日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PF

2015年8月27日(木) 16:00 〜 18:00 メインホールA (2階)

[PF047] 『試行版クラス会議』の実施における学級の居心地の変化

伊澤直美1, 西山久子2 (1.福岡教育大学教職大学院, 2.福岡教育大学)

キーワード:クラス会議

問題と目的
学級での話合い活動において,教師の指導上の課題や子供の集団への安心感のなさ等から,話合い活動に安心して取り組めなくなってきている状況が見られる。そこで本研究では,話合い活動に安心して取り組めるようにするために,学級の基盤作りとして『試行版クラス会議』の手法を取り入れた活動を行い検討した。
方法
1.研究期間:平成20+X年11月~12月
2.研究対象:福岡県郊外の中規模都市A小学校第5学年112名(男子63名,女子49名)
3.評価尺度:「居心地のよい学級づくりアンケート」(Q-Uテスト)及び,集団効力感尺度を使用
結果
Q-Uテストの結果の比較(Figure1-1・2)から,A組では,友人との関係・学習意欲・学級の雰囲気及びそれらの総計からなる学校生活意欲のいずれも,試行版『クラス会議』試行前に比べ,有意に下降する結果が示された。
個別の児童の結果を検討すると,A組には,20点以上数値が下降した児童がおり,学校生活以外での課題が報告されたことから,個別の課題への対応の必要性が示唆された。また,承認得点でも有意に下降していることが示された。一方C組では,事後に学級の雰囲気が有意に高まったことが示され,試行版『クラス会議』の成果を示すものと考えられる。その一方で,学習意欲は,事後に有意に下降していることが示された。また,被侵害得点が有意に好転したことも示された。
B組では,学級全体での成果は見られなかったが,個別の変化が見られた子供がいた。実践前の事前のQ-Uテストでは,学級生活不満足群にいたが,実践後のQ-Uテストでは,認得点が8ポイント上昇し,学級生活満足群に近づいていた。
また,人前で話すことが苦手な別の子供は、自分の順番が回ってくると,黙り込んでしまい,担任が側に行って代わりに話したり,ある時は隣の子供が代わりに話したりしていた。言おうとしても,泣いてしまうこともあった。回数を重ねるごとに,だんだん慣れてきて言えるようになってきた。
考察
『試行版クラス会議』の実施により,温かな学級風土を醸成していくことにつながること等の取り組みに成果が見出されることが示唆された。しかし,個別の課題に応じた指導のあり方や,クラス会議を実践するための方途の向上については,さらなる検討を行う必要がある。また今後,試行版『クラス会議』を継続的に試行し,学級の雰囲気,話し方・聞き方の成長を把握し,その活用のあり方を探る必要がある。