにかけての概念理解の変化の特徴は,1言語説明も図的表現もできない子どもが図的表現は正確できるようになるパターン2図的表現はできている子どもが,言語的にも明確に定義することができるパターンの2種類が確認された。